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第十四話 突飛な依頼【シェイド】
しおりを挟む「……」
「ったく、何でおれたちがこんなヤツと……」
赤い短髪の剣士は、相変わらず言動が気に障る。
シェイドは面倒事に遭遇した時のようにため息をついた。
「フレド、体力は温存しておけ」
「ふん」
幌馬車は時折揺れるものの、張り詰める空気により意外と気にならない。
シェイドは時折気を紛らわすためにアルバスの毛並みを撫でると、尻尾でぺしっと叩かれた。
(何も言わずに来たが……ルネ、大丈夫だろうか)
アルバスも一緒に来てしまい、恐らく風呂には入れなかっただろう。
身の危険、という意味では心配ないのだが、側に居られないことがどうしても不安だった。
「……で? 討伐依頼の方はともかく、アルバスに聴きたいことって何だ?」
「ずいぶん生意気な口をきくようになったもんだ」
短剣を扱う茶髪の男──ウェンリィは、フレドほどの激情はないものの。同じくらいの嫌悪感をもってシェイドへと言葉を放った。
「いきなり説明もなく同業者を引っ張りまわす奴らに、礼儀を弁えろと?」
『みぁ』
シェイドに続いてアルバスも声を挙げた。
「っ! ま、まぁまぁ。落ち着いて」
緑の長髪を一つに結んだ弓使い。ギレンは以前より事なかれ主義。
その温和な顔つき通りフレドのストッパーのような役目で、パーティの中で最も話が通じる男だった。
アルバスまでもが声を挙げ始めると、さすがにまずいと思ったようで双方を諫めた。
シェイドは、ギレンが自分とアルバスの契約が『人を魔法で傷つけない』とは限らないと予想してのことだろうと考えた。
「じ、実は僕たちも聞いていないんだ。詳細は、現地でって」
「ふぅん」
(怪しいな)
アルマンが薬草について『エクリプス』に依頼を出したとして。
ギルドがちょうどよくシェイドに依頼したかった他国の討伐依頼を、ついでにと抱き合わせたのだろう。
そこまではいい。
ギルドも、Sランクに上げようとそういった重要な依頼を振り分けたいのも分かる。
依頼は依頼。
どんなに心象がよくない者とでも、もらえる物がもらえればいい。
だが、そもそもギルドに討伐依頼とやらを申請したのは……本当にエルフの者なのだろうか?
確かに冒険者の数は人間の方が多いと聞く。
エルフたちは一般の者も、ある程度魔法で対処できるからだ。
人間に依頼するのも無い話ではないのだが……。
シェイドはどうしてもアルバスを連れて来いという点が気になっていた。
「……魔法書関連、か?」
『さてな』
「なんだ、あんた魔族の中でも有名なのかよ?」
からかうように言ったのだが、アルバスはその口端を人型の時と同じようにくっと上げた。
「……マジ?」
どうやら、本当に有名なようだ。
そういえば彼は何歳なのだろう。
ルネを守る。ただそれだけのために自分へと力を授けた魔族の男。
あまり自分のことは多く話さない。
互いに話すのは、ルネに関することだった。
魔族にしては、ずいぶん不思議な者だった。
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