最強魔術師、ルカの誤算~追放された元パーティーで全く合わなかった剣士職、別人と組んだら最強コンビな件~

蒼乃ロゼ

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メーレンスの旅 王都周辺

第七十二話 ドワーフの王

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(血に……炎が!?)

焔の怒りフラム・エルガー!」

 エドがそう唱えると、彼から……ではなく。
 メイルウルフの爪先。
 腕を掠め、僅かに血に濡れたそこから──炎が広がった。

『ッ!?』

 訳も分からず狼狽えるメイルウルフは隙だらけだ。
 水属性の毛皮はその炎の威力を軽減するものの、それすら追いつかない。
 爪先から徐々に胴体へと及ぼし始め、もはやエドの方も見ずに池に飛び込もうとした。

「残念じゃったのぉ」

 今度はエドが気付かれないまま近付き、掌をグッと握りしめれば炎が一気に全身へと広がった。
 成す術も無く焼き尽くされる。

「す、すご……! カッコいー!」
「? なにを謙遜しとる。ヴァルっ子の炎の方が何倍もすごいじゃろに」

(……?)

 ヴァルハイトが焔の剣フラム・ベルクを見せた様子はなかったが……。
 ゾゾ共和国の者が魔力感知に優れるからだろうか。

「ぇ、えーっと。それは追々というか、ナンてーか」
「? まぁ、いいわい。あっちの木に打ち付けた方、毛皮は無傷じゃろし持って帰るかのぉ」
「目的はメイルウルフだったのか?」
「いや、武具屋で見たのはスケイルメイルだったなぁ」
「水属性の鱗か」
「他の魔物が出てくるとイイねー」
「……それにしても、ドワーフの王族なのか?」

 確かに、魔導門トーアといった特定の血に反応する魔術というものはあるが。
 血そのものが魔法を成すなど、見たことがないな。

「王族、というのか。古い血筋というのか」
「歴史ある一族的な?」
「まー、そもそもエルフやワシらっちゅーのは、龍や聖獣らのあとにできた種族と言われとるからのぉ」
「ふむ……」

 人間より寿命が長い種族の者らは、神々が先んじて生み出した種族であると言われる。
 最もはじめに肉体を得た、知能ある生命体は『龍』と呼ばれた。
 現在、その伝説とも言える存在を確認できるのは火の国と呼ばれる場所に座す一体だけで、彼らに近い存在である眷属の『竜』。あるいは、そんな力あるものを模そうと進化を遂げた魔物が数種いる程度。
 特に火の国以外の人間にとっては、遠い、遠い存在だ。

 そんな彼らに近い歴史を持つ、ということか。

「へー、すごいね」
「古の種族……。しかもそれが、現在まで続いているのか」
「じゃから、まぁ。良くも悪くも色んなことは経験したじゃろ。血で炎ぐらい、なんてこたぁない」
「イヤイヤ、それふつーじゃないから!」
「火のエクセリオンか……。なるほど」

 彼ほど相応しい者は、そう居ないだろう。

「鍛冶する時も血ぃ流すの?」
「ワッハッハ! さすがに自分の魔力を使うわい! ワシぁ火の単属性シングルじゃ」
「ふむ」

 血が魔法と成る。あるいは血に反応する……、それはつまり。血に魔力が通っていると考えていいのだろうか?
 それとも肉体にはすべて魔力が通っているのだろうか?
 確かに肉体は魔力の器と言うが、特別魔力を蓄える器官が備わっているとは聞いたことが無い。

(魔法学校に居るだけでは、分からないことばかりだな)

 基本を教える場所とはいえ、やはり冒険者として実地で経験するのもまた違って良いものだ。
 漠然と考え、使ってきた能力。それへの理解を深めることは、きっと自分を知ることにも繋がるはずだ。

「ヨっこいしょ」

 エドは綺麗に残った一体の遺骸を回収する。

「──ところでルカ坊は、全属性マスターなのか?」
「あぁ」
「そりゃすごい」
 
 彼も自らを明かしたのだから、素直に答えるべきだろう。
 人間以外の種族であっても、やはり双黒は珍しいものなのか。

「ヴァルっ子は?」
「あ、えーっとオレはねぇ」
「まぁ火は確定じゃろなぁ」
「ンー」
「こいつは少し、特殊なんだ」
「ヘェ?」

 ヴァルハイトの考えは恐らく、エクセリオンである彼に隠したい訳ではなく、余計な悪意から彼を遠ざけるために言うべきか迷っていると思われる。
 翼の会や第二王子派のような、エドが本来関わらなくともいい悪意から。

「無理して言うこたぁねぇ。とにかく……ワシぁ素材や鉱石もそうだが、強い奴にも目がなくてなぁ」
「ほう?」

 動きも見ずに、良く分かるものだ。鍛冶師やエクセリオンとしての経験だろうか?

「そういう奴を見ると、こう。腕が鳴るというかなぁ」
「おー! いつか、エドにナンか作ってもらいたいな~♪」
「なるほどな。職業病というやつか」
「ワッハッハ! そうじゃなぁ!」

 エドはとてもハッキリとした人物というのか。その目的や手段が明確で、隠し事をするようなタイプでもないと思う。間違いなく、信頼出来る人物であると言える気がする。
 それは、人間とばかり接してきたからこそ感じる部分なのかもしれない。


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