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デスナイトの話
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俺たち三人(?)は謎の凱旋門の前でキャンプをしていた。
キャンプと言ってもテントも焚火も無く。
ただ座って落ち着きながら情報交換というか。現状確認というか……。
まぁなんだ。
そんな感じ。
「改めて名乗らせてもらうと。俺はゴブリンの吉田。32歳の派遣社員だ」
……この先、吉田さんは出会う人々にこの自己紹介を続けるつもりなのだろうか。
余計なお世話かと思ったが。あとで俺が別な自己紹介を考えてあげようかと思った。
「俺はヴァンパイアだと思う佐嶋です。16歳です学校では射撃やってます」
「佐嶋氏の自己紹介はワンパターンだな」
「吉田さんに言われたくないっスよ!」
「ウヒヒホ!」
ゴブリンの吉田さんのゴブリン的奇声に顔をしかめながら森山さんが俺たちに尋ねた。
「……年齢も言わないとダメなの?」
と、嫌そうな声でデスナイトの森山さんは言う。
俺も吉田さんも年齢以上に興味のあったデスナイト森山さんの鎧の中だが。
青黒い霧のようなモヤモヤしたものが鎧の中に満たされていて。ルビーのような色の瞳だけが兜ヘルムの中で鈍く光っている。
俺たちと会話するときは、中身の霧みたいなのが兜ヘルムに集まるようにして顔を形作り表情を作るような感じだ。
その時の顔は普通に美人だが、良く言えばクールな印象がある。……20代前半のお姉さんって感じかな。
いま細かい事をアレコレしていると、うっかり森山さんの怒りを買い攻撃されるかもしれないので。
俺も吉田さんも、当たり障りのない距離と会話で物事を進めていた。
おおよそ二メートル半ほどの巨躯を誇る森山さんが、女の子座りでいるのはなんだかシュールだ。
森山さんの身長と同じくらいの長さの凶悪な大剣は、彼女の前にキチンと置かれている。
「いや。無理しなくていいぜ。興味はあるが無理強いはしない」
などと大人な発言なのか、大人気ない発言なのか微妙な回答の吉田さん。
「……それにしても。私たちどうなっちゃたのかな……」
「と、いうかこれからどうなっちゃうんスかね?」
「うーん……俺もわからねぇ。こいつはどうしたモンか……」
俺たち三人の視線は自然と、謎の凱旋門の中の風景に集まる……。
そう、暗くて気がつかなかったのだが。
凱旋門の中を覗けば、その先は白夜の砂漠の風景ではなく。
明らかに石造りの室内
そう。どこかの室内にこの凱旋門はつながっていた……。
「この門を抜けて、なぞの室内に踏み込むかどうかはともかく。まずは森山氏のこれまでの話を聞こうぜ」
ゴブリンの吉田さんの提案に同意するように、俺もいままでの経緯をまとめて森山さんに伝えることにした。
「俺と吉田さんはさっき話した通り、二人でなんとなくここまで歩いてきただけで。特になにも危険などはなかったス」
俺と吉田さんの話を受けて、森山さんは慣れると意外に可愛い声を聞かせてくれた。
「私は、敵を倒しながらこの門にたどり着いたのは良いけれど……。なんだか門の中がさらに別世界みたいな感じでさ。ちょっと様子見ていたら佐嶋君と吉田さんがここに来たわけ」
……なん? だと?
「で、いまに続く? な、感じ?」
さらっと、デスナイトの森山さんは語った……。
「……敵?」
吉田さんも気がついたらしい。
「敵っスか?」
「うん。トカゲ人間とか、大男とかだった。『おれ、うぇーーー』とか何とか叫んで襲い掛かってきたけど。私、小中高と剣道やってたの。割と楽勝だったから心配しないで」
「……えーとっス」
「いや……。まぁ、ウン。そっか…よかったな無事で。うん」
「私は、8匹くらい倒したよ!」
……なんだか。
聞きたくない情報がいま開示されたような……。
吉田さんも同じことを考えいるらしい。
たぶん森山さんが倒した『敵』とやらは。
ここに飛ばされてきた俺たちと同類だと思う。
それをこともなげに倒してきたとかを、お話しくださる森山さんが怖い……。
もう彼女は、俺たちとは明らかに違う地平線に立っているな。
俺はもう、深く考える事をやめた。
キャンプと言ってもテントも焚火も無く。
ただ座って落ち着きながら情報交換というか。現状確認というか……。
まぁなんだ。
そんな感じ。
「改めて名乗らせてもらうと。俺はゴブリンの吉田。32歳の派遣社員だ」
……この先、吉田さんは出会う人々にこの自己紹介を続けるつもりなのだろうか。
余計なお世話かと思ったが。あとで俺が別な自己紹介を考えてあげようかと思った。
「俺はヴァンパイアだと思う佐嶋です。16歳です学校では射撃やってます」
「佐嶋氏の自己紹介はワンパターンだな」
「吉田さんに言われたくないっスよ!」
「ウヒヒホ!」
ゴブリンの吉田さんのゴブリン的奇声に顔をしかめながら森山さんが俺たちに尋ねた。
「……年齢も言わないとダメなの?」
と、嫌そうな声でデスナイトの森山さんは言う。
俺も吉田さんも年齢以上に興味のあったデスナイト森山さんの鎧の中だが。
青黒い霧のようなモヤモヤしたものが鎧の中に満たされていて。ルビーのような色の瞳だけが兜ヘルムの中で鈍く光っている。
俺たちと会話するときは、中身の霧みたいなのが兜ヘルムに集まるようにして顔を形作り表情を作るような感じだ。
その時の顔は普通に美人だが、良く言えばクールな印象がある。……20代前半のお姉さんって感じかな。
いま細かい事をアレコレしていると、うっかり森山さんの怒りを買い攻撃されるかもしれないので。
俺も吉田さんも、当たり障りのない距離と会話で物事を進めていた。
おおよそ二メートル半ほどの巨躯を誇る森山さんが、女の子座りでいるのはなんだかシュールだ。
森山さんの身長と同じくらいの長さの凶悪な大剣は、彼女の前にキチンと置かれている。
「いや。無理しなくていいぜ。興味はあるが無理強いはしない」
などと大人な発言なのか、大人気ない発言なのか微妙な回答の吉田さん。
「……それにしても。私たちどうなっちゃたのかな……」
「と、いうかこれからどうなっちゃうんスかね?」
「うーん……俺もわからねぇ。こいつはどうしたモンか……」
俺たち三人の視線は自然と、謎の凱旋門の中の風景に集まる……。
そう、暗くて気がつかなかったのだが。
凱旋門の中を覗けば、その先は白夜の砂漠の風景ではなく。
明らかに石造りの室内
そう。どこかの室内にこの凱旋門はつながっていた……。
「この門を抜けて、なぞの室内に踏み込むかどうかはともかく。まずは森山氏のこれまでの話を聞こうぜ」
ゴブリンの吉田さんの提案に同意するように、俺もいままでの経緯をまとめて森山さんに伝えることにした。
「俺と吉田さんはさっき話した通り、二人でなんとなくここまで歩いてきただけで。特になにも危険などはなかったス」
俺と吉田さんの話を受けて、森山さんは慣れると意外に可愛い声を聞かせてくれた。
「私は、敵を倒しながらこの門にたどり着いたのは良いけれど……。なんだか門の中がさらに別世界みたいな感じでさ。ちょっと様子見ていたら佐嶋君と吉田さんがここに来たわけ」
……なん? だと?
「で、いまに続く? な、感じ?」
さらっと、デスナイトの森山さんは語った……。
「……敵?」
吉田さんも気がついたらしい。
「敵っスか?」
「うん。トカゲ人間とか、大男とかだった。『おれ、うぇーーー』とか何とか叫んで襲い掛かってきたけど。私、小中高と剣道やってたの。割と楽勝だったから心配しないで」
「……えーとっス」
「いや……。まぁ、ウン。そっか…よかったな無事で。うん」
「私は、8匹くらい倒したよ!」
……なんだか。
聞きたくない情報がいま開示されたような……。
吉田さんも同じことを考えいるらしい。
たぶん森山さんが倒した『敵』とやらは。
ここに飛ばされてきた俺たちと同類だと思う。
それをこともなげに倒してきたとかを、お話しくださる森山さんが怖い……。
もう彼女は、俺たちとは明らかに違う地平線に立っているな。
俺はもう、深く考える事をやめた。
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