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第十七話 鼓動
しおりを挟む「──ルネ!!!!」
「! シェイド……!」
なだれ込むように入ってきたシェイドは、随分と慌てていた。
待ちわびた声に反射するよう立ち上がったものの、ルネは先ほどまでのことを悟られまいと努めて冷静を装う。
「お、お帰り。ずいぶん、遅かった──」
言い終わる前に、シェイドはその身を己で包み込んだ。
「っ!?」
「ルネ」
まるで存在を確かめるように名前を呼ぶ。
あの日送った薔薇の香りは薄まっていないかと、確かめるように髪へと顔をうずめる。
「ルネ」
髪をかき分けて届いた吐息が、耳元へと到達した。
(わ……)
いつもと同じ声でその名を呼ぶのに、なぜだか全く別のもののように聴こえる。
自分の内側から響く扉を叩くような音は、自室にいる時よりも大きく感じた。
ルネはこの突然訪れた幸福にずっと浸っていたい気分ではあったが、そうするには他の二人の存在が気になった。
「シェ、シェイド。あの……」
「っ! わ、わるい」
慌ててルネから離れるシェイド。
その顔はルネからは見えないのであるが、真っ赤に染まっていた。
「い、いえ。その、驚いただけで……」
「んもぉーー、じれったぁ~い」
「おい。その姿……」
「バッチリ!!」
「何がばっちり、だ。もっと上手くやれなかったのか」
「……? えっと」
伸びた緑の髪を見て何かを悟ったアルバス。
アルバスもまた、本屋に入った瞬間人型をとっていた。
「ルネ。怪我はないか?」
「え、えぇ……。って、まさか?」
(何があったか、……知ってる?)
シェイドの問いは、明らかにルネがトラブルに巻き込まれたと知っているようだ。
「よかった……」
「そっちはどうだったんですか~?」
「冒険者や神術師に足止めをされていた」
「よりにもよって、ギルドも噛んでやがった! ……遅くなった。ごめん」
「そんな……。 ! そうだ、ラミーのことは……」
「元はシェイドの願いを聞いた者だ」
「! シェイドの……?」
(いったい、いつ? ──まさか)
共に過ごした六年間、彼はアルバスと契約していたはず。
であれば、一つだけ思い当たるのは、あの時だ。
「なぜ……」
「……」
自分を助けようと『エクリプス』のメンバーに挑んだあの時。
シェイドはその圧倒的な力の差で床に伏すこととなった。
『魔法』を得るには代償が必要だと、脅しをかけたその後だ。
「あんたが、……大切だから」
「え?」
聞きなれない言葉に、肩が跳ねる。
(たい、せつ?)
「っ、もう少し……待っててくれ」
「シェイド」
「あんたの憂いを払ったら、必ず」
そう言うとシェイドはルネの手を取り、
「とにかく、休もう」
「え? え、えぇ」
部屋まで共に赴いた。
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