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俺、谷口優希はβだ。
βの母とβの父から生まれた、平凡な俺。
βであることを決して憎んだりはしていないし、だからと言って嬉しいとも思っていない。
バース性に関してはどうでもいいのだ。
やっぱβだよなぁ。
結果を知った時、そう思った。
この結果など、知る前から分かりきっていたことだ。
そんな俺にはαの幼馴染がいる。
「───優希」
飽きるほど聴き慣れた優しい声色が、名前を呼ぶ。
顔を上げれば、そこには幼馴染の伊賀崎朔がいた。
「ありがとう。待っててくれたんだ。」
朔は嬉しそうに微笑む。
いつの間に近くに来ていたのだろうか。ぼーっとしていたからか、気づかなかった。
だから、顔を上げた時、整った顔が思ったより近くにあり、少しびっくりした。
「・・・待てって言ったのはお前だろ。」
寄りかかっていた下駄箱から背を離す。
放課後に朔が職員室に呼び出されたから、優希は待つつもりもなく、本当は先に帰るつもりであった。
てっきり遅くなるだろうと思っていたのに、随分と早く帰って来た。
「呼び出しってなんだったんだ?」
「大したことじゃなかったけど。優希、気になるの?もしかして、寂しかった?」
は?何故そうなる。
「・・・うざ。帰る。」
「あ、待って、靴履いてない!」
朔をおいて学校を出た。
**********
「じゃあね優希。また明日。」
「うん」
先に学校を出た優希に追いついた朔と一緒に帰り、朔はいつものように優希の家の前までついてきた。
何を考えているのか知らないが、家の前までいいと言っても聞きやしない。何故か嬉しそうに笑うのだ。
朔に背を向け、カバンから鍵を取り出す。
家のドアを開錠し、開けようとした時。
「・・・優希、香水つけてる?」
後ろから不意に聞かれる。
香水?急になんだ。香水なんてものつけてはいない。柔軟剤とかの匂いじゃないか?
「つけてはないけど。なんで?」
再び後ろを向き、答える。
疑問に思い聞けば、少し溜めてから朔は答えた。
「・・・いや、いい匂いだなって。」
いい匂い?
少し俯いていた朔の顔が上がる。
いつもとは違う、優しい笑みを向けられ、思わず見入ってしまう。
そして再びじゃあねと、朔はこちらに背を向け、家へと帰って行った。
優希は何も言い返せず、その後ろ姿をただ見ていた。
βの母とβの父から生まれた、平凡な俺。
βであることを決して憎んだりはしていないし、だからと言って嬉しいとも思っていない。
バース性に関してはどうでもいいのだ。
やっぱβだよなぁ。
結果を知った時、そう思った。
この結果など、知る前から分かりきっていたことだ。
そんな俺にはαの幼馴染がいる。
「───優希」
飽きるほど聴き慣れた優しい声色が、名前を呼ぶ。
顔を上げれば、そこには幼馴染の伊賀崎朔がいた。
「ありがとう。待っててくれたんだ。」
朔は嬉しそうに微笑む。
いつの間に近くに来ていたのだろうか。ぼーっとしていたからか、気づかなかった。
だから、顔を上げた時、整った顔が思ったより近くにあり、少しびっくりした。
「・・・待てって言ったのはお前だろ。」
寄りかかっていた下駄箱から背を離す。
放課後に朔が職員室に呼び出されたから、優希は待つつもりもなく、本当は先に帰るつもりであった。
てっきり遅くなるだろうと思っていたのに、随分と早く帰って来た。
「呼び出しってなんだったんだ?」
「大したことじゃなかったけど。優希、気になるの?もしかして、寂しかった?」
は?何故そうなる。
「・・・うざ。帰る。」
「あ、待って、靴履いてない!」
朔をおいて学校を出た。
**********
「じゃあね優希。また明日。」
「うん」
先に学校を出た優希に追いついた朔と一緒に帰り、朔はいつものように優希の家の前までついてきた。
何を考えているのか知らないが、家の前までいいと言っても聞きやしない。何故か嬉しそうに笑うのだ。
朔に背を向け、カバンから鍵を取り出す。
家のドアを開錠し、開けようとした時。
「・・・優希、香水つけてる?」
後ろから不意に聞かれる。
香水?急になんだ。香水なんてものつけてはいない。柔軟剤とかの匂いじゃないか?
「つけてはないけど。なんで?」
再び後ろを向き、答える。
疑問に思い聞けば、少し溜めてから朔は答えた。
「・・・いや、いい匂いだなって。」
いい匂い?
少し俯いていた朔の顔が上がる。
いつもとは違う、優しい笑みを向けられ、思わず見入ってしまう。
そして再びじゃあねと、朔はこちらに背を向け、家へと帰って行った。
優希は何も言い返せず、その後ろ姿をただ見ていた。
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