魔物になろうズ!

鳥ふみと

文字の大きさ
8 / 37

デスナイトの話

しおりを挟む
 俺たち三人(?)は謎の凱旋門の前でキャンプをしていた。

 キャンプと言ってもテントも焚火も無く。

 ただ座って落ち着きながら情報交換というか。現状確認というか……。


 まぁなんだ。

 そんな感じ。


「改めて名乗らせてもらうと。俺はゴブリンの吉田。32歳の派遣社員だ」


 ……この先、吉田さんは出会う人々にこの自己紹介を続けるつもりなのだろうか。


 余計なお世話かと思ったが。あとで俺が別な自己紹介を考えてあげようかと思った。



「俺はヴァンパイアだと思う佐嶋です。16歳です学校では射撃やってます」

「佐嶋氏の自己紹介はワンパターンだな」

「吉田さんに言われたくないっスよ!」

「ウヒヒホ!」



 ゴブリンの吉田さんのゴブリン的奇声に顔をしかめながら森山さんが俺たちに尋ねた。

「……年齢も言わないとダメなの?」

 と、嫌そうな声でデスナイトの森山さんは言う。

 俺も吉田さんも年齢以上に興味のあったデスナイト森山さんの鎧の中だが。

 青黒い霧のようなモヤモヤしたものが鎧の中に満たされていて。ルビーのような色の瞳だけが兜ヘルムの中で鈍く光っている。

 俺たちと会話するときは、中身の霧みたいなのが兜ヘルムに集まるようにして顔を形作り表情を作るような感じだ。

 その時の顔は普通に美人だが、良く言えばクールな印象がある。……20代前半のお姉さんって感じかな。

 いま細かい事をアレコレしていると、うっかり森山さんの怒りを買い攻撃されるかもしれないので。

 俺も吉田さんも、当たり障りのない距離と会話で物事を進めていた。


 おおよそ二メートル半ほどの巨躯を誇る森山さんが、女の子座りでいるのはなんだかシュールだ。

 森山さんの身長と同じくらいの長さの凶悪な大剣は、彼女の前にキチンと置かれている。



「いや。無理しなくていいぜ。興味はあるが無理強いはしない」

 などと大人な発言なのか、大人気ない発言なのか微妙な回答の吉田さん。


「……それにしても。私たちどうなっちゃたのかな……」

「と、いうかこれからどうなっちゃうんスかね?」

「うーん……俺もわからねぇ。こいつはどうしたモンか……」


 俺たち三人の視線は自然と、謎の凱旋門の中の風景に集まる……。

 そう、暗くて気がつかなかったのだが。

 凱旋門の中を覗けば、その先は白夜の砂漠の風景ではなく。

 明らかに石造りの室内



 そう。どこかの室内にこの凱旋門はつながっていた……。



「この門を抜けて、なぞの室内に踏み込むかどうかはともかく。まずは森山氏のこれまでの話を聞こうぜ」

 ゴブリンの吉田さんの提案に同意するように、俺もいままでの経緯をまとめて森山さんに伝えることにした。


「俺と吉田さんはさっき話した通り、二人でなんとなくここまで歩いてきただけで。特になにも危険などはなかったス」


 俺と吉田さんの話を受けて、森山さんは慣れると意外に可愛い声を聞かせてくれた。



「私は、敵を倒しながらこの門にたどり着いたのは良いけれど……。なんだか門の中がさらに別世界みたいな感じでさ。ちょっと様子見ていたら佐嶋君と吉田さんがここに来たわけ」


 ……なん? だと?


「で、いまに続く? な、感じ?」

 さらっと、デスナイトの森山さんは語った……。


「……敵?」


 吉田さんも気がついたらしい。


「敵っスか?」


「うん。トカゲ人間とか、大男とかだった。『おれ、うぇーーー』とか何とか叫んで襲い掛かってきたけど。私、小中高と剣道やってたの。割と楽勝だったから心配しないで」


「……えーとっス」

「いや……。まぁ、ウン。そっか…よかったな無事で。うん」

「私は、8匹くらい倒したよ!」


 ……なんだか。

 聞きたくない情報がいま開示されたような……。

 吉田さんも同じことを考えいるらしい。

 たぶん森山さんが倒した『敵』とやらは。

 ここに飛ばされてきた俺たちと同類だと思う。

 それをこともなげに倒してきたとかを、お話しくださる森山さんが怖い……。

 もう彼女は、俺たちとは明らかに違う地平線に立っているな。

 俺はもう、深く考える事をやめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...