7月は男子校の探偵少女

金時るるの

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7月と円舞曲

7月と円舞曲 13

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 ゆっくりとテラスへのドアを開けると、冷たい風がまとわり付いて思わず身震いする。上着はクルトに返してきたのだ。
 アレクシスさんは気付いていないようで、こちらに背を向け俯いたままだ。
 足音を立てないよう近づくと、手すり側から彼の前に回りこむ。


「アレクシスさん」


 突然目の前に現れたわたしに驚いたのか、彼は一瞬硬直して目を瞠る。


「あ、ああ、ユーリさん、いつのまに……まったく気付きませんでしたよ。なんだか猫みたいだな。いや失礼、悪い意味ではなくて」


 彼は面食らった様子だったが、それを取り繕うように髪を手で撫で付ける。


「驚かせてしまってすみません。広間からあなたの姿が見えたものだから気になって……あの、リコリスさんについていなくても良いんですか?」


 遠慮がちに問うと、アレクシスさんは目を伏せた。


「そうするべきだとは思うんですが、どうにも落ち着かなくて……」

「それじゃあ、ずっとここにいたんですか? こんなに寒い場所に……もしかして、さっき落としたものをまだ探していたとか? 相当大切なもののようでしたし」

「いえ、あれはもうみつかりました。ちゃんとここにありますよ。拾ったと同時に、あの事故が起きて……」


 アレクシスさんは上着の胸のあたりを抑える。そこに内ポケットがあるのだろう。


「情けない話ですが、その、まだ動揺しているみたいで……ここで頭を冷やしていたんです」

「無理もありません。あんな事が目の前で起こったなんて、わたしもいまだに信じられません」

「でも、あなたは妹を助けようとして果敢に行動してくれました。私なんて肝心なところで足がすくんでしまって……」


 暫くの沈黙の後、アレクシスさんが躊躇うように口を開いた。


「ユーリさん、正直なところ、私は恐れているのかもしれません。あの光景が頭から離れないんです。もし、このまま最悪の事態になったら――リコリスの笑顔を二度と見ることが叶わなくなったら――そんな現実が待っているんじゃないかなんて考えてしまって、彼女の元に向かうのを躊躇わせるんです」


 その戸惑いと悲しみの入り混じったような声音を聞いて、わたしは反射的に口を開く。


「そんな……あんなことがあったんだから怖いのは当然ですよ。でも、その、わたしが口を出して良いことかはわかりませんが、リコリスさんだって、アレクシスさんに傍にいてほしいはずです。家族なんだし……それに、リコリスさん、アレクシスさんのことを慕っていたようですから」


 そう訴えると、アレクシスさんは驚いた様子でこちらを見た。


「こんな情けない私の事を気遣ってくれるんですか? あなた自身だって怖い思いをしたでしょうに……優しい人だな。そして強い人だ」


 不意に手を掴まれ、引き寄せられたかと思った次の瞬間、アレクシスさんに抱きすくめられていた。
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