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二十五羽 森人の矜持①
しおりを挟む「うさぎさん、寝てるね」
「ですねぇ」
留守番組の二人。
うさぎさんのご飯を用意し終えたテリネヴは、暇を持て余していた。
一応エルフの里在住なので帰宅してもいいのだが、自分で帰るよりカルナシオンに送還してもらう方が遥かに楽なのである。
ちらっと籠で寝ているうさぎさんを覗き見ると──薄目を開けて寝ている。
少しは環境に慣れてくれたのかもしれない。
「はー、日光浴でもしよっかな」
「いいですねぇ、……おっと」
「あ」
テリネヴが外に出ようとすると同時。
ギルクライスが何かに気付くと、その姿を自身の影の中へと消した。
「呼び出し? ……アルがいるのに?」
テリネヴは不思議に思いつつ外を見ると、何やら納得した。
「あー……そーゆうこと」
ギルクライスが不在の中、自分も外へ出ればうさぎさんは一人。
万が一のことを考えて近くにあった千剣草の束を手にとり、自分の体の一部も合わせて植物で出来たケージを作り出した。
「はーダル」
テリネヴは、ごく稀に訪れる労働の日。それにたまたま当たったことを面倒に思った。
◆
「アハハァ!! ギルクライス卿の主人ってのも、大したことないなぁ! こぉんなチビを従えてるのかい?」
テリネヴが面倒そうに外に出ると、ドーンと腕を組んで待ち構えた一人の少年がいた。
「……ボク、クソガキの相手は得意じゃないんだけど」
不遜な表情をした白銀の髪を持つ少年。
カルナシオンの胸元にも届かないくらいの身長はともかく、テリネヴにとっては無礼な年下はみな『ガキ』である。
「で、だれ?」
「ふっ。聞いて驚くがいい、チビ。僕はあの──シルケンタウラさまだ!!」
「……」
テリネヴは反応に困った。
もみあげの部分だけを長く伸ばし、他の部分は外へと広がりを見せる美しい銀の髪。
それと同じくらい毛ヅヤの良い、長くてふさふさな尻尾。
尻尾を見て、なんとなく種族は見当がつく。
だが、その名だけを聞いてもピンとこなかった。
「…………だれ?」
「ハアァ!!?? この僕を、知らない!? 貴様、それでも魔族かい!?」
「うっさいなぁ」
シルケンタウラは憤った。
なにせ、自信満々に乗り込んできてのこの仕打ちだ。
テリネヴのことをよく知らなくても、自分を傷付けた悪者のように映った。
「『癒烈のシル』を知らないとは。貴様、さては若い森人だね?」
「……あー」
テリネヴはその名を聞くと、何となく思い当たる。
「あの、出征前に角を折られて人間との戦いに参戦できなかった、……あの?」
「ちょっ!? ば、バカ!! 言うんじゃない!!」
「バカはそっちじゃない?」
『癒烈のシル』、元々アイドラに仕えていた幻獣種のユニコーン族である。
幻獣ペガサスと人間によく同一視されるが、翼はない。
雄々しき白馬の姿と、天に向かってそびえるような立派な角。
その名のとおり治癒の力と荒々しい力を併せ持つ者だったが、過去、よりによって出征前にケンカでその角を折って人間との戦いに赴けなかった人物である。
稀有な能力を生かし後方支援として赴くはずだったのに、本末転倒だ。
「ふ、ふんっ! ……もはや、傷は癒えた。僕はアイドラ様に世界樹への道を開いてもらい、角を甦らせ──本来の力を取り戻す!! ……っと。まずはその前に、噂に聞く調子に乗った人間の元を訪れたというわけだ。この僕自ら制裁を課してやろう」
「……」
──そのまま行けばよかったのに
もちろん行ったところで自称三女神たちの返り討ちに遭いそうだが、その慢心が過去に己の身を削ったというのに懲りないヤツだな、とテリネヴはため息をついた。
「カルナさんなら居ないけど」
「なにぃ!?」
「結界入れたのは君が幻獣種だから……アイドラさんが入れたんだろうけど、あとは自力で頑張ってね」
身を翻してスタスタと家へと戻るテリネヴ。
もう用はない、といった様子だ。
「──っ! ま、待て!!」
「なに?」
「主人がいないと言うなら──き、貴様が相手をしろ!!」
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