【完結】幼馴染から離れたい。

June

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俺、谷口優希たにぐちゆうきβベータだ。

βの母とβの父から生まれた、平凡なβ

βであることを決して憎んだりはしていないし、だからと言って嬉しいとも思っていない。

バース性に関してはどうでもいいのだ。


βだよなぁ。


結果を知った時、そう思った。

この結果など、知る前から分かりきっていたことだ。


そんな俺にはαの幼馴染がいる。


「───優希」


飽きるほど聴き慣れた優しい声色が、名前を呼ぶ。

顔を上げれば、そこには幼馴染の伊賀崎朔いがさきさくがいた。


「ありがとう。待っててくれたんだ。」


朔は嬉しそうに微笑む。

いつの間に近くに来ていたのだろうか。ぼーっとしていたからか、気づかなかった。

だから、顔を上げた時、整った顔が思ったより近くにあり、少しびっくりした。


「・・・待てって言ったのはお前だろ。」


寄りかかっていた下駄箱から背を離す。

放課後に朔が職員室に呼び出されたから、優希は待つつもりもなく、本当は先に帰るつもりであった。

てっきり遅くなるだろうと思っていたのに、随分と早く帰って来た。


「呼び出しってなんだったんだ?」

「大したことじゃなかったけど。優希、気になるの?もしかして、寂しかった?」


は?何故そうなる。


「・・・うざ。帰る。」

「あ、待って、靴履いてない!」


朔をおいて学校を出た。










**********










「じゃあね優希。また明日。」

「うん」


先に学校を出た優希に追いついた朔と一緒に帰り、朔はいつものように優希の家の前までついてきた。

何を考えているのか知らないが、家の前までいいと言っても聞きやしない。何故か嬉しそうに笑うのだ。

朔に背を向け、カバンから鍵を取り出す。

家のドアを開錠し、開けようとした時。


「・・・優希、香水つけてる?」


後ろから不意に聞かれる。

香水?急になんだ。香水なんてものつけてはいない。柔軟剤とかの匂いじゃないか?


「つけてはないけど。なんで?」


再び後ろを向き、答える。

疑問に思い聞けば、少し溜めてから朔は答えた。


「・・・いや、いい匂いだなって。」


いい匂い?

少し俯いていた朔の顔が上がる。

いつもとは違う、優しい笑みを向けられ、思わず見入ってしまう。

そして再びじゃあねと、朔はこちらに背を向け、家へと帰って行った。

優希は何も言い返せず、その後ろ姿をただ見ていた。
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