もう一度、誰かを愛せたら

3

俺の膝に頭を預け、夜空を見上げたまま、俊也が切り出した。

「話しは変わるけどさ。すっげー、ひっつき虫だな。あいつ。疲れない？樹」

「....どうだろ」

「あいつはお前を恋愛対象に思ってるなら、そりゃそうか。好きな奴といつも一緒にいたいし、話したい。はっきり断るのは危険そうだしな...付き合うつもりはないだろ？あいつと」

「そりゃ、そうだよ...」

俺、俊也が好きだから。
確信に変わったから。

「なんかさ、不思議だよな。お前と涼太」

「不思議、て？」

不意に俊也が俺の目を見た。

「本当にお前にとって、あいつは友達？」

「....友達だよ」

「あいつが一方的にペラペラ喋って、お前はあいつに合わせて。俺とは会話のキャチボール出来てる。けど、あいつとは違う。気づかない？樹、自分で」

「....そうかな....ノリ、ていうのかな、違うから、そう見えるのかも....」

「それもあるけど、素を出せてない。あいつだけ。お前は合わせてるだけ。....俺が言うのもなんだけど、それって友達、て言える？」

答えられなかった。
俊也と見つめ合ったまま、過ぎていく時間。

「安心して。別に樹を責めてない。確認したかっただけ」

「うん....」

「....俺の恥ずかしい...あの駄作の....読んだ？」

「え....うん」

顔が熱い。
暗いから気づかれないといいな...。

「ヤバ、なんか、すげー、照れくさい」

俊也は起き上がり、俺の隣に座った。

「....詳しい話し、まだ、話す勇気がないけど....」

「うん」

「必ず、いつか話すから....樹にはさ、知ってて欲しい気もするし」 

「うん」

月明かりでわかる。
俺だけじゃないんだ。

俊也も耳が赤いことに気がついた。

自然と自分から地面にある俊也の手の甲に手のひらを重ねた。

驚いた顔で俊也が俺を向く。

「俊也、顔、赤い」

「うるせー」

照れてる俊也もなんだか、愛おしい。