冒険者ホテルの『ホテリエ』でございます~異世界流おもてなしで最強支援?~

蒼乃ロゼ

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7.クラスとスキルと

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「あぁ、確認したからと言ってすぐ他人には教えないことだ。長期でパーティーを組む場合や、信頼できる人物にだけ伝えると良い」

 上手いこと言って悪用する人も中には居るってこと?

 ……それにしても、私のユニークスキル。
 十八歳以前の自分に影響を受ける訳だけど、なるほど。少し理解できる。

 というのも、私が人見知り故に、人と接すると必要以上に気を遣い過ぎるためだ。

 今、相手にどう思われただろうか?
 今の言い方、気をわるくしてないだろうか?
 私の振る舞い、これで合ってたかな?

 なんて、人の顔色うかがって、子供の頃は交流してたっけ。
 そのせいで人と接すると気力が一気に減ってしまう。

 大人になって自分を客観視できるようになり、ここで気力が持っていかれてたんだな~って気付けたけど。
 それが出来ない内は、人と接することって疲れることなんだ、って思ってたり。

 でも、その立ち回りで人をなるべく傷付けず、相手が喜んでくれることが多かったおかげで、人を喜ばせることが好きなんだってことにも気付けた。

 すごく矛盾した自分の気質に悩んだりしたけど、仕事でお客様や同僚に喜んでもらうことに気力を割く代わりに、プライベートは静かに過ごす。
 この方法で、両立を叶えた。

 うん。まさに『ユニークスキル』だな。

 ……謎の注釈についてはちょっと分からないけど。

「そう、ですね。自分のクラスに合った、ユニークスキルでした」

「そうか、それは良かった。そうそう、スキルにはそれぞれレベルが存在する……、熟練度だな。スキルに対応した武器を使ったり、魔法を使ったりすることで上がっていくんだ」

「なるほど。スキルの横に10と書いてあった、それのことでしょうか」

「……え?」

「え?」

 何故、驚く。

「……スキルのレベルは穏やかに上がっていくもので、クラス持ちはどちらかと言うとスキルの『数』を重視するんだけど……。レベルは10で最大だよ」

「え”」

 レベルMAXですか?
 私、……やっちゃってます?
 前世で人に気ぃ遣い過ぎました?

「見た目から勝手に二十歳くらいを想像していたけど、記憶を失う前に相当な修練を積んだのかもしれないな」

「…………はい?」

 お嬢さんと言われたり、何だか変だなとは思ったけど……。
 席を立って、壁に備え付けてある鏡を見てみる。

「デスヨネーー」

 ……うん。若いね。ていうか誰この美少女というか美女というか。
 肌透き通ってるし碧い瞳がキレイだな、うん。
 大人っぽいけど少女らしさもあって、まさに社会人なり立ての頃だわ。
 耳の形でいうと、エルフではないと思う。
 単純に若返ったのだろう。……髪はなぜか白銀だけど。

 あ、レベル10ってあれか。
 前世のホテリエ歴が十年だから、その分ってこと?

 んで、異世界で今度は【クラス・ホテリエ】として再スタートの意味で、今二十歳くらい?

 ヨクデキテルネ。

「他に聞きたいことはあるか?」

 妙に納得して、一旦椅子に戻る。
 他、そうだなぁ。
 『アルバ・ダスク』は、グランアルバとエルダスクの間が発生地だから、ってことでしょ?

「グランアルバ王国とは、どういった国でしょうか?」

 ちょっと抽象的すぎただろうか。

「ふむ。我が国と比べて、という話で言えば、冒険者ギルドの本部がこちらにある為、冒険者の数はこちらの方が多い。しかし、あちらには四つの王国騎士団があり、戦力に違いはそうないだろうが……その……。なんというか、だな」

「?」

「まぁ、クラス持ちが権力を求める傾向でいうと、あちらの方が大きいな。我が国はどちらかと言うと自分の強さを追い求める者が多い。二年毎に主権を譲渡するのも、権力が特定の種族に集中するのを防ぐ意味があるんだ。盟主以外も執政の立場にはあって、盟主が暴走することもない」

「なるほど……、王国ということは王家がある訳ですしね。権力が集中しやすいと」

「その代わり、あちらにはあいの聖団の本部がある。回復や支援のクラス持ちが多く所属して、ポーション類の製作も担っているな」

「へぇ」

 ポーション、か。確かにクラス持ちの必須アイテムなんだろうけど、それこそ国の機関じゃないのが不思議だなぁ。回復薬って結構重要だし、民衆よりもクラス持ちの支持を得やすいなら、国が取り込んだ方が権力も集中しやすいだろうし。

「冒険者ギルドもあいの聖団も、アルバ・ダスクに対抗するための組織と言っても過言ではない。その為、便宜上二国に本部があるが、実態は越境団体なんだ。特定の国に属している訳ではない」

「ああ、そういう事ですね」

 それは何となく、ゲームでいう冒険者ギルドと同じ感じだな。
 てっきりエルダスクという国が冒険者ギルドを管理しているのかと。
 独立した機関ってことね。

「他には、……そうだな。信仰という話だと、我が国は炎の王と呼ばれる女神。グランアルバには水の王と呼ばれる女神が祭られている。あいの聖団のほとんどは、回復魔法である水属性に適性がある者が多いから、本部があるのも当然なんだ」

「ははぁ、水属性が回復魔法なんですね」

 光魔法、とか聖属性、ではないんだ……?

「そうか、その辺も覚えていないのか。……ふむ。説明が難しいな」

「あ、いえ。その辺はおいおいで……」

 正直たくさんのことを教えてもらった為、頭とお腹がいっぱいいっぱいだ。
 うん? お腹といえば……。

「……話はこのくらいにして、何か食べようか。記憶もない中魔物に追われたんだ、疲れただろう?」

 お腹に手を当てていると、それに気付いたラルフがさり気なく食事を提案する。
 いや本当、おモテになるでしょうに……。

「女将もそろそろ戻ってくる頃だろうし。……容体も気になる、迎えに行くか。貴女は疲れただろうから、ここで休むといい。女将が戻ったら、すぐ食事にしよう」

 この男、私以上に気遣いができるな!?
 正直色々あったのとお腹が空いたので、外に出る元気はなかった。
 一応男性の部屋でくつろげるのか? という点は置いといて。

「では、……お言葉に甘えさせていただきます」

「ああ。何かあれば、さっきのエドが食堂に居る。頼るといい……行ってくる」

 ラルフは掛けてあった外套を再度羽織り、女将の入院? しているあいの聖団の施設へと向かっていった。

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