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メーレンスの旅 王都周辺
第七十話 エドの用事
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「ワシぁ元々、グランツ領都のグランツェストに行くつもりだったんじゃ」
「ほう」
領都には義父上が取り仕切る屋敷があり、数度訪れたことがある。
師匠からすれば、実家というやつだろう。
僕らが訪れるよりも、義父上が王都に来る機会の方が多いが。
「ルカちゃん家のとこか~」
「何用で行くつもりなのだ?」
「なんじゃ、ルカ坊は参加せんのか。もうすぐ水神祭じゃろ」
「! そうか……、もうすぐ水の月に入るのか」
「お祭り?」
「ゼの月はメーレンスにとっても重要じゃろうからなぁ」
水の国と呼ばれる所以の一つ。
ゾゾ共和国には北にゾンレス、東南にゾルテッツォという大きな山を有し、そこから北にある公国と南側にあたるメーレンスに水の恵みがもたらされる。
南のゾルテッツォ山脈から水が下って川となり、王都の北から西を通る流れと、グランツ領側へと流れる二つの主流がある。
その川の最も勢いが増す時期に、水の女神への感謝を表して水神祭を執り行う。
もちろん、グランツ公爵家が祭主だ。女神聖教の者と協力して行われる。
「じゃぁ、エドは観光に来たってコト?」
「なーにを言うとるか、ヴァルっ子。ワシぁエクセリオンじゃ。グランツの水瓶を見に来たんじゃ」
「みずがめ?」
「魔道具か」
王都の中にもいくつかある給水所。
街の火と同じく領主の責任において整備する水の魔石から、滾々と湧き出る水は飲料水、洗濯、掃除さまざまな事に使われる。
個人で水の魔道具を所有する者も多いが、魔力の補給には金がかかる。
ことグランツ領都においては、街中に水路が巡っていることもあり良く見かける。
その中でも、国内最大級の水の魔道具。
領都の側にある湖の一角に、いつ魔力を補充しているのか分からないほど永遠と水を供給し続ける水瓶がある。
「本来、魔道具ってのはグノのエクセリオンの管轄なんじゃが、あいつは今別件で他国に行っとってな。まぁ、ドワーフって種族は魔石やら細工やらにも精通しとる。水神祭前に水瓶の様子を見に来たわけじゃ」
「へー」
(エクセリオンという者たちは、何人いるんだ……?)
少なくともエリファス、エド、土のエクセリオン。三名は把握したが……。
話し振りからすると、多種族で構成されているようだしまだまだ居そうな気はする。
「当代はまだ、グトルフォス殿で良いんだよな?」
「あぁ、義父上が治めてくださっている」
「ってぇと、やっぱ直接領都に行くしかねぇか」
「そういえば、なんで王都に来たというか、センの森に行きたいの~?」
「ん? あぁ、道すがらここの商業ギルドに寄った時にな。この街の工房がイーイ仕事したって聞いてなぁ」
「(……あれのコトかな?)」
「(魔剣デュランダル、みたいなやつか)」
魂の傑作とかなんとか。
確かに武具屋で力説された、とっておきの武器があった気がする。
「ワシぁ鍛冶だの細工だのに目がないドワーフじゃからのぉ、武具屋に置いてるってんで、見に行ったんじゃ。そこで水属性の魔物の素材が防具に使われとったのを見て、センの森にもついでに行こうかと……。どうも、ピンときた素材を試さずにはおれんのじゃ」
「なるほど、職業病ってヤツ!」
「ハッハッハッ! そうかもしれんなぁ!」
豪快に笑うエドは、やはり武具に心底興味があるのだろう。どこか嬉しそうだ。
「イイ仕事と言えば、ヴァルっ子の、その剣。……ワシの勘違いでなければ──」
「い゛!? ぁ、あー! さっすが、火のエクセリオンだなぁ!」
「?」
大げさに驚くヴァルハイトは、どこかわざとらしい。
確かにこいつの剣は見事なものだ。
紅い……宝石だろうか? 魔力をそう感じないから魔石ではないと思うが、柄頭にまであしらわれたそれは美しい。
先細りになる刃はやや細身だが、柄は長めで両手で持つことも可能だろう。
冒険者が持つにしては繊細な装飾を施されており、やはり王家所有の一品なのだろうか。
「──そうじゃ。エクセリオンと言えば、さっきの態度……ワシがこの街に来ておったことを知っていたのか?」
「そっ、そう! ライゼンデって吟遊詩人が教えてくれたんだよね~!」
「ライゼンデ? ふむ……」
「本名ではないだろうし、エクセリオンと挨拶するような間柄ではないと言っていた。知り合いではないかもしれないな」
「なるほどの」
エドより遥かに謎めいた人物だが、旅をしているエルフという先入観からそう思うだけかもしれない。
仮になにか偽っていたとしても、悪意からではないと思う。
「まぁまぁ、エドはセンの森に行きたい。オレらはランクアップに来て、多分すぐ入場できる……ちょうどイイんじゃ?」
「そうだな。……エドさえ良ければだが、僕らも魔物との戦闘で遅れはとらない。……共に行くか?」
特別用事がある訳ではないが、涙草を補充しておくのもいい。
なんなら既に納品依頼が出されているかもしれない。
火のエクセリオン、というくらいだ。
彼の、火の魔法にも興味がある。
「おっ、いいんかの?」
「もっちろん! 旅は道連れ~♪」
「正直、大まかな指針は立てているが、細やかな部分は決めていないんだ」
「そりゃぁ助かる!」
ランクアップに立ち寄ったギルドで、意図せず次の予定が決まった。
「ほう」
領都には義父上が取り仕切る屋敷があり、数度訪れたことがある。
師匠からすれば、実家というやつだろう。
僕らが訪れるよりも、義父上が王都に来る機会の方が多いが。
「ルカちゃん家のとこか~」
「何用で行くつもりなのだ?」
「なんじゃ、ルカ坊は参加せんのか。もうすぐ水神祭じゃろ」
「! そうか……、もうすぐ水の月に入るのか」
「お祭り?」
「ゼの月はメーレンスにとっても重要じゃろうからなぁ」
水の国と呼ばれる所以の一つ。
ゾゾ共和国には北にゾンレス、東南にゾルテッツォという大きな山を有し、そこから北にある公国と南側にあたるメーレンスに水の恵みがもたらされる。
南のゾルテッツォ山脈から水が下って川となり、王都の北から西を通る流れと、グランツ領側へと流れる二つの主流がある。
その川の最も勢いが増す時期に、水の女神への感謝を表して水神祭を執り行う。
もちろん、グランツ公爵家が祭主だ。女神聖教の者と協力して行われる。
「じゃぁ、エドは観光に来たってコト?」
「なーにを言うとるか、ヴァルっ子。ワシぁエクセリオンじゃ。グランツの水瓶を見に来たんじゃ」
「みずがめ?」
「魔道具か」
王都の中にもいくつかある給水所。
街の火と同じく領主の責任において整備する水の魔石から、滾々と湧き出る水は飲料水、洗濯、掃除さまざまな事に使われる。
個人で水の魔道具を所有する者も多いが、魔力の補給には金がかかる。
ことグランツ領都においては、街中に水路が巡っていることもあり良く見かける。
その中でも、国内最大級の水の魔道具。
領都の側にある湖の一角に、いつ魔力を補充しているのか分からないほど永遠と水を供給し続ける水瓶がある。
「本来、魔道具ってのはグノのエクセリオンの管轄なんじゃが、あいつは今別件で他国に行っとってな。まぁ、ドワーフって種族は魔石やら細工やらにも精通しとる。水神祭前に水瓶の様子を見に来たわけじゃ」
「へー」
(エクセリオンという者たちは、何人いるんだ……?)
少なくともエリファス、エド、土のエクセリオン。三名は把握したが……。
話し振りからすると、多種族で構成されているようだしまだまだ居そうな気はする。
「当代はまだ、グトルフォス殿で良いんだよな?」
「あぁ、義父上が治めてくださっている」
「ってぇと、やっぱ直接領都に行くしかねぇか」
「そういえば、なんで王都に来たというか、センの森に行きたいの~?」
「ん? あぁ、道すがらここの商業ギルドに寄った時にな。この街の工房がイーイ仕事したって聞いてなぁ」
「(……あれのコトかな?)」
「(魔剣デュランダル、みたいなやつか)」
魂の傑作とかなんとか。
確かに武具屋で力説された、とっておきの武器があった気がする。
「ワシぁ鍛冶だの細工だのに目がないドワーフじゃからのぉ、武具屋に置いてるってんで、見に行ったんじゃ。そこで水属性の魔物の素材が防具に使われとったのを見て、センの森にもついでに行こうかと……。どうも、ピンときた素材を試さずにはおれんのじゃ」
「なるほど、職業病ってヤツ!」
「ハッハッハッ! そうかもしれんなぁ!」
豪快に笑うエドは、やはり武具に心底興味があるのだろう。どこか嬉しそうだ。
「イイ仕事と言えば、ヴァルっ子の、その剣。……ワシの勘違いでなければ──」
「い゛!? ぁ、あー! さっすが、火のエクセリオンだなぁ!」
「?」
大げさに驚くヴァルハイトは、どこかわざとらしい。
確かにこいつの剣は見事なものだ。
紅い……宝石だろうか? 魔力をそう感じないから魔石ではないと思うが、柄頭にまであしらわれたそれは美しい。
先細りになる刃はやや細身だが、柄は長めで両手で持つことも可能だろう。
冒険者が持つにしては繊細な装飾を施されており、やはり王家所有の一品なのだろうか。
「──そうじゃ。エクセリオンと言えば、さっきの態度……ワシがこの街に来ておったことを知っていたのか?」
「そっ、そう! ライゼンデって吟遊詩人が教えてくれたんだよね~!」
「ライゼンデ? ふむ……」
「本名ではないだろうし、エクセリオンと挨拶するような間柄ではないと言っていた。知り合いではないかもしれないな」
「なるほどの」
エドより遥かに謎めいた人物だが、旅をしているエルフという先入観からそう思うだけかもしれない。
仮になにか偽っていたとしても、悪意からではないと思う。
「まぁまぁ、エドはセンの森に行きたい。オレらはランクアップに来て、多分すぐ入場できる……ちょうどイイんじゃ?」
「そうだな。……エドさえ良ければだが、僕らも魔物との戦闘で遅れはとらない。……共に行くか?」
特別用事がある訳ではないが、涙草を補充しておくのもいい。
なんなら既に納品依頼が出されているかもしれない。
火のエクセリオン、というくらいだ。
彼の、火の魔法にも興味がある。
「おっ、いいんかの?」
「もっちろん! 旅は道連れ~♪」
「正直、大まかな指針は立てているが、細やかな部分は決めていないんだ」
「そりゃぁ助かる!」
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