Black Angel

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
11 / 23

3

しおりを挟む

ユウとダイチは個室付きの居酒屋に来た。

ひとしきり食べ物とビールを頼んだ。

乾杯はしなかった。

ユウはビールのジョッキ片手にずっと気になっていたことを聞いた。

「うちの店が始めてじゃない、て本当?」

「ああ。こっちのが給料いいなあ、てネット見てたらさ」

ダイチは突き出しを箸で摘んでいる。

「前の店、て...いつから?」

ユウは自分と別れたからこのバイトを選んだんだろう、と思っていた。

「3年くらい前かな」

ユウは耳を疑った。

「そ、それって、俺たち、出会ったのは...」

「実を言うとユウより先に売りやってた。バンド、て金かかるしさ、ゲイだしいいか、てそんな感じ」

「...俺が働いてること知ってあんなに怒ったのに」

「だよな。矛盾してるよな」 

ダイチはそう言うとタバコを咥え、ジッポで火を付けた。

ダイチの誕生日にプレゼントした同じシルバーのジッポだ。
クロスのデザインがダイチが気に入っていたのを知り、プレゼントし、自分用にも購入した。ユウも未だに愛用している。

「うちの店を選んだのは...給料面だけで?」

「ああ。お前いたから面食らったよ。他店は一部しか知らないし」

「そうか...だから俺が売りしてんの知ったのか」

「店まではわからなかったけどな、たまたま仕事で移動してたらお前をあの街で見かけて。なんか勘、ていうかな、まずそれで気がついた」

そう言うと、ダイチは長い指先に挟まれたタバコの煙を目で追った。

「お互い様だったのにな。お前だけ悪者にした。今更だけど、ごめん」

「全然、違うじゃん」

「なにが?」

テーブルを挟んだ2人の冷静な目が見つめ合う。

「ダイチはバンドのために、でも俺は...」

「お前の言う通りだよ、いつまでチャラい夢見てんだよ、て。でもさ、諦めきれない」

うん、とユウは頷き、ジョッキに口付ける。

「聞いたよ。Black Angel 。今、いい感じらしいじゃん」

「...まあな。なあ、ユウ」

「なに」

「戻ってこないか?Black Angel」

「やだよ、軌道に乗ってるとこを邪魔したくないじゃん」

「関係ないよ」

「あるよ」

強い口調でユウが言う。

「戻らないよ、もう、バンドはしない」

「...そうか」

居酒屋を出た2人だったがまだ深夜だ。

「どうしようか...給料」

「明日、貰いいけばいんじゃね?」

ダイチの一言。

「そうだね、そうしよっか」

「帰るのか?もう」

「....」

「どっか飲み行かない?」

かつて大好きだった、運命の人、とまで思っていた相手に首を横に振れないユウがいた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

団地夫は今日も昼下がりに配達員を欲情させます

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:41

【完結】世界で一番愛しい人

BL / 完結 24h.ポイント:312pt お気に入り:581

何でもアナニーのオカズにするDK君のモテ期

BL / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:72

年上のお兄さんにマッサージされてメスイキするショタ

BL / 完結 24h.ポイント:156pt お気に入り:221

運命の番(同性)と婚約者がバチバチにやりあっています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,358pt お気に入り:30

とある魔法学校教師の受難

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:22

役目を終えて現代に戻ってきた聖女の同窓会

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,261pt お気に入り:79

muro - 使われたい男、使う男 -

BL / 連載中 24h.ポイント:852pt お気に入り:211

処理中です...