最強魔術師、ルカの誤算~追放された元パーティーで全く合わなかった剣士職、別人と組んだら最強コンビな件~

蒼乃ロゼ

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魔術師と剣士

第六話 依頼達成と報告

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「おーー。それ魔道具だったんだ」

 短剣を携えている方とは逆の位置に、僕は鞄を携帯していた。

 魔力量に応じて容量が変わる、収納魔法マジック・バッグで、闇魔法の一種だ。
 鞄の表には装飾も兼ねて、魔石をあしらっている。

「こういう依頼を受ける際には必須だからな」

 討伐が完了したグリュンバードを中に入れ、帰還しているところだ。

「いや~~。いろんな面で、ルカちゃんと組むとやり易いよなぁ! ほーんと、状況に合わせた戦い方が出来る魔術師って希少だなぁ」

 自分では普通にしているつもりではあるが……。
 僕と同様、ヴァルハイトも以前のパーティーなのか、魔術師に対して良い思い入れがないように思えた。

「別に普通だが……。あ」

 道すがら、この地域でよく見かける風待草かぜまちそうが生えていた。
 時期によって付ける花は、花弁一枚一枚が長く、いつもは垂れ下がっている。
 風を受けると綺麗に広がって見えるため、そう呼ばれる。

「お、何の花か知ってるんだ?」

「わるいか」

「いや~~? 博識だなぁって、お兄さん感心してるだけ!」

 煎じて煮出して飲めば、疲労回復にもなる。
 少しだけ摘み取って鞄に入れた。

「魔物のことも元々知ってたみたいだし、ルカちゃん偉いなぁ。薬草も詳しいの~~?」

 自分のことをペラペラと話すのはあまり好きな方ではないのだが。
 自分が興味のある話題になると少し気も緩む。

「いや……。詳しいというほどでもないが。僕の魔法の師が、薬草学の権威なんだ」

「へぇ?」

「魔法について教わるうち、ついでに教わったこともあるだけだ。専門ではない」

「なるほどねぇ」

 師匠にはずっと、お世話になった。
 こうした薬草を見掛けると、当時のことが思い出される。



 そうこうしていると、プラハトの街へ帰り着いた。
 まずは依頼の報告のため、ギルドへ向かう。
 二度も訪ねた場所はさすがに迷わず行けた。
 
 扉を開くと、お昼までの賑わいは幾分か落ち着きを見せ、依頼の集まる掲示板の周りに人はほとんどいなかった。
 代わりに、報告を行うギルドの窓口には人が多く集まっていた。

「この時間だと、オレたちみたいに帰還者が多いだろうからなぁ。並んで待とうぜ~~」

「あぁ」

「その間にルカちゃんのこと、聞いちゃおう!」

「……はぁ」

 お調子者のヴァルハイトは、暇さえあれば話を振ってくる。
 僕はどちらかと言えば口数は多い方ではないので、どうも苦手だ。

「オレは二十六歳! ルカちゃんは何歳~~?」

「二十歳だ」

「へぇ……。十八歳くらいかと思ってたや」

 大人びて見えなくて悪かったな。

「中身は五十歳くらいだけど、見た目は若いよね!」

 それは褒めているのか、見た目の割に歳食ってると言いたいのか。

「じゃぁ、ルカちゃんの出身地は~~?」

「……」

 自分の出自については、答えを持ち合わせていない。
 育ったのは師匠の元だったが、自分が生まれた場所は知り得なかった。
 知る機会もなかった。

「──、あ~。まぁそれは追々、教えてもらお!」

 頭をガシガシと掻きながら、ばつの悪そうにヴァルハイトは言う。
 チャラいが空気は読める男らしい。

「そういうお前はどこ出身なんだ?」

「ん? あーーーーーー。一応、ルーシェント?」

 何で疑問形なんだ?
 少し離れた位置にある、聖王国ルーシェント。
 別の国から来た冒険者なら、旅慣れている様子なのも納得がいった。

「お、そろそろかなぁ」

 雑談をしながら待っていると、受付の順番になる。
 討伐対象を所持している僕が報告をする。

「次の方どうぞーー!」

 明るい声で受付を担当する女性が呼びかけた。

「素材納品の依頼を達成したことを、報告したい」

「はいはーい、かしこまりました! では、受注された方のお名前と、ギルドカードをお見せくださーい」

 ヴァルハイトが手渡したのは、冒険者としての情報が載ったカード。
 砕かれた魔石も素材に練り込まれ、登録時には所持者の魔力も一緒に登録する。
 別の者が悪用することは出来ない仕様になっている。

「ヴァルハイト・ルースさんですね……、グリュンバードの納品依頼でしたか。お疲れ様です!」

「どうも~~♪」

「それでは依頼達成の証を持って、お隣の納品所へとお越しください! そこで素材の確認を行って、報酬の受け取りになります」
 
 薬草や魔石などの納品依頼はこの場で終わりだろうが、魔物や大きな物の納品となると、別の場所が設けてある場合が多い。ここは大きめのギルド、その施設が併設されているようだ。

「分かった。……ヴァルハイト、行くぞ」

 彼は受付の女性に、依頼とは関係ない話を次々振っていた。
 女性は困り顔だ。相変わらずチャラい。

「ちぇ~~。お姉さん、またね」


 ◇


「おお、見事なもんだ」

 ギルドのすぐ隣にある、魔物を解体、納品をするための施設へ来た。
 大型の魔物でも収容出来るような、上にも横にも広い空間だ。

 そちらの受付担当の、頭がつるっとした屈強な男が唸る。
 恐らくは、きれいに仕留めたことに対する賞賛だろう。

「どうだ、依頼はこれで達成だろう」

「いや、見事な腕をしているな。……こんなにきれいな状態での納品は初めてだ。大概は羽根の量も一体につきごく僅かだが……。本体ごと綺麗な状態で納品されたのは前例がないな」

「…………、そこの剣士が機転を利かせたんだ」

「んええ!! ルカちゃん、今オレのこと、褒めた!?」

「っ褒めてない! 事実を言っただけだ!」

 断じて剣士のことなど褒めていない。
 僕が綺麗に仕留めたと勘違いされてもいけないので、事実を伝えただけだ。

「ほぉ、良いコンビなんだな」

「そうなんだよね~~♪」

「誰がだ!」

 剣士などに頼らなくとも、一人で依頼を受けることだって出来た。
 ──まぁ、元のパーティーの剣士に比べれば天と地ほどのやり易さもあるが、それだけだ。

「まぁまぁ、こちらとしては助かるよ。依頼主が必要なのは、羽根の部分だから。実はグリュンバードの肉は美味しいと評判でね。納品する素材とは別に、本体は買い取らせてもらえないか? ギルドが運営する食堂に卸すのに丁度いい」

「あぁ、僕たちは本体部分を必要としていないから好きにしてもらって構わない。──もし、良ければだが、風の魔石が獲れれば譲ってもらえないか?」

「ほう?」

 魔物の中には、属性が付与された状態の魔石を宿すものも存在する。
 魔力を留めておくのに適した鉱物に、魔術師が魔力を込めたものもあるが、どちらにしても魔石というのは一般的に安くはない。

「へぇ~~。ルカちゃん、抜け目ない!」

「うるさいぞ。何なら買い取りでも構わない。お金は工面する」

「いや、だったら本体を譲ってもらう代わりに、魔石はタダというのはどうだ? 依頼主からの報酬金は別で出るし、それならお互いにとって一番良いと思うが」

「あぁ、それで構わない」

「八体も居ると時間が掛かる……。明日また来てもらえるか?」

「助かる」

 魔石は必ず見付かるものではない。
 まして大きさや、魔石の宿る場所など、個体によっても様々だ。
 明日の結果を待つ他なかった。

 依頼達成の報酬金だけを受け取り、当初の通りヴァルハイトと綺麗に二分する。

「おーー。この街での報酬、初ゲット♪」

「良かったな。……じゃあ僕は行くぞ」

 もともとこの依頼だけという話だ。
 報酬も得たところで、一緒にいる理由もない。
 早いところ街を軽く見て回って、夕食にありつきたい。

「えええ!? そんな、オレを見捨てるの!?」

「人聞きのわるいことを言うな!」

「お前さん……」

 受付の男性が、ヴァルハイトを哀れな目で見つめる。

「うぅ……。明日からオレは一体どうすれば……」

 良く言う。剣士の中でも、かなりの実力者だ。
 ソロでだって食べるには困らないはずだ。

「なぁ、ルカといったか。せっかく相性の良い相手を見付けたんだ。しばらく組んでみたらどうだ? こう言ってはなんだが、組んで間もない相手としっくりくることは、中々ない機会だと思うが」

「おっちゃん、イイこと言う!!」

「はぁ……」

 彼の言う通り、事実。数多の冒険者の中で、相性の良し悪しがすぐ分かるのは珍しいことだろう。
 依頼を何件かこなしたあと、初めて分かることが多いはずだ。

 だがヴァルハイトとは、まだ素性も実力も全て明かした訳ではないにも関わらず、お互いが上手く機能する。そういう印象だ。

「──はぁ。分かった。正直僕は剣士と組む気はなかったが……。しばらくは付き合おう」

「やったあああああ!! おっちゃん、ルカちゃん、ありがとおおおお!」

「良かったな、あんちゃん」

 剣士と二度と組むか、と思った矢先、再び組むことになった。
 普通であれば、情に絆されることなく、さっさと別れた。
 僕にはどうしても一つ、ヴァルハイトに関して興味があるからだ。

 精密な付与魔法。
 剣士であり、魔法の扱いにも長ける魔法剣士。
 あまり見受けない存在だからだ。

 もちろん世の中には色々な属性を扱う魔法剣士がいる。
 付与魔法だけではなく、攻撃魔法や回復の魔法を使いながら冒険する者もいるだろう。

 だが、ヴァルハイトのそれは、魔法の専門である僕ですら驚くほど、精密で綺麗な魔力の掌握だった。

 今回は僕が前衛にまわったため、実力も十二分に見せてもらえていない。
 それを確認してからでも、ソロに戻るのは遅くない。

 魔法について深く知りたいと願う、己の性を恨みつつもヴァルハイトとのコンビとやらを続行するのであった。

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