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十羽 魅惑のY、永劫のラビリンス~かわいいお口の秘密~
しおりを挟む「なぜだ!? なぜ、こんなにも愛らしい!?」
『ミエーーーー!?』
食事を終え、名残惜しそうにするアルクァイトを強制送還し、カルナシオンとうさぎさん、ギルクライスの三人は床に座って会議をしていた。
「なぜだ……それがなぜ、分からない!!」
カルナシオンは嘆いた。
己の知力の足りなさに。
なぜ、うさぎさんはこうも愛らしいのか。
それを解明し、言葉にする。元王宮魔導師という知の頂とも言える職に就いたにも関わらず、それができないのだ。
「バカですかー?」
ギルクライスは本気で思い悩むカルナシオンを現実に引き戻そうとするが、無理だった。
王宮魔導師として元々魔法研究の第一人者であったカルナシオン。
謎、というものに惹かれる質である。
うさぎさんの持つ愛らしさ。それを研究したいとアホなことを考え出した。
しかし、あいにく専門は魔法学。
そもそも分野以前に、コミュニケーション能力に自信があるとはいえないカルナシオンが、人の『かわいい』『愛らしい』と思う心理を追求することなど不可能に近い。
無謀な挑戦だ。
「まずは観察……か」
『みえっ』
焦ることはない。なにせ、今やうさぎさんは自分の従魔なのだ。
カルナシオンははやる気持ちを抑え、冷静になる。
「ふむ」
改めて、うさぎさんをじっくり観察する。
なんといっても、垂れ下がる長いお耳が特徴的だ。
きゅるんとしたつぶらな黒い瞳。目元の横に付け根があり、お顔の輪郭……人でいう顎にあたるのだろうか? 白とクリーム色のお耳が、その下まで垂れ下がる。
長いので勘違いしそうになるが、厚さでいうと体の中で最も薄い。
血管も薄っすら見える。傷付きやすい部分だろう。
「触れる際には、気をつけねばなるまい」
『どこをでしか!?』
そして、お耳に触れるか触れないか、ギリギリをゆくもの。おひげ。
白くて細長いおひげが、鼻や口の周りからたくさん伸びている。
「そのひげ、感覚はあるのか?」
『おひげでしか? はいでし。なにぶんうさぎさんは、しやかくはひろいものの、しりょくはわるいものでしから』
「意外と難しい言葉を知っているんだな……」
うさぎさんのつぶらな瞳はほぼ360度を見渡すものの、視力自体はいいとはいえない。
物との距離感をつかんだり、口元と真後ろの死角を補うためにおひげがあるのだ。
狭いところを通るにも、視覚より触覚に頼る。そのためうさぎさんの体で一番幅のある長さ、それと同じくらい。あるいはそれよりも長いひげがあるのだ。
余談ではあるが、これまた例によってカルナシオンの従魔召喚により視力は若干向上している。
「なるほど、な──ッ!?」
『?』
「くくく」
うさぎさんの情報を己の脳内メモに記していると、カルナシオンはあることに気が付いた。
「お口が……いや、鼻……?」
『Y』。
お鼻が『V』状になっているのはカルナシオンも理解できる。
自分もそうだからだ。
だが、Vの下に縦に割れた溝があり、そうしてチモるためのかわいいお口がある。
カルナシオンは改めてその構造を不思議に思った。
「そ、それはどうなっているんだ……?」
『どこでしか?』
まだうさぎさんと仲良しと言えるまでには至っていないカルナシオン。
恐る恐る、触れないようにうさぎさんの『Y』の下部分を指差せば、うさぎさんは教えてくれた。
『くちびるでしよ』
「唇なのか!?」
特徴的に縦に割れた上唇。ヘアリップと呼ばれるその形状は、人間には馴染みないものだ。
それもあり、うさぎさんのお口は下方向にはぐおーっと伸びるものの、上方向にはほとんど伸びない。
「なるほど、それが可愛さの秘密なのか……?」
「あ、これ迷宮入りするやつですねぇ」
カルナシオンは知れば知るほど、その愛らしさが何なのか分からなくなっていった。
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