うせもの探しの魔女

金時るるの

文字の大きさ
12 / 27

逃げ込んだ先は

しおりを挟む
 その日の夜、そろそろ休もうかと寝支度を済ませたわたしはベッドに腰掛ける。枕の隣には、エルザが既に横たわっている。そういう約束を交わしたわけではないが、夜の間も椅子に座り続ける彼女の姿がなんとなく寂しそうに見えたので、一緒のベッドで眠ることにしているのだ。幸いにも今の所エルザは人間の姿になって文句を言ったりというようなことはない。
 もしかすると本当に寂しいのはわたしのほうなのかもしれないけれど。

「ロロ」

 黒い仔猫の名を呼ぶと、いつもだったらわたしの眠る気配を察して、一目散にベッドに走り寄ってくる――はずなのだが……
 何故か今日のロロはわたしに背中を向けるような姿勢で、なにやら部屋の隅をじっとみつめている。かと思ったら、突然何かにじゃれ付くような動きを見せ、部屋の隅を行ったり来たりしている。
 なんだろう。何かあるのかな?
 不思議に思い近づくと、目に飛び込んできたのは、黒光りする長い体と無数の脚を持つ節足動物。どこから入り込んだのか、大きなムカデが部屋の隅を動き回っている。

「ひっ!?」

 わたしは思わず引きつったような悲鳴を漏らすと、慌ててロロを抱き上げてその場から距離を取る。

「ロロ、そんなのに近づいちゃだめ!」

 わたしはこういう脚のたくさんある虫が大の苦手だ。
 こんな悪魔のような見た目の恐ろしい生き物がこの世に存在しているという事実さえ受け入れ難い。

 は、はやく部屋から追い出さなければ……何か武器になりそうなものは……。
 部屋を見回し役立ちそうなものを探すわたしだったが、ロロの猛攻から解放されたムカデは素早くその大量の足をうねうねと動かし、部屋を横切ったかと思うと、あろうことかわたしのベッドの脚に取り付き、そのまま上へと這い上がり――


 ◇◇◇◇◇


「ア、アルベリヒさん、助けてください……!」

 わたしはアルベリヒさんの寝室のドアを叩く。
 暫くするとドアが開き、アルベリヒさんが顔を覗かせる。
 その瞬間を見逃さず、わたしはドアの隙間から無理やり部屋の中へと押し入る。

「お、おい、一体なんなんだ。こんな時間にどうしたっていうんだ」
「聞いてください! ムカデが、ムカデが、わたしのベッドの中に……!」

 わたしは思わずその場にへたり込む。
 あの後、ムカデはベッドの中に侵入したまま行方不明になってしまった。だからといってそのままそこで眠れるほどの神経を持ち合わせていないわたしは、ロロとエルザを抱えてこうして二階にあるアルベリヒさんの元へと逃げてきたのだ。

「そういう訳なのでお願いします。今夜一晩この部屋で寝かせてください。寝る場所は床で構わないので。この通り、予備のきれいな毛布も持ってきたし……あ、でも、ロロとエルザはベッドで寝かせてあげてください」
「はあ? 空いてる部屋なら他にもある。そっちを使えば良いじゃないか。なんで俺の部屋なんだ」
「だ、だって、他の部屋にもムカデがいるかもしれないし。ほら、よく言うでしょう? 『1匹見たら30匹はいると思え』って。その点、ここなら万が一ムカデが出てもアルベリヒさんがなんとかしてくれると思って。お願いします。明日シーツと毛布をお洗濯してムカデを追い出すので、今日はここに置いてください……!」

 わたしが必死に頼み込むも、アルベリヒさんは呆れたように溜息をつく。初めて見たけどアルベリヒさんて寝巻きも黒い。

「駄目だ。他の部屋で寝ろ」
「ええー、そんなこと言わずに……まさか! わたしに見られたらまずいものでもあるんですか!? ベッドの下とかに!」
「そんなわけないだろ。おかしな想像はやめろ」
「それならいいじゃないですか!」

 食い下がるも、アルベリヒさんは不機嫌そうに首を横に振るばかりだ。
 うう、冷たい。
 わたしはがくりと肩を落とす。

「……わかりました。こうなったらフユトさんに頼んでみます」
「なっ」
「フユトさん、まだ起きてるかな……?」
「ちょっと待て!」

 立ち上がり部屋を出ようとしたわたしの腕をアルベリヒさんが掴む。

「フユトはだめだ! あいつこそムカデなんて目じゃない。まるで毒蜘蛛のように罠を張って、狙った獲物もそうでないものも片っ端から絡め取るような恐ろしくて狡猾な奴なんだ!」
「まさか。アルベリヒさん、弟さんのことそんな風に言うのは良くないですよ。いったい何の恨みがあるんですか?」
「恨みじゃない。これは忠告だ。とにかくあいつのところに行くのは駄目だ!」
「そんなこと言ったって、それじゃあ、わたし、どうしたら良いんですか? 屋根裏部屋でムカデの脅威に怯えながら一人で夜を明かすなんて絶対嫌です。ここで寝かせて貰えないなら、やっぱりフユトさんのところに行きます」
「……ああ、もう」 

 アルベリヒさんは不機嫌そうに頭を掻きむしっていたが、やがて大きな溜息をつく。

「……わかった。ここで寝ても良い。ただし一晩だけだからな」
「わあ、やったあ! ありがとうございます! 良かったね、ロロ、エルザ」

 寝床難民にならずに済んで喜ぶわたしの耳に

「お前は気楽で良いな」

 というアルベリヒさんの呟きが聞こえた。
 どういう意味だろう。少なくともムカデが原因とはいえ眠れないというのはわたしにとっては死活問題なのだが。気楽というのは聞き捨てならない。
 かといって、文句を言って追い出されても困るので、不満は我慢して飲み込む。
 早速ベッドの隣の床に毛布を敷いて、即席の寝床を用意しようとすると、アルベリヒさんがやってきて、床から毛布を取り上げた。

「あっ、せっかく敷いたのに……ちょっと、アルベリヒさん、一体どういうつもりですか!」
「どうもこうもない。俺が床で寝るからお前はベッドを使え」
「え?」 
「仮にも女を床で寝かせて俺だけベッドってわけにはいかないからな」
「そんな、無理を言ったのはわたしなんですから、わたしが床で寝ます。アルベリヒさんはいつも通りベッドで寝てください」

 そう言っても、アルベリヒさんはさっさと床に寝転がると毛布にくるまってしまう。
 もしかして、それでわたしを部屋に受け入れるのを嫌がっていたのかな。わたしがいたら床で寝なければならないから。

 慌てて毛布を引っ張るも、アルベリヒさんは既に床に横たわったまま動きそうにない。暫くどうしようかと考えた末、申し訳なく思いながらも、わたしはロロとエルザを抱いて彼ベッドへと這い上がる。
 大きなベッド。わたしが普段使っているものの倍以上はある。天蓋までついていて、なんだかお姫様にでもなった気分だ。わたしとエルザが並んで寝ていても、まだたっぷりと余裕がある。

「アルベリヒさん。わたし、ベッドの端っこのほうで寝るので、よかったら反対側を使いませんか? このベッド広いし、アルベリヒさんも一緒に寝ることができそう……」
「……馬鹿なこと言ってないてさっさと寝ろ」

 ……やっぱり寝床を追い出されて機嫌が悪いのかな。確かによく考えればわたしも図々しい。夜遅く押しかけた上に結果的にベッドまで強奪してしまったんだから。
 せめてなにかお礼ができれば良いんだけど。

「あの、アルベリヒさん、明日の朝ごはん、何が良いですか? 」
「急になんだ?」
「ええと、今日のお礼のつもりというか……なので、食べたいものがあれば言ってください」

 しばらく待つもののその返事はない。
 あれ? 寝ちゃったのかな……?
 仕方ない。わたしも寝よう。そう思ってサイドテーブルのランプに手を伸ばしたその時

「……パンケーキ。レモンジュース多めに入ったやつ」

 それを聞いてわたしは思わず安堵の笑みを漏らす。

「わかりました。明日の朝市で新鮮なレモンをたくさん買ってきますね」
「それは良いが、いい加減寝ないと朝市までに起きられなくなるぞ」
「そうですね。そろそろ寝ます。アルベリヒさん、おやすみなさい」
「……おやすみ」

 その声を聞きながら、わたしはランプの灯りを消した。

 ◇◇◇◇◇


 その夜、微かな物音に、わたしはうっすらと目を開けた。
 半分覚醒したような曖昧な意識のままで耳を澄ますと、それは部屋の外から聞こえてくるようだった。
 誰かが廊下を歩いている。最初はそう思った。けれど、何故か足音が遠ざかる気配は無い。まるでこの部屋の前だけを行ったり来たりしているようなのだ。
 それに気付いた瞬間、足音はふっと小さくなり、その後は耳を澄ましても聞こえなくなった。まるでわたしが足音に気付いたことに足音の主が気付いたように。

 今の音、なんだろう。夢だったのかな……?
 相変わらずぼんやりとしたままのわたしはそんな事を考えながら、再び訪れた睡魔に抗えずに目を閉じた。


 ◇◇◇◇◇


「そういえば、昨日夜中に廊下から足音が聞こえたような気がしたんですが……」

 翌朝、レモンジュースたっぷりパンケーキの朝食を済ませた後で、紅茶を飲みながら夜中の出来事を話すと、アルベリヒさんとフユトさんが顔を見合わせた。

「コーデリアちゃん。それって『嘆きの迷い子』だよ」
「嘆きの迷い子?」

 首を傾げるわたしにフユトさんが続ける。

「そう。二階の一番奥の部屋があるでしょ? あそこに住み着いてる子どもの幽霊のこと」
「ゆ、幽霊……?」
「僕らも詳しくは知らないんだけどね、昔からあの部屋にいるって言われてて」

 フユトさんの話はこうだった。
 ずっと昔、この家に住んでいた男の子が、ちょっとした悪戯のつもりで二階の奥の部屋に隠れた。ところが、生まれつき身体の弱かった男の子は、隠れている最中に持病の発作を起こしてしまい、気の毒なことに誰からも見つけてもらえないままに亡くなってしまう。残された家族は嘆き悲しみ、亡骸を懇ろに弔うが、男の子の魂は浮かばれず、幽霊になった後も自分のことを誰かに見つけてもらうためにこの屋敷を彷徨っているという。

「それで、時々部屋の外へ出ては、自分の存在をアピールしてるってわけ。それにしても懐かしいな。嘆きの迷い子の話なんて久々に思い出したよ。昨日出たなんて気付かなかったな。もうとっくにいなくなったものかと思ってたし」

 そこでわたしはふと思い出した。以前にその二階の奥の部屋に入ろうとしてアルベリヒさんに止められたこと。
 あれってもしかして、その嘆きの迷い子と関係あるんだろうか?

「フユトさんとアルベリヒさんはその幽霊、見たことあるんですか?」

 フユトさんは首を振る。

「残念ながら無いんだよね。義父ちちからは肝心の部屋に入ることは禁止されててさ。僕もいまだに入ったこと無いんだ。一度子どもの頃に、廊下に出てきたところを見てやろうと思って夜中待ち構えたことがあったんだけど、足音が聞こえたと同時に廊下を見ても誰もいなくて……恥ずかしがり屋なのかな。兄さんは見たことある?」
「いや、俺もないな」

 二人ともその嘆きの迷い子についてはそれ以上知らないみたいだ。
 自分を見つけて欲しくて彷徨う幽霊の男の子かあ。怖いような悲しいような……。
 それにしても、その話が本当だとしたら、ここには不思議なものがいるんだなあ。それもここが魔法使いの家だからなんだろうか。
 あれこれ考えていると、フユトさんが何かに気付いたように顔をこちらに向けた。

「あれ? でも、コーデリアちゃんの部屋って屋根裏だよね? あそこから二階の足音が聞こえたの?」
「ああ、それは――」

 昨日の出来事を説明しようとしたその時、目の端に映るアルベリヒさんが、手を滑らせたように紅茶のカップを取り落とした。
 はっとした時にはすでに遅く、
 がしゃん!
 と音がして、倒れたカップから紅茶がテーブルや床に飛び散り零れる。

「わっ! だ、大丈夫ですかアルベリヒさん!? 火傷してませんか!?」

 わたしは慌ててナプキンを手にアルベリヒさんに駆け寄るが、それより早くアルベリヒさんが立ち上がる。

「いや、大丈夫だ……すまないが、片付けておいてくれないか。俺はその、着替えてくるから」

 そう言うと、そそくさと部屋から出て行った。
 わたしは零れた紅茶を慌てて拭き取る。床にもいくらか零れてしまったようだ。染みにならないといいんだけど。

「コーデリアちゃん、慌てなくてもいいよ。食器は僕が片付けておくから」

 そう言ってフユトさんがテーブルの上を片付け始めた。

「す、すみません。お台所に運んでおいて貰えれば、後でわたしが洗いますから」
「わかった。それにしても兄さんもそそっかしいな。もう年なのかな。なんてね」

 フユトさんの冗談に、わたしは絨毯を拭きながら思わず笑みを漏らした。
 そうして和やかな朝食の時間は、突然のアクシデントにより終わりを告げた。


 ◇◇◇◇◇


 その後すぐに、この家を訪れた時と同じように、唐突にフユトさんは去っていった。
 朝食の後で突然

「そろそろ出てくよ。兄さんの様子も確認できたしね」

 なんて言いだしたのだ。
 それを聞いたアルベリヒさんは

「なんだ。前回より短い滞在だったな」  

 だとか言って平然としていた。この兄弟にとってはよくある事なのかな。
 見送りのとき、こっそりという様子でフユトさんがわたしに手招きした。

「兄さんの事だけど……あの人はなんていうか、ちょっと拗らせてるところがあって……これからも面倒かけるかもしれないけど、見放さないであげてもらえるかな? 頼むよ」

 これからもお世話して欲しいって事かな? アルベリヒさんが捻くれてるって事はわたしだってそれなりに知っている。でも、それをお世話するのは使用人として当然の仕事だ。
 そう伝えると、何故だかフユトさんは苦笑に似た笑みを浮べた。

「まあいいや。コーデリアちゃん、元気でね。兄さんも。また来るから、その時はよろしく」

 歩き出したフユトさんは、顔だけをこちらに向けてひらひらと手を振る。
 その時、風が吹いた。
 フユトさんがこの家に来たときと同じようにわたしのエプロンをはためかせ、風は通り過ぎていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています

鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」 そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。 お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。 「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」 あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。 「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。   戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」 ――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。 彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。 「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」 「……本当に、離婚したいのか?」 最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。 やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。

【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい
恋愛
異国からやってきた第3王女のアリシアは、帝国の冷徹な皇帝カイゼルの元に王妃として迎えられた。しかし、冷酷な皇帝と呼ばれるカイゼルは周囲に心を許さず、心を閉ざしていた。しかし、アリシアのひたむきさと笑顔が、次第にカイゼルの心を溶かしていき――。

処理中です...