異世界弓師~作るおっさんと、射るエルフ~

蒼乃ロゼ

文字の大きさ
3 / 57
弓師、異世界へ

三話 本気で謎の弓師

しおりを挟む
 どうやら俺は漫画のような、異世界転移というものをしたらしい。

 日本人とは違う特徴を持つ皆さん自ら、『エルフ』と名乗りをあげたので恐らく間違いない。
 仮にここが地球で、彼らがまだ発見されていない種族なのだとしたら、言葉が問題なく通じるのはおかしいからだ。

 なぜそうなってしまったのかは分からないが、それだけは事実として認識しなければならない。



「……」
「……」

 き、気まずい……。

 後ろから突き刺すように感じる視線が痛い。

 現在俺はエルフたちの指示に従い、彼らの拠点へと移動させられている。
 俺が降ってきたという聖樹は彼らの村の奥に位置しているようだ。

 目の前にはエルフのお偉方らしき皆さん。
 後ろには先ほどのイケメンお兄さん含め武装したエルフの皆さん。
 両隣には年若いエルフの男性。

 ……うん、逃げ場なし!

 逃げるつもりもないが、俺への不信感というものが眼に見えてちょっとかなしい。
 怪しまれている以上ボロを出すわけにもいかないので、俺からは余計なことを話さないようにした。

 とにかく、危害を加えるようなことは一切ないと証明して、自分の置かれた状況を説明しないと……。それも、『異世界から来ました!』なんて言った日には怪しさMAXだ。
 直前の記憶以外はあいまい……のような無難な理由を考えておこう。







「──着いたぞ」
「おお……」

 聖樹とやらの大きさもすごかったが、エルフの集落に生えている木々も中々に大きい。
 木の上にログハウスのような家があったり、木と家が一体化していたりと日本では見ることのないようなまさにファンタジーな世界。
 まさに『エルフの隠れ里』のイメージそのままだ。

 村に着くや否や、先を行っていたエルフのお偉方は緊急会議なのだろうか。
 ササっと皆さんどこかへ向かう。

 いや、そうだよな……。
 なんせ俺、聖樹で行われていたエルフの神聖な儀式を邪魔したんだもんな……。

 しかも没収されたけど、聖樹の枝を折ってしまったらしいからな。
 長老会議のような事態になっても何ら不思議じゃない。
 イケメンお兄さんの言っていた『処遇』というのが何なのか、考えるだけで恐ろしい。

「おい」
「! は、はい」
「名は?」
真中侯矢まなかこうや……あ、いや。名はコウヤだ……です」

 見た目は二十代くらいに見える若々しいエルフのお兄さん。
 だが、エルフというからにはもしかしたら年上かも……という謎の理性が働いて言い直す。

「コーヤか。私はミラウッド。今回の儀式の責任者だ」
「ど、どうも……」

 そりゃ激怒されても仕方ないな……。

「ひとまず、か……。それがハッキリとするまでは、コーヤが何者であろうと解放することはできない。そのつもりでいたまえ」
「聖樹が、折れた理由?」

 てっきり、
『怪しいヤツは逃がすな!!』
『人間が侵入したぞ!!』
 ってことかと思ったが……。

 それよりも聖樹が折れたことの方が、エルフにとって一大事なんだろうか?

 いやまぁ、神聖な木を折っちゃダメなのは間違いないが。
 ミラウッドさんの言い方だと、聖樹はものみたいだ。

「……まさか、よりにもよって人間の手で折れるとは」
「も、申し訳ない」

 深刻そうにため息をつかれると、申し訳なさが加速する。
 俺にとっても一大事な状況だが、彼らにとっても同様だ。
 なるべく冷静に……とは努めてみるが、やはり不安の方が大きい。

 これから自分がどうなるのか。
 どうすればいいのか。
 あるいは、どうしたいのか。
 まったく想像もつかない。

 俺はとにかく一つでも安心できる要素がないか、情報を集めることにした。

「すまないが、状況を教えてもらえるか? 正直なところ、光に包まれたせいなのか直前の記憶以外があいまいで……」

 ちょっと苦しいか……!?

「ミラウッド、もし人間たちの仕業だとしたら──」
「いや。仮にそうだとしたら、聖樹が折れる理由にならない」

 側にいた別のイケメンエルフがミラウッドさんに問いかける。
 みんな背が高いので、俺は見下ろされる形に。

「…………いいだろう。コーヤの置かれた状況を整理する。時に、自分のことは覚えているのか?」
「名前や年齢、こことは別の場所で竹を集めに山に入ったということは覚えているんだが……」

 そんな都合のいい記憶はないと思うが、不思議な力で異世界転移したくらいだ。
 『絶対ない』ことなんて言いきれないだろう。

「タケ?」
「木質化する植物のことだ。場所によっては生えないところもあるから、知らないのも無理はない」

 実際日本でも、北海道では一部の地域でしか竹林を見掛けないみたいだからな。

「ほう……そういうことは覚えているのだな」
「えっ!? ああ……たっ、たしかに。断片的にだが」

 な、なんとかなれ──!!

「……まあいい。聖樹での儀式というのは、近頃この周辺に棲む精霊たちが私たちの呼び声に応じないことが多くなってきた。力が弱まっているのであれば何か理由があるはずだろうと、聖樹に棲む精霊に話を聞くために祈りを捧げていたのだ」
「精霊!? ……なるほど、そこに俺が……」

 さすがは異世界。精霊が実際にいるんだな。

「ああ。ただでさえ人間のコーヤが聖樹から降ってきたともなれば、人間たちが森に何かしたに違いないと思うのが普通だろう?」

 な、何も言い返せない……!

 俺が犯人でないのは確実だが、状況証拠という意味では揃い過ぎている……!!
 エルフの村をざっと見渡した限り、人間が一緒に住んでいる感じはしない。
 彼らと人間という種族の関係は具体的に分からないが、少なくとも儀式に参加している様子はなかった。

「つまり、俺は重要参考人……」
「……だが、聖樹の枝をその手に持っていたのはまた別の話だ」
「え?」
「かの聖樹は、悪しき心をもってその枝葉を手折たおることはできないと言い伝えられている。……いや。そもそも、精霊の許しなしには触れることもできないはずだ」
「えええーーーー!!??」

 事件の犯人として疑われたと思ったら……、逆に精霊の許しを得た重要人物としての証拠も持っていたってことか!?

 そりゃ長老たちも会議をするしかない。
 エルフたちも責めるに責められないというわけか。

「……というわけで、コーヤの処遇は今長老方が話し合っているところだ。しばらくは私が君を見張ることになる」
「はっ、はい……」

 精霊との繋がりを持っているかもしれない証拠が出てきて、『貴様』から『君』には格上げになったものの。しかし聖樹から降ってくるという意味不明な事態が解決したわけではない。現状俺はエルフたちにとって『本気で謎の人物』というわけか。

 しかしストレートに『見張る』と言ってくれるミラウッドさんは、なんというか誠実だな。
 嘘がつけないタイプだろうか。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

処理中です...