【完結】転生魔女の気まぐれ食卓~プレ大魔女のゆる薬膳コースは効果がすごい模様~

蒼乃ロゼ

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27 ゆる薬膳コース、とんでもない模様①

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「う、うわぁ……!」

 目を爛々に輝かせたキィルがかわいい。
 つらい。天使。

 確かに、我ながら頑張ったと思う。
 ゆる薬膳コース料理。

 前菜としては黄のバターナッツかぼちゃ。
 サラダに、赤と緑……トマトと水菜のマリネ風。
 メインはメインと呼べるか分からないけど、ナスと魚の南蛮漬け。黒。
 締めに玄米とろろご飯。
 デザートは全部調理するまでにしっかり固まった、白の杏仁豆腐。いちおうクコの実乗せ。

 なんかもう、西洋なのか和風なのか中華なのか良く分からないので、コース料理の順番関係なくぜんぶテーブルに乗せた。
 それとなく説明はしたけど、好きなように食べてほしい。

 良いではないか、良いではないか。
 作る過程も楽しかったし、食すのも楽しみ!

 ……片付けのことは、今は考えてはダメだ。

「ぼ、僕っ! こんなにすごいご飯、……はじめてです!」
「喜んでもらえて良かった! 味も気に入ってくれると良いんだけど」

 ダオはダオで、「豪華だな」なんて目を輝かせてる。
 一緒に作ったけど、いざ食卓に並んだところを見ると、改めてそう思うよね。分かる。
 いつもはコースってより、定食? スタイルだ。
 豪華。

「あとで妹ちゃんへのお土産も渡すからね」
「な、なにからなにまで……」
「気にしないで」

 特にショタコンでもないエボニーに、押しかけ身売りをされたらこっちが気まずいからね。

「じゃぁ……いただきます!」
「いただきます」
「? いただ、きます……?」
「食べ物への感謝よ」

 そういうと納得したのか、今度はハキハキと「いただきます!」と唱えた。
 マジ天使。

「あ、あ、……あまい! です!」
「美味しい?」
「はいっ!」

 やはり子供、だからか。
 バターナッツかぼちゃのポタージュがお気に召した模様。

 皮が緑のかぼちゃよりは、さっぱりしているけど。
 例えたらコーンスープみたいかな?
 素材の甘さ。
 やっぱり、他の野菜と比べると子供からしたら食べやすいよね。
 うんうん、狙いどおり。

「これも初めての味だが、……美味しいな」
「こういう食べ方、あんまりないよね」

 魚の調理法は、香辛料と一緒に焼くのが多い気がする。
 
 それにしても南蛮漬け……うまい。
 味が染みる系は温かくても、冷えても美味しい。
 酢のおかげか、調理のおかげか。
 思っていたより魚も生臭くはなくて。
 骨もちゃんと食べれるくらいパリパリだし、なにより甘酢!
 ナスと魚と一緒に食べると、噛んだ瞬間にじゅわっと!

 外はカリ、中はふわっな魚と。
 ちょっととろみがあるナスがハーモニーを奏でて、口の中でうまくマッチ。
 今日も一言、……ありがとう。

「サラダもとろろも相変わらず美味しいし……」

 シンプルな分、水菜とトマトの鮮度の良さが際立つ。
 特にトマトなんて、どこかのブランドものかな? ってくらい素材の甘みが感じられる。
 さすがわたしの庭。

「はぁ……」

 知らず知らず、ため息がでる。
 美味しいご飯を食べれる。
 それって、きっと……当たり前のことじゃない。
 しかも体のことも考えて、バランスの良い食事。

 ……こういうのを、幸せっていうんですかね。

「(は、ハニティ……!)」
「?」

 なにやら、小声でダオが呼ぶ。
 それからジェスチャー。
 なにそれ? なんか、必死に右手の甲を指差してる。
 ……右手の、甲?

(んんん?)

 あそこには確か、呪術の印があったはず。
 そこに意識を集中すると、かすかに魔力を感じる。
 しかも、悪い感じはしない。
 印がどうなったのか確認したいけど、ダオは今、指の先は出るように作られたグローブを付けている。
 国を出る時から付けていたものみたいだけど、結界の中では事情を知るわたししか居ないので外していた。
 エボニーは気付いてなかったみたいだけど……。

 今日は結界外にお出かけだったので、しっかり装着。

「? どうか、しましたか?」
「──え!? いや、なんでもないよ~」

 キィルは特に異変は感じられないらしい。
 やっぱり、この感じは魔力よね。
 ……いや、待てよ。
 あとでこっそり、キィルの傷あとを確認しておかねばならない気がする。

 とりあえず……。

「で、デザートはハーブティーと一緒にいただこうか!」
「はいっ!」

 今は、美味しい料理を堪能しましょう。

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