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第1章 ダンジョン開拓編
15、住居を作ったら町っぽくなった
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「そうだな。次は住む人のために、住居区画で家を作るぞ!」
悠人がそう言った翌日、早い時間から住居周りが混み合っていた。宿泊棟の廊下で荷物を整理する人や部屋の前で立ち話をする人、カフェの順番待ちの列がそのまま通路に伸びてしまう人。
誰も悪気はないが、人が増えると通れるだけの通路では足りなくなる。人が増えることによって、これまで良かったと感じていたものに改造が必要となってくるというわけだ。
ミアが通路の端で立ち止まり、辺りをぐるっと見渡しながら言った。
「これはもう宿じゃないよね。何て言うか、住んでるみたい」
悠人は頷き、穏やかに返す。
「まいったな。住む人が増えて、もはや家といった方が良さそうだな。だから、ちゃんと住める形に変えよう」
悠人は【住居】を開き、【区画設計】を選んだ。個室を増やすだけでは同じ問題が繰り返される。必要なのは、暮らしの動線と窮屈さを感じさせないための余白だ。通路、広場、共用スペース。人が立ち止まれる場所がないから、通路が詰まる。通路が詰まると落ち着きがなくなる。
「家だからゆっくり落ち着いて暮らせる形にしたい」
悠人が言うと、ミアは当然のように頷いた。
「うん。座れるところも欲しいよね。あと、家が増えるなら、全部一緒だと、何というか殺風景?いろんなもので遊んでみない?」
その言葉に、カウンターの裏で器を拭いていたレオが顔を上げた。
「そうなんですよ……旅人ってけっこう雰囲気で選ぶんですよ。どこに泊まるかとか、どんなとこに住むのかって、意外と大事で……」
悠人は少し考え、苦笑する。
「そうか……じゃあ、分けるか!見た目でいろいろ遊んでみよう!」
区画を切り、道を作り、小さな広場を中央に置く。広場にはベンチと灯り。そこから三つの小道が伸びるようにして、住居の雰囲気を分けた。悠人が指先で選択すると、ダンジョンの空間が静かに組み替わり始める。区画と言っても、いつも通りスキルがあるから簡単だ。
最初に現れたのは、西洋風の区画だった。石造りの壁に尖った屋根、窓枠は少し厚めで、外側に小さな花壇のような飾りまでついていて、妙にそれらしい。
「おお……すごく家っぽい」
レオが感心して呟く。
ミアは首を傾げて、でも楽しそうに言った。
「これ、よく絵本に出てくるやつだね。昔お母さんにもらった絵本に出てきたやつみたい!」
次に和風の区画ができる。木造で、障子があり、縁側がついている。床は足に優しい板張りで、室内は同じ設備なのに雰囲気が柔らかい。ミアは縁側に座り、尻尾を端に避けてから言った。
「ここ、のんびり昼寝できそう……」
悠人は笑って返す。
「昼寝専用じゃないけどな。でも落ち着くなら、それが正解かもな」
最後に中華風の区画。赤い柱と瓦屋根と入口の形が少しだけ堂々としている。そして、どれよりも存在感を放っていて飾りは派手だが、住むための機能は同じ。
「なんか、賑やかだ!ここは遊ぶのが楽しそう!」
ミアの感想は素直だ。だが、素直だからこそ、少しずれるときもある。
悠人が少し呆れた顔をして答えた。
「ちょっと遊ぶのは違うな。ゆっくり休む場所だ」
「そっかぁ」
ミアが言うと、レオが頷いた。
「でも、こういうの好きな人いますよ。特に商人とか」
見た目は違うが、中の設備は揃えてある。寝具、収納、灯り、水場へのアクセス。どこを選んでも不公平はない。ただ雰囲気だけで選べるだけだ。
区画が完成すると、さっそく定住者たちが集まってきた。
「え、選べるのか!?」
「俺はこっちだ!」
「俺、こっちが落ち着く」
「おおぉ、この縁側いいな」
元冒険者の一人は西洋風の石造りを見て、迷わずそこに向かった。
「こういうの、戦利品の整理が似合う」
誰も突っ込まなかったが、本人が満足そうならそれでいい。
静かに過ごしたい旅人は、和風の区画を見てほっとした顔をした。
「ここなら夜も落ち着けそうだ」
「ここは、静かにしたい人向けだな」
悠人が穏やかに言うと、旅人は小さく笑って荷物を運び始めた。
中華風の区画には、賑やか好きの商人風の男が興味津々で近づいた。
「ここ客に見せるのにもいいな。話のネタになる」
「おいおい、住む場所だぞ」
悠人が釘を刺すと、男は笑って頷いた。
「分かってる分かってる。けど、こういうのは記憶に残る」
住居を選ぶだけで、人の表情が変わる。自分で決めた場所に住む、それだけでここに居ていいという感覚が強くなるのだと悠人は思った。
広場には自然と人が集まった。ベンチに座ってジュースを飲む者、温泉の順番を待つ者、牧場を眺めて話す者。通路に溜まっていた人の流れが徐々に広場へ散る。混み合いが少しだけ解消され、窮屈さが少し緩和された。
ミアが広場の中央でくるりと回り、辺りを見渡して言った。
「もう、ダンジョンというより街みたいだね」
悠人は少しだけ考え、柔らかく答えた。
「もう、そう呼んでもいいかもな」
人が増えると、観光客も増える。王都から夜に立ち寄る者が出てきた。泊まらなくても、噂を確かめに来る。露天風呂がある、室内温泉がある、ジュースがうまい、家が変だ――そんな話が混ざって広がっている。
「ここ、ほんとにダンジョンか!?」
「家があるのホント意味が分からないな」
「でも、面白い!」
観光客の数は、明らかに増えた。昼に来て飲んで帰る人もいれば、ダンジョンの夜景を見たくて遅くに来る人もいる。住む人が増えると、場所が明るくなり、さらに人を呼ぶ。
夜になって、住居区画の灯りが点る。通路の明暗がはっきりし、暗い場所が減った。だが、それでもふと思う。せっかく人が増えたのに、夜の楽しみが露天風呂だけになっている。もちろんそれは強いが、もう一つ、目玉が欲しい。
宿泊者の一人が、広場から外を見て呟いた。
「へぇー、ここから王都って意外と見えるんだな」
悠人も同じ方向を見た。確かに、王都の灯りが遠くに浮かぶ。夜になるほど輪郭がはっきりして、点の集合が街に見える。
ミアが空を見上げて言う。
「下は明るいけど、上がちょっと暗いね」
悠人は天井を見上げた。ダンジョンの天井は広い。暗いからこそ、光が映える場所だ。もし、天井に星を描けたら、もし、王都が見える場所にテラスを作れたら。観光客はもっと増えるだろう。泊まらなくても見たい、そういう景色が作れる。
悠人は【施設】を開き、展望と照明の項目を探した。そこに、いくつも候補が並ぶ。テラス、照明、光の演出に天井投影、星図に見ているだけで、夜が変わりそうだった。
ミアが横から覗き込み、尻尾をゆっくり揺らす。
「夜が綺麗だったらもっと人来るんじゃない?観光地にしたらどうかな」
悠人は頷き、穏やかに言った。
「うーん。王都が見える夜景テラス、か……作れそうだな」
王都が見える方向を確認し、天井の構造を頭の中で組み立てる。住む場所が整った今、次は見に来る理由を整える番だ。
定住者:18人
観光客:35人
悠人がそう言った翌日、早い時間から住居周りが混み合っていた。宿泊棟の廊下で荷物を整理する人や部屋の前で立ち話をする人、カフェの順番待ちの列がそのまま通路に伸びてしまう人。
誰も悪気はないが、人が増えると通れるだけの通路では足りなくなる。人が増えることによって、これまで良かったと感じていたものに改造が必要となってくるというわけだ。
ミアが通路の端で立ち止まり、辺りをぐるっと見渡しながら言った。
「これはもう宿じゃないよね。何て言うか、住んでるみたい」
悠人は頷き、穏やかに返す。
「まいったな。住む人が増えて、もはや家といった方が良さそうだな。だから、ちゃんと住める形に変えよう」
悠人は【住居】を開き、【区画設計】を選んだ。個室を増やすだけでは同じ問題が繰り返される。必要なのは、暮らしの動線と窮屈さを感じさせないための余白だ。通路、広場、共用スペース。人が立ち止まれる場所がないから、通路が詰まる。通路が詰まると落ち着きがなくなる。
「家だからゆっくり落ち着いて暮らせる形にしたい」
悠人が言うと、ミアは当然のように頷いた。
「うん。座れるところも欲しいよね。あと、家が増えるなら、全部一緒だと、何というか殺風景?いろんなもので遊んでみない?」
その言葉に、カウンターの裏で器を拭いていたレオが顔を上げた。
「そうなんですよ……旅人ってけっこう雰囲気で選ぶんですよ。どこに泊まるかとか、どんなとこに住むのかって、意外と大事で……」
悠人は少し考え、苦笑する。
「そうか……じゃあ、分けるか!見た目でいろいろ遊んでみよう!」
区画を切り、道を作り、小さな広場を中央に置く。広場にはベンチと灯り。そこから三つの小道が伸びるようにして、住居の雰囲気を分けた。悠人が指先で選択すると、ダンジョンの空間が静かに組み替わり始める。区画と言っても、いつも通りスキルがあるから簡単だ。
最初に現れたのは、西洋風の区画だった。石造りの壁に尖った屋根、窓枠は少し厚めで、外側に小さな花壇のような飾りまでついていて、妙にそれらしい。
「おお……すごく家っぽい」
レオが感心して呟く。
ミアは首を傾げて、でも楽しそうに言った。
「これ、よく絵本に出てくるやつだね。昔お母さんにもらった絵本に出てきたやつみたい!」
次に和風の区画ができる。木造で、障子があり、縁側がついている。床は足に優しい板張りで、室内は同じ設備なのに雰囲気が柔らかい。ミアは縁側に座り、尻尾を端に避けてから言った。
「ここ、のんびり昼寝できそう……」
悠人は笑って返す。
「昼寝専用じゃないけどな。でも落ち着くなら、それが正解かもな」
最後に中華風の区画。赤い柱と瓦屋根と入口の形が少しだけ堂々としている。そして、どれよりも存在感を放っていて飾りは派手だが、住むための機能は同じ。
「なんか、賑やかだ!ここは遊ぶのが楽しそう!」
ミアの感想は素直だ。だが、素直だからこそ、少しずれるときもある。
悠人が少し呆れた顔をして答えた。
「ちょっと遊ぶのは違うな。ゆっくり休む場所だ」
「そっかぁ」
ミアが言うと、レオが頷いた。
「でも、こういうの好きな人いますよ。特に商人とか」
見た目は違うが、中の設備は揃えてある。寝具、収納、灯り、水場へのアクセス。どこを選んでも不公平はない。ただ雰囲気だけで選べるだけだ。
区画が完成すると、さっそく定住者たちが集まってきた。
「え、選べるのか!?」
「俺はこっちだ!」
「俺、こっちが落ち着く」
「おおぉ、この縁側いいな」
元冒険者の一人は西洋風の石造りを見て、迷わずそこに向かった。
「こういうの、戦利品の整理が似合う」
誰も突っ込まなかったが、本人が満足そうならそれでいい。
静かに過ごしたい旅人は、和風の区画を見てほっとした顔をした。
「ここなら夜も落ち着けそうだ」
「ここは、静かにしたい人向けだな」
悠人が穏やかに言うと、旅人は小さく笑って荷物を運び始めた。
中華風の区画には、賑やか好きの商人風の男が興味津々で近づいた。
「ここ客に見せるのにもいいな。話のネタになる」
「おいおい、住む場所だぞ」
悠人が釘を刺すと、男は笑って頷いた。
「分かってる分かってる。けど、こういうのは記憶に残る」
住居を選ぶだけで、人の表情が変わる。自分で決めた場所に住む、それだけでここに居ていいという感覚が強くなるのだと悠人は思った。
広場には自然と人が集まった。ベンチに座ってジュースを飲む者、温泉の順番を待つ者、牧場を眺めて話す者。通路に溜まっていた人の流れが徐々に広場へ散る。混み合いが少しだけ解消され、窮屈さが少し緩和された。
ミアが広場の中央でくるりと回り、辺りを見渡して言った。
「もう、ダンジョンというより街みたいだね」
悠人は少しだけ考え、柔らかく答えた。
「もう、そう呼んでもいいかもな」
人が増えると、観光客も増える。王都から夜に立ち寄る者が出てきた。泊まらなくても、噂を確かめに来る。露天風呂がある、室内温泉がある、ジュースがうまい、家が変だ――そんな話が混ざって広がっている。
「ここ、ほんとにダンジョンか!?」
「家があるのホント意味が分からないな」
「でも、面白い!」
観光客の数は、明らかに増えた。昼に来て飲んで帰る人もいれば、ダンジョンの夜景を見たくて遅くに来る人もいる。住む人が増えると、場所が明るくなり、さらに人を呼ぶ。
夜になって、住居区画の灯りが点る。通路の明暗がはっきりし、暗い場所が減った。だが、それでもふと思う。せっかく人が増えたのに、夜の楽しみが露天風呂だけになっている。もちろんそれは強いが、もう一つ、目玉が欲しい。
宿泊者の一人が、広場から外を見て呟いた。
「へぇー、ここから王都って意外と見えるんだな」
悠人も同じ方向を見た。確かに、王都の灯りが遠くに浮かぶ。夜になるほど輪郭がはっきりして、点の集合が街に見える。
ミアが空を見上げて言う。
「下は明るいけど、上がちょっと暗いね」
悠人は天井を見上げた。ダンジョンの天井は広い。暗いからこそ、光が映える場所だ。もし、天井に星を描けたら、もし、王都が見える場所にテラスを作れたら。観光客はもっと増えるだろう。泊まらなくても見たい、そういう景色が作れる。
悠人は【施設】を開き、展望と照明の項目を探した。そこに、いくつも候補が並ぶ。テラス、照明、光の演出に天井投影、星図に見ているだけで、夜が変わりそうだった。
ミアが横から覗き込み、尻尾をゆっくり揺らす。
「夜が綺麗だったらもっと人来るんじゃない?観光地にしたらどうかな」
悠人は頷き、穏やかに言った。
「うーん。王都が見える夜景テラス、か……作れそうだな」
王都が見える方向を確認し、天井の構造を頭の中で組み立てる。住む場所が整った今、次は見に来る理由を整える番だ。
定住者:18人
観光客:35人
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