転生でゆるく生活したい

ぱゆり

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魔族のはなし

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ここはとある魔族の住む国。
魔族とは、大昔から存在しており、人間によって区別するためにそう呼ばれるようになった亜人を含めた者達の総称である。そのため基本は魔人族や獣人、エルフなどもそう呼ばれていた。しかし最初は人間の武力は大したことはなく、人間たちが侵略してきても軽く追い返していた。
ところが、勇者と呼ばれる規格外の登場により瞬く間に侵攻が進んだ。そこで当時の魔王が勇者と戦いながら話をして魔族は人間にとっての未開の地まで引いてこの土地に新たな国を建てたと言う歴史がある。

ここには魔王と呼ばれて人間たちに恐れられている者が住んでおり、その下に配下の魔族がいて、またその下に十二貴族と言う配下の中でも魔王的に強いと思うものが12人選ばれ、首都であるディーアと呼ばれる都市を囲むように12個の街を作り、一人一つの街を治めるようにした。
南には人間たちが暮らす場所が巨大な山の先にあり、いつ攻めて来るかわからないので備えておく必要があるし、かと言って人間だけでなく、周りにもほかの魔族が国を作っているのでそちらも警戒しなくてはならない。
いや~大変じゃーね~。あぁ、いかんいかん。
そして、この国の首都ディーアの中央にある城。
そこではせっせと様々な種族の魔族たちが働いていおり、魔王も働いていた。


城の中

玉座の間より四分ほど歩くと着く一室
魔王はこの広い部屋で仕事している。
そして出入り口から少し細身な魔族の男が入ってきて魔王に紙束を渡した。
「失礼します魔王様、こちらが報告書、そして最後の3枚が提案書です。」
「うむ。・・・よし、もう行って良いぞ。」
魔王が書類を読んだあとそう言った。
「それでは失礼いたします。」
そう言って魔族の男は出ていった。
側近である女魔族が魔王に聞いた。
「よろしいのですか?」
「よい、奴らが人間たちにちょっかい掛けようとしていることは分かっている。だが国外まで気を回す余裕がなぁ。」
「魔王様はもう少しちゃんとして下さい。ただでさえ女魔族で子供っぽい見た目で甘く見られるのですから。」
「そうは言ってもどうにもならんぞ?私を超えたいならまずは事務仕事をやってくれないと。」
「それはあなたが代わって欲しいだけでしょう?」
「おんしも緩んどるじゃないか。」
「・・・ふふ、そうね。」
「そうそう、久々に我が子らを見に行ったら行方知れずになっておって慌てて探してな。しかし、おかげで懐かしい奴にも会えたし、面白い奴にも出会えたぞ?」
「ああ、あなたが我儘言って産んだ子たちね?あの人とあなたの子だけあって強いのかしら?」
「いや、弱い。伸び代はあるが、今は基礎を積み上げている途中じゃな、それに戦士等に育てるつもりもない。」
「そうなの?貴族家の子たちみたいに強くするのかと思ったのに。」
「自分の子供を幸せしてあげたいとは思ってる。その手段の一つが単純に強く育てるってだけじゃ。でもあの子たちには、色んなことを感じて欲しい。自分で考え、他人の意見を聞き、生活を見て、経験しながら自由にあの子たちの意思で自分の夢を、幸せを持って欲しいと思っとるよ。」
「・・・そうね。」
二人は次の来訪者が来るまでの時間、束の間の談笑を楽しんだ。


南の砦

人間の国と魔族の国の間を遮るようにたつ山の前で魔族が砦を築いていた。
その砦を守る兵士は新人が多くその砦は新人訓練に利用されていた。
砦の見張り台で3人の魔族が喋っていた。
「ここは平和なもんだな。」
「ああ。なんせこのキランダ山を人間たちは越えようとしないらしいからな。」
「そうか?だが、こうも何もないと狩りや訓練しかやる事がないな。」
「えー?遊んじゃ駄目すか?」
「馬鹿か!!仕事中だぞ!?遊んでても警戒する事が出来ているのは見た事はあるが、それで万が一がないとは限らんだろう!」
「はーい。分かりましたよ。じゃあ少し水飲んで来ます。」
「ああ、体調管理はしっかりな!倒れるなよ!」
「親かよおまえは。」
「何を言ってる。違うに決まってるだろ?」
「・・・そうかよ。」
そこで会話が途切れて二人は揃ってため息をついた。
「?・・・何だ?この音。」
片方の魔族が地鳴りのような音を聞いた。
すると、砦の周囲を見回りしていたはずの見知った男が慌てて走って来ていた。
「大変だ!!!魔物の大群がこの砦に向かってる!!!」
「なっ!?」
「どっからだ!!?」
「黒の森からだ!急いで避難しろ!!あと1時間もすれば奴らがここに来る!」
黒の森は、魔物の生息地帯で森の中が真っ暗になっており、そこの魔物たちは種類こそ豊富だが全ての種が何らかの方法で光が無い森を克服している。
その危険度は様々で、ゴブリンからドラゴンまで多くの種族がいるとても広大な森である。
中にいる魔物は、全体で一千万は下らないだろうと言われていて、時たま数匹魔物が出て来る時もある。
そして、それが実戦訓練として利用されていた。
しかし、どんなに魔物を狩っても絶滅せず、森を焼き尽くされても数日後には元に戻るので、研究されているがまだ原因は分かっていない。
たまに大規模な魔物の大群が出て来る時もあるが、どんなに大きな群れでも数千の小型の魔物が限度であったし、貴族の長やその子孫にあたる者達が必ず一人はいるようにしてあり、そんな大群でも怯まず戦い、ほぼ全てを一人で倒した猛者がいたり、それが無理でも時間を稼ぎ、後から来た援軍と協力して犠牲を出さないよう立ち回り活躍して兵からの信頼が厚い指揮官になった者も少なくない。
しかし、どんなことにも例外はあるようだ。
「おい、今いる貴族って確か。」
「ああ、大鬼貴族の半端野郎だ。まずいぞ、援軍要請してると思うか?」
全員が少し考え、一人は頭を抱えながら言った。
「報告を信じないか、他の貴族の力を借りたくないとか場違いな事考えてそうだ。」
「「あ~ありそう。」」
「なんか変なプライドがありそうでしたしねー?」
うわぁ~と急ぎながら話す3人に水を飲みに行ったはずの新人がいつの間にかついて来て会話に入った。
「・・お前いたのか・・・。」
「いやっ、ついさっきっすよ?先輩達の会話少し聞こえたんで貴族様に報告しましたし。」
「まじか、・・それで返答は?」
「自分一人で十分だから行かなくて良いと言われました。」
「馬鹿か!?数千の魔物を一人でとかそれこそ一族の長か魔王様じゃないと出来んだろう!この間の五体程度とは訳が違うんだぞ!」
先輩魔族の一人が苛立ちのこもった声を上げる。
「一応、同期のケンタさんに援軍呼びに行って貰いましたよ?」
「「「よし、よくやった!」」」
先輩魔族3人は器用に走りながらガッツポーズした。
「というか、・・・ケンタって誰だ?そんな名前の奴いたっけ?」
ふと思い出したように先輩魔族が尋ねた。
「ケンタウロスのケンタさんっすよ?本人はフォーデルトだって言いますけど。」
「・・・あいつか。」
「名前分かるなら呼んでやれよ。」
「中々強いって言われてる新人の期待の星じゃないか。」
先輩魔族3人がえ~、と言う中新人は、
「フォーデルトって長いじゃないっすか。だからケンタさんっす。」
と、呑気なことを言っていた。


それからしばらく時が経ち、迎撃の準備が進んでそろそろ終わる頃。
「黒の森方面より何か来ます。」
土煙を立てながら近づいて来る何か。
「魔物か!?」
「・・・いえ、味方です!偵察隊の方達です!」
この報告に兵達から「おお!」や「生きてたのか?!」と言う声が次々に上がった。
急いで門を開く為に兵達は走った。
逃げてきた者たちの後ろに魔物の群れが来ていたので魔法も準備する。
重々しく音を立てて門が開く。
そこに少し間を空けて並んだ魔族の兵士達が一斉に魔法を撃つ合図を待つ。
「味方には当てるなよ?!撃てぇーーー!!!」
指揮を執る隊長格の一人が大きく声を張り上げた。
それを合図に次々とうたれていく魔法によって魔物が死んでいく。
しかし兵達は緩めることなく撃っていく。
煙が上がって見えなくなる。そうして途中で号令がかかり、中断して次を撃つ態勢に入る。
次々と偵察隊の者たちが入って行き、そして最後の一人が入ると同時に門を閉めた。
しかし、魔物が押し寄せて来ており、閉まった門をこじ開けようとしていた。
魔物の数を少しでも減らそうと門の上から兵士達が魔法を撃ち込んでいるが切りがなかった。
「くそっ!!このままじゃ門が壊される。」
ドドドドドドドンッ
ピキッ
門を攻撃している音がしてしばらく凄まじい勢いの魔物の群れが門をあと少しの所まで追い詰め、亀裂を入れた少し後のこと。
さっきまでしていた門への打撃音が止んだ。
足音がしない。鳴っていた筈の恐怖の足音が不自然なまでに止んでいた。
門には亀裂が入りもう一撃、魔物が強力な攻撃をすれば一気に破壊され、ここになだれ込む筈の魔物が来ない。
門は亀裂がある状態で確かに目の前にある。
ザザザザザザザザザザザ・・・・・・。
外から魔物が移動する足音がしている。
何故攻撃してこないのか?
固まっている指示を出していた隊長に門の上から魔法を魔物に打ち込んでいた兵士からの報告が飛び込んだ。
「隊長!魔物たちが全員一度硬直した後、山の方へ駆け出しています!!」
みんなが一様に信じられないような呆けた顔をしていた。
しかしだんだんとそれは、助かったのか?やったのか?と言う声から、やった、やったぞ、良かったと言う泣き声もほんの少し混じった大歓声となった。
男達は抱き合ったり、肩を組んでお互いの無事を喜び合った。

そして、その後砦に一日半ほどで来た援軍は着いたときには砦の修繕をしている兵士達に驚いた。
責任者からの報告と現場の手伝いをしている部下の聞き込みによる情報とで原因がなにか考えた。
しかしそもそも群れの中には、様々な魔物がいたため本来なら群れを作らない種族もいたのだ。
そのため、何も思い当たることがないので魔物の死体を調べることにした。
「これは、腐っている?おい、何かお前たちの方で変わった点はあったか?」
疑問を後回しにして援軍の隊長である男の魔族は副隊長の基本的に獣人種などと呼ばれる虎柄魔族に聞きました。
「はい。こちらは腐り方のおかしな死体がいくつもありました。」
「・・・そうか。そういえば、残りの魔物は山に行ったと言っていたな?」
「はい、・・・百年前のように人間たちと戦争にならなければ良いのですが。」
「終戦を迎えたのも、前魔王様と勇者殿の死がきっかけだったらしいからな。それに昔の戦争を生き延びた者達は、戦いが染み付いた者は魔物退治に行き、後方支援をしていた者達も皆が協力して12の街を築いたそうだ。」
昔話を話し始めたのはスルーして、副隊長は今後の心配をしてため息をついた。
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