死にたい君は今日も笑顔で僕に話しかける＿＿

少女との出会い

つまらない＿＿＿＿

  毎日寝て起きて、学校に行き授業を受け、友達？みたいな奴と話して、帰って、1人で飯食って、風呂はいって寝る。明日も、明後日も、その次の日も。つまらない＿＿＿＿

  6月27日＿＿＿梅雨も明けてあと１ヶ月で夏休み。今日は雲ひとつない快晴。なのに教室の空気は、最悪だ。授業中にもかかわらず、あの俳優がどうのこうの、あの女優がどうのこうの……と話している女子や、ゲームや好きなタイプの話をしている男子の話し声や吐息、汗の湿気でジメジメしてどうも真面目に授業を受ける気になれず、「お腹が痛いのでトイレに行きます。」そう嘘をついて、屋上に向かった。屋上は僕にとって、ひとつだけの居場所だ。ここには誰も来ないし、うるさくないし、自分の好きなことが出来る。つまらない一日の中でもこの時間だけは毎日あってもいいと思った。とっくに教室の湿気なんか忘れて、ルンルンで屋上のドアを開けた、、、、

  「え？」思いもしない光景で思わず声が出てしまった。屋上の手摺の外側に女の子が立っていたのだ。髪が長くて、裸足で、手には包帯が巻いてある。ドアの閉まって15秒ぐらいした時に、その女の子は振替って、僕を見た。凄く美人で、クールな顔つき。そして、頬には絆創膏を付けていた。状況が飲み込めなくて、固まっていた僕に彼女は口を開いた。「え～！今日こそは逝けると思ったのに～！」見た目の割に明るく高い声で彼女が言った瞬間僕は察した。

  どうやらこれから自殺する現場に来てしまったらしい。「んも～！人が来ると飛べないんだよ～あ～あ」そう言って彼女は、手摺をまたいでこっちに歩いてきた。「え、あ、えっと」言葉に詰まってる僕にはお構い無しに彼女は口を開いた「私、天野 千愛よろしく！君は？」笑顔で自己紹介し、手を出した。僕は、ちなと握手をして「よ、よろしく、、僕 泉 優、、、、｣と弱々しい声で自己紹介をした。「泉 優、、、じゃあ優で！よろしくね！優！」僕が話す余裕もなく、ちなは「じゃあ、私は明日逝く為に早寝早起きしたいから！！じゃあね！また明日！」そう言って屋上から出ようとした瞬間、僕の口が勝手に開いた。

  「ね、ねぇ、、い、行くって、どこへ？」
ちなは、一瞬困った顔をしたけど、すぐに笑顔で答えた。「どこって、天国？」僕はそれを聞いて、血の気が引いた。「な、なんで、、、？そ、そんなまだ、、、」言葉が詰まって上手く言えない僕を見てちなは、また笑顔で「まだって、私はもう人生一生分楽しんだし、もうこれで終わりにしたいの！」さっきより、動揺したような声でちなは言った。僕には、理解が出来ずとっさに、「な、なんでそんな事するの！？せ、せっかく両親が産んでくれたのに！｣と僕が言った瞬間、

  ちなの目からは輝きが消え、「君は恵まれてるね」そう言った。さっきまでの明るくて高い声じゃなくて、暗くて皮肉な声だった。僕はまだ分からなくて「め、恵まれてる？」そう聞き返した。そしたらちなは「そうでしょ。その考え、、両親が産んでくれたのに。は？何その考え、、？ただの綺麗事じゃん」とまた皮肉っぽく言った。「な、なんで？そ、そんな嫌な事あったなら、、、、」次の言葉を言いかけた瞬間、、、、「うるさい！！！」ちなが叫んだ。ずっと下を向いて話していた僕はふと上をむくと、ちなの目には涙が浮かんでいた。「君は悩み事も何もなしに今日までのほほんと生きてきたんだね、、、、｣さっきまで叫んでいたとは思えないくらい落ち着いた、これまた暗くて皮肉な声で言った。だけどその声には少し悲しさも感じたような気がした。「え？」その一言で僕は黙ってしまった。「私が死のうと君には関係ないでしょ。どっか行ってよ」ちなが言った。僕は動くことが出来ずに「ねぇ、、、、な、、、なんかあったんだよね、、、、？は、、話、、聞くよ？」と弱々しく説得力のない声で言った。それを聞いたちなは、不思議そうな顔で聞いた「は、、？なんで、、そんなに止めるの？」ちなは泣いていた。僕は少し考えて、また弱々しく「わ、分からない。でも、、ス、救いたいんだ。君を」それを聞いたちなは、涙を流しながら、にっこり笑って「そっか、、偽善じゃんそんなの」と言った。僕はそれから何も言えなくて、ただ立っていた。何も喋らなくなった僕を見つめて呆れたのだろうか。ちなが「あ～ハイハイ分かったよ。じゃあさ！優が私を救ってみてよ」と涙を拭いながら、途中から一番最初の明るくて高い声で言った。僕はこの時もぽかんとして何も言えなかった。僕が口を開くのに待ちくたびれたちなは「じゃあ！私は本当に明日逝ける気がするからもう行くね」と言ってまた歩き始めた。「ねぇ！」「また明日会えるかな、、」気づいたら口が勝手に開いていた。それを聞いたちなは、また振り返って言った「もちろん。私はいつでもここにいるよ。」そう言ってちなは屋上から出ていった。その瞬間瞬間授業終わりのチャイムがなった。

  「こ、これからどうなるんだ？」僕はわけのわからないまま、教室に戻った。