君だけのナイト☆

ミヒロ

文字の大きさ
6 / 21

6

しおりを挟む

翌日。

不躾な野次馬共に俺は取り囲まれている。

「で、どうだったよ、噂のさせ子ちゃん」

「させ子の天使、て言われてんだろ?やっぱり
良かった?」

どいつもこいつも...。

「やってねーよ」

嘘をついた。

周りからマジかよ、なんだよ、聞いて損した、とまあ身勝手な声。

流石に二回しました、なんて言えるわけがない。

しかも、ハルが予想以上に可愛く、男だということも忘れ、行為に燃えてしまったのだから。

ちりじりにクラスメイトが離れていく中、俺の頭にはハルの姿が蘇っていた。

(....また会いたいなあ)

は、と我に返り、またやりたい、の間違いじゃないか、と疑問を変えるが....

「....どっちもだ」

でも、ハルは噂のさせ子の天使の肩書きがある。

きっと、俺だけでなく、可愛くエロく悶えて喘ぎ、たまに慎ましく、品行方正な一面を男たちに見せているのだろう。

のぼせるだけ無駄だ。

そう思うのに、昼休み、俺の足はハルのクラス、2-Bに向かっていた。

「倉田ハルは居るか?」

入口付近の生徒に声を掛けると、俺のタッパを見上げ、慄いた様子で教室内にいるハルに声を掛けていた。

「ハル、お前、3年になんかしたのかよ」

「...3年?」

失礼だが、心配してくれるクラスメイトがいるんだな、と思った。

クラスメイトと談笑していたハルは、入口付近に立つ俺に気づくとパタパタと駆け寄ってきた。

「さ、佐伯先輩、ど、どうしたんですか?」

サラサラな栗色の髪、小さな卵形の色白な可愛い顔、見上げてくる大きな瞳は睫毛が長い。

小動物を目の前にしたかのような、思わず抱きしめたくなる衝動に駆られそうになるのを必死に抑えた。

「い、いや、元気かな、て思ってさ」

思わず作り笑い。

「げ、元気です。せ、先輩は...?」

「俺も元気」

そこまでなんとか会話が続いたが、見つめ合ったまま、沈黙が続き、気まづい空気が漂った。

「あ、その、様子、伺いに来ただけだから、ほら、お前、痩せてるし、ちゃんと食ってるか心配だから」

しばらく丸い目をして俺を見上げていたが、これまた可愛らしい笑顔になった。

「大丈夫です。これでもちゃんと食べてますから。太りにくい体質で」

「そうか、羨ましいな」

ようやく笑顔が見えたというのに、引き離すかのように無情にもチャイムが鳴り響く。

「えっと、じゃ、またな」

「は、はい」

そうしてほんの束の間だが、ハルの姿を見、それだけで俺はご機嫌だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

僕と教授の秘密の遊び (終)

325号室の住人
BL
10年前、魔法学園の卒業式でやらかした元第二王子は、父親の魔法で二度と女遊びができない身体にされてしまった。 学生達が校内にいる時間帯には加齢魔法で老人姿の教授に、終業時間から翌朝の始業時間までは本来の容姿で居られるけれど陰茎は短く子種は出せない。 そんな教授の元に通うのは、教授がそんな魔法を掛けられる原因となった《過去のやらかし》である… 婚約破棄→王位継承権剥奪→新しい婚約発表と破局→王立学園(共学)に勤めて生徒の保護者である未亡人と致したのがバレて子種の出せない体にされる→美人局に引っかかって破産→加齢魔法で生徒を相手にしている時間帯のみ老人になり、貴族向けの魔法学院(全寮制男子校)に教授として勤める←今ここ を、全て見てきたと豪語する男爵子息。 卒業後も彼は自分が仕える伯爵家子息に付き添っては教授の元を訪れていた。 そんな彼と教授とのとある午後の話。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...