引きこもりの魔女の話

ともっぴー

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**エルシー

基本的に私は、薬を売らない。
だけど、面倒くさいことにそうもいかないこともある。だから最低限の条件を出したのだ、陛下に。つまり、まぁ、住む場所とか色々とお世話になったし、この国の国民だから、仕方なく妥協したという訳だ。

条件1、金持ちであること。高額な薬だから当然金持ちじゃないと買えないから。それに、もし貧乏人がかき集めてお金を準備したとして、受け取る気になれないから。同情して安価であげる気なんて、更々ない。

条件2、冷血だが、犯罪者でないこと。これは、世の中金が全てだと思っている人の方が面倒くさく無いからだ。かといって、犯罪者は恐い。法をきちんと守る人でなければ。

条件3、国王陛下のお墨付き。というか紹介状付き。連絡も無しにほいほい来られても困るし、私が条件の判断をするのも面倒くさいから、陛下に丸投げした結果だ。勝手に来た者を
断る口実にもなるし。まぁ、そうならないために尾ひれ背びれの付いた噂を放置しているのだけど。


今、この、目の前ひれ伏している男は、どの条件もクリアしていなさそうだ。たぶん金持ちじゃないし、紹介状も持っていない。そしてこの状況から、冷血な人間ではないことが窺われた。寧ろ逆の、私が最も危険とする相手のように思う。
そう、危険人物だ。
危険人物が、私に手を貸せと言っている。

「嫌よ。そんなの。どうして私がそんなこと」

「助けてやりたいんだ。いや、助けなければいけない。」

「私には関係ないわ。」

「頼む、金は払う。いくらでも・・とはいかないが、持っているだけ、全て払う。」

「それでも嫌よ。早く出て行ってちょうだい。」

いったいどんなお金よ。絶対受け取りたくはない。その後も男は何か言っていたけれど、私は急いで部屋を出た。これ以上ここにいてはいけない。


**ダニエル

魔女殿は、薬の為に犠牲になる者のことを、とても案じていた。そりゃあ、そうだろう。仕事とは言え、ものすごく辛い事だ。今までもずっと苦しかったに違いない。だから嫌がっているのだ。・・・それが分かっていて、それでも頼まないといけないのは、心が痛んだ。

逃げるように去っていく魔女殿を目で追いながら、頼むのはもう少し時間かけてからにしようと決めた。悠長にはしていられないのだが、説得するにはもっと別の何かが必要だろう。

そういえばここは厨房だが、魔女殿の昼食はどうなっただろうか?今頃お腹を空かせているのではないだろうか。俺のせいで申し訳ない。
・・・あ、そうだ。
勝手に使うのはどうかと思ったが、ちょうどいい機会だと思い腕を振るうことにした。


***アレク

「陛下、魔女より手紙届いております。」

「手紙か、珍しいな。読んでみろ。」

「いえそれが、私では開けられないようになっておりまして。」

はてと首を傾げた。更に珍しい。余程知られたくない内容なのか。

「どれ、貸してみろ。」

手紙を受け取り、封を切って中身を引っ張り出した。それから目を通して・・・息を飲んだ。

「大変だ!魔女がっ、魔女が、悩んでおるぞっ!」

「陛下、落ち着いて下さいっ。」

「落ち着いてなどいられるか!魔女が悩んでおる。はっはー!やはりあれも人間だったのだ!おいっ、ダニエルという者を調べろ、国中を調べるんだ。」

魔女が悩んでいる。それだけで喜びだ。心を閉ざしきったあの魔女が、悩んでいるのだ。
手紙には、ダニエルという男の事が書かれてあった。簡単言うと、面倒なので城から摘まみ出して欲しい。との内容だったのだが、摘まみ出す必要などないだろう。魔女は本気になれば出来ないことはない。わざわざ他人の手を借りようとするのは、男の境遇や人格に少なからず心を動かした結果だろう、もしくは動かされそうになっているか。

「はははーっっ、すごいぞダニエル!調べ次第すぐに、城に紹介状を送りつけよう。」

「陛下っ!」

踊り出しそうな気分なのに、急に腕を掴まれた。興ざめだ。

「なんだ、水を差すな。」

「お疲れ様の様ですから、少しお休みになられては。」

「・・・余計なことを。」

「申し訳ありません。」

「ふん、休む。だが、本当に余計な事だ。」

俺はそんなに酷い顔をしていただろうか?
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