【完結】転生魔女の気まぐれ食卓~プレ大魔女のゆる薬膳コースは効果がすごい模様~

蒼乃ロゼ

文字の大きさ
22 / 61

21 ゆる薬膳コース、ふるまいましょう①

しおりを挟む
 一旦おやつに持ってきていたクッキーで買収……いや、手なずけ……これも違う。
 和解? して、互いに自己紹介をして、警戒心が少しほぐれたところ教えてくれた。

「なるほど、妹のためにか」
「う、うん……」
「危険を承知で来る勇気は認めるけど、勝算がないなら無謀っていうのよ。街の人が心配するでしょっ」
「っ……」

 おっと、これ以上言うと泣いてしまいそうだ。
 いじめダメ、ゼッタイ。

 どうやら、病気の妹のために薬が欲しいらしい美少年キィル。
 薬も扱う商人から、腕のいい薬師は魔法使いの集落に居ると噂を聞いて、いても立ってもいられず単身街をでたらしい。

「魔法使い、恐くないの?」
「正直、こわい……けど」
「それよりも妹を助けたい気持ちが上回ったのか。……いい兄だな」
「泣けるぜ……」

 しかし、いくら魔法使いにぼったくりの精神はないとはいえ、薬はある程度高価なもの。
 子供がそんなお小遣い持ってるのかな……?

「ハニティさんは、……」
「ハニティでいいよ」
「は、ハニティは、……魔女……なんだよね?」
「ん? まぁ、そうね。魔法みたでしょ」
「っ! あの! だったら! ……ぼくを、リースに連れて行ってくれませんか!」

 あー、そう言われるとは思った。
 困ったなぁ。
 親御さんとかのことを考えたら、早くラドリスの街に帰した方がいいんだけど……。
 それに。

「連れて行ったとして、お金……あるの?」

 いくらわたし達が人を助ける使命があるからと言って、それは『魔物』の存在からだ。
 魔力がなくても薬そのものはつくれるし、魔力がない分、医療の心得は医師の方がもちろんある。
 無理して魔法使いと関わらなくても、医師を呼ぶお金に回した方がいいと思うけど……。

「魔女は……、おとこが好きと聞いています。特に、若いおとこ。……お金はないので、……ぼくのことを好きに、してもらうつもりです……」
「ええええええ!?」
「そ、そうなのか……?」

 ちょっと!
 魔女のイメージ戦略、間違った方向にいってるんだけど!?
 だーれがショタコンだよ、確かに癒しだけども!
 ダオ引いてるじゃん。

「えーっと、キィル? それは……少し違う……かなぁ?」
「ぇ……?」
「う、うーん。上手く言えないんだけど」

 あんまり否定すると先人の努力が報われないので、やんわり訂正する。

「でも、……ハニティとダオさ……ダオも、そういう関係、……ですよね?」
「──はああああああああぁぁ!?」
「ははは!」

 笑いごっちゃない。
 あまりにもダオがかわいそう過ぎる。
 彼にだって選ぶ権利あるでしょうに。
 魔女ってどれだけ節操ないと思われてんだ。

「ち、ちがうねぇ」
「違うのか?」
「ちがうでしょーが!」

 悪ノリのダオが始まる。
 こいつ……、無垢な子供を騙すんじゃない!

「そ、そうなんですか……? でも薬師さまはお好きかも……」
「いや、知り合いだけどそんな子じゃないよ」
「え、そんな……」

 あああ、まずい。
 希望をなくすこと言ってしまった。
 うーん、どうしよう。
 ……そうだ。

「薬ってほどじゃないけど、すこし元気になるものなら、わたしが力になれるかも」
「ほ、ほんとうですか!」
「おいおい、ハニティ。若い方がいいなんて……ひどいじゃないか」
「ダオは黙ってて!」

 これじゃどっちが子供だか分からん。

「うん、お金も要らないよ。じっけ……じゃなかった、わたしの魔法で育てたものが、魔力のない人にも効果がアップするのか気になるし」

 それらをもっと効率良く体に効くよう調合した薬の方が、良いんだろうけどね。
 まぁ、原料だし大差はないでしょう。
 前世の東洋医学の考え方で、『薬食同源』……口から入る食べ物はすべて薬になるって考え方あるし。
 テイクアウトできそうな薬膳料理、作ってあげよう。

「あ、お腹空いてない? せっかくだし、どういう感じかキィルにもふるまってあげるよ」
「い、いいんですか……?」
「へぇ、楽しみだな」
「ダオはごはん抜きね」
「ハニティ、ひどい」

 ひどいのは、お前じゃあああ!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

湊一桜
恋愛
 王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。  森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。  オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。  行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。  そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。 ※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

処理中です...