7月は男子校の探偵少女

金時るるの

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7月と赤い果実

7月と赤い果実 6

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 ガラスの割れる音と共に、あたりに破片が飛び散り、赤いゼリー状の塊が床に、壁にと付着する。
 一瞬何が起きたのか理解できずに、わたしは二、三度瞬きした後、我に返って声を上げる。 


「な、なにするんですか!?」

「あれ、ごめんねえ。手が滑ったみたい」


 も、勿体無い! せめて上澄みだけでも……!
 思わず膝をついて手を伸ばす。が、それより早くイザークの靴が、今まさにわたしがすくい上げようとしていたジャムの塊を踏み潰した。
 彼の靴の下でガラスの砕ける音がする。
 呆気にとられていると、イザークは靴底を確認するように足を持ち上げる。


「あ、靴が汚れちゃった。綺麗にしないといけないよね」


 わざとらしくそう言ったかと思うと、屈んだまま動けないでいたわたしの肩口を踏みつけるように靴底を押し付け、汚れをなすり付ける。


「な……」


 あまりの事に言葉を失う。
 信じられない。まるで道端の雑草に対するかのように、この人は何の躊躇いもなくわたしを踏みつけている。
 そう思ったとき、肩に一層の重みを感じた。


「やめてください!」


 我に返って、弾かれるようにイザークの足を払いのけると、頭上から嘲笑を含んだ声が降ってくる。


「あれ、君だったの? てっきりドアマットかと思ったよ。あんまり薄汚かったものだから」


 それを聞いて、わたしの中で何かが爆発したような気がした。
 咄嗟にガラスの破片を避けて、床にこびりついたジャムをすくい上げると、イザークの上着の肩のあたりに擦り付ける。
その途端イザークは悲鳴を上げた。


「な、なんてことしてくれるんだよ!」

「ああ、これは失礼しました。てっきり雑巾かと思ったもので」

「ふざけないで!」

「ふざけているのはそっちでしょう!? わたしにした事、謝ってください!」

「うるさい! その生意気な口を閉じろ!」


 叫びながらイザークが襟元に掴みかかってきた。
 けれど、思ったほどその力は強くない。
 これなら負けないかもしれない。
 そんな考えが浮かび、わたしがイザークのほうへと手を伸ばしたその時


「ふたりとも、やめろ」


 鋭く低い声が割って入った。
 はっとしてそちらを見やると、いつの間にか、アルベルトがすぐ近くにいた。
 彼はわたしからイザークの手を引き剥がすと、二人の間を遮るように立つ。
 どうしてここにアルベルトが? 
 そんな疑問が浮かんだ直後


「お前はこっちだ」


 不意に腕を掴まれて、そのまま引っ張られる。慌てて顔をそちらに向けると、腕を掴んでいたのはクルトだった。
 気がつけば、遠巻きに生徒達がこちらの様子を伺っている。騒ぎを聞きつけて、いつのまにか人が集まっていたらしい。
 クルトに引っ張られるまま、人の輪の中から抜け出す。
 背後から


「待ちなよ! 逃げる気!?」


 と叫ぶイザークと、それを宥めるアルベルトの声が聞こえた。
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