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第四歩 なるほど、これが聖女。予想外

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 ボスの間もとい王様の間を後にして、自分へと宛がわれた部屋へ向かう。
 先を行くエミールが所々、王城についての説明や、この世界について話をしてくれている。
 下心のある親切ではなく、人柄によるものなんだろうなと感じれる程、色々と気遣ってくれているのが分かる。
 良い人だな。

「聖女様のお部屋の近くには、騎士団の詰所もありますので、どうぞご安心ください」

「へぇ、騎士団」

 この世界の治安がどう言ったレベルなのかは、魔物が居る時点で計り知れない。
 少しでも安全と思える要因が多いに越したことはない。

「ん?」

 王の居た場所から、部屋へと向かう途中で中庭に差し掛かった。庭を突っ切るように、天井付の廊下が続いていて風通しも良く、気分転換には最高だろう。

 そう思っていると、左奥にある茂みが妙に気になった。

「聖女様、いかがされーー」

 ひゅっと風を切って、何かが自分目掛けて一目散に駆けてきた。

「は?」

 それが何なのかも分からない程、ものすごい速さで飛んできたもんだから体はその場から動けない。

「--!? 聖女様、危ない!!」

 キーーン、と何かが弾かれた音が鳴った。かと思えば、カラカラと足元に何かが転がる。

「………………は?」

 全く訳も分からないまま、足元を見れば忍者漫画で良く見たような、クナイのような刃物が転がっていた。
 おいおい、物騒だな。

「聖女様!? お怪我はありませんか!?」

「いや……怪我は無いんだけど……」

 何が起きたんだ。それに尽きる。自分は、今何をされた?

「怪我は無いんだけど……! ナチュラルにこ○されかけたよ!? なにこれ!?」

 ばっと茂みの方を見れば、もはや何の存在も確認出来ない。

「一体誰が……。協定に反対している勢力が……」

 勝手に王城だと安心しきっていたが、協定に反対するような輩も居るのか。
 争いがあると、消費する物もある。それで儲けている連中だろうか。

「び、びっくりした……」

 何でか知らないけど、勝手に何かが弾いてくれたおかげで助かった。非日常過ぎて実感が追いついてないけど、ここは本当に異世界ってことだけは良く分かった。

「聖女様、恐らくはご自身の力が命の危機に際して発動したのかと。聖女様の持つ御力は、いつも守りに長けていたと言われています」

「守り……ねぇ」

 自分の事もちゃんと守ってくれる力なのはありがたいが、自動でカウンターも張れる何て知らないもんだから色々と焦った。
 でもどこまで自動で力が発動するかも分からないし、早いところ魔術師の先生とやらに教わらなければ。

「聖女様、お部屋はこちらです。私は騎士団に先程の事を報告して参りますので、少しお休みになってください。先にお部屋に護衛の者を手配してきます」

「はい、お願いします」

 部屋へと移動するだけで盛大に疲れた。少し休みたい。

 
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