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その4
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順調に侍女としての勉強を進めるマリエッテは、水面下で公爵家の中でカップルを見守りたい同志を増やしてきた。
温かく見守る女性使用人や行儀見習いたちの空気が伝わったのか、公爵家の仕える男性たちもどこか微笑ましくエフェリーンとチェールトを見ているようである。
また、婚約者たちのふわふわした幸せな空気にあてられたのか、結婚相手を探す人たちが増えた。行儀見習いで来ている貴族子女たちも、これまでなら「まだ適齢期だから」とおざなりにしていた社交に力を入れるようになったのだ。
どうやら、エフェリーンたちのあり方は間接的に周りの人たちの結婚願望を増幅させることになったようだ。
ちなみに、マリエッテのように推しカップルを見守るために自分の結婚の優先順位を最低限にまで下げてしまった人は他にはいなかった。
王城でのお茶会のときは、マリエッテがすることはほとんどない。
応接室やティールームで3人が語り合っている間は護衛も十分なので、その間はマリエッテの休憩にあてられることになった。
休憩といっても、王族のプライベート空間で働く使用人にあてがわれている休憩室でお茶をしたり、王城内にある図書館へ本を借りに行ったりする程度だが、気晴らしにはなる。
マリエッテ個人としては、いつでも2人を見守れる方が良いので休憩はいらないと伝えたのだが、エフェリーンが首を横に振った。
「マリエッテは、ただでさえ侍女として必要な知識を学んでいるところなのに、護衛としてもずっと働いているのよ?誰にだって休憩は必要なの。そう言ったのは貴女よ、マリエッテ」
以前、チェールトのためにと少しの休憩も取らずに予定を詰め込むエフェリーンに、休憩する方が効率が上がると説明したことがある。
見事に自分に返ってきたので、マリエッテは肯定する以外の答えを返すことはできなかった。
数回目の登城のとき、休憩時間に図書館へ行くことにした。
海運業に関わる勉強をする中で、これまで知らなかった海の向こうの国の言葉や文化を知りたいと思ったのだ。もちろん公爵家にも辞書や例文集などはあるのだが、もう少し強化したい。
そのためには、外国語に触れる機会を増やすしかない。
ありがたいことに、王城の図書館には別大陸の国の言語で書かれた本も複数並べられていた。
司書に聞いたところ、閉架図書にもいくつかあるという。こういう機会でもないと王城の図書館には来られないので、ありがたく利用させてもらうことにしていた。
経済棟の方を通って図書館へ向かう途中で、以前見かけたこげ茶色の髪の男性がいた。歩く姿を見ても、やはりただ者ではないようだ。なんなら、そのへんの騎士よりも使えるかもしれない。
背は高いがひょろっとした印象ではなく、しなやかな筋肉をつけていることがわかる。かといって威圧感があるほどではないので、スピード重視の剣術を身に付けているのかもしれない。
ふと眼鏡越しに緑の目と視線を交わしたときに、その考えはほぼ確信となった。
また目礼で通り過ぎようとしたのだが、男性がマリエッテの一歩前で立ち止まった。
何かあっただろうか、とマリエッテも男性に合わせて立ち止まった。
「えっと、マリエッテ嬢、ですよね?ディレン伯爵家の」
男性は、マリエッテを見下ろしながら軽く首をかしげた。
名前を知られていることに驚いたが、マリエッテには背の高い男性の知り合いがいたという記憶はない。
「はい、そうです。あの、申し訳ございません、私は貴方のことを覚えていないのですが」
眼鏡の向こうの緑色の瞳はどこか覚えがあるのだが、はっきりと思い出すことができないのだ。
「かなり昔のことですからね。僕は、ラウレンス。ラウレンス・ファン・リュールです。10年以上前かな、訓練を兼ねてディレン伯爵領でお世話になったことがあります」
「あ、……え?あの、ラウ?あのときの?」
「うん、思い出してくれた?」
「懐かしい!元気にしてた?って今、事務官をしているのね?あのとき私、適当なことを言ったと思うんだけど、本当に叶えちゃったのね。すごいわ!」
思い出した途端に口調の崩れたマリエッテに、ラウレンスは柔らかな笑みを向けた。
◆◇◆◇◆◇
15年ほど前のことだ。
マリエッテの領地に、父の知り合いの息子だという男の子が、伯爵家の騎士団で訓練するために来た。王都の剣術は合わないらしいので伯爵家の実践的な訓練をと依頼され、魔獣を相手にする騎士団に数か月滞在していたと思う。
しかし、ラウレンスは努力して形になってはいたものの、そもそもがあまり剣術に向いていなかった。長剣を振り回すのがあまり上手くなく、長い手足をもてあましているようだった。
当時10歳に満たないマリエッテは、周りにいないタイプのラウレンスが珍しく、時間があれば近づいてまとわりついていたように思う。その中で、ラウレンスがポロリと零したのだ。
「僕、あんまり剣に向いてないんだよね。勉強の方が好きだし。でもうちの家は剣術が必須だから、とにかく頑張ったんだ。だけど全然上達しなくて……父も兄たちも匙を投げた。それでここへ来たんだ」
「ふぅん。うちの剣術なら良さそうだってことね。じゃあ、慣れた?」
「ううん。あ、でもここでは色々なことを試せるから、それはよかったよ。短剣の使い方も、弓の引き方も教えてもらった。ここの騎士たちはいろんなことを知っていて、道が一つじゃないってことは気づけたんだ」
「短剣なら、いつも持ち歩けるものね。それに、ラウは勉強が好きなの?私は嫌いじゃないけどちょっと苦手。勉強ができればもっと別の方向からできることもあるって言われたけど、よくわからなかったわ。たとえば、国を支えるのは騎士だけじゃなくって王城に勤める事務官や財務官とか、侍女だってメイドだって、色々あるんですって」
口をとがらせて言うマリエッテに、ラウレンスは優しく微笑んだ。
「勉強は楽しいよ。知らないことを知っていくってすごくワクワクするから」
「あ!頭がいいなら、事務官なんかもいいんじゃないかしら?騎士の仕事だって、事務みたいな仕事がゼロじゃないんでしょう?だったら、騎士団の中で事務をする人だっているわよね。それに、短剣とか弓を使えるなら、戦う事務官にもなれるわよね。きっとかっこいいわ」
「事務官か……。考えたこともなかったよ。うちは騎士の家系だから、とにかく騎士になるべきって考えてた」
「そうなの?とってもいいと思うのよ。私も少しは勉強してみようかしら。あと、戦える事務官はすごくラウに合うと思うわ!そうは見えないのに実は護衛とか、ちょっと素敵じゃない?かっこいいわよ。勉強が好きなラウなら事務官の仕事もきちんとできそうね!私もそういうのを目指そうかしら」
マリエッテは、ただ思いつくまま、無責任にラウレンスに期待しただけであった。
勉強ができるなら、自分にはできない方法で誰かを支える仕事ができるだろう、と。
そして滞在期間が終わり、数か月滞在した彼のことは遠い記憶となっていた。
しかし、ラウレンスにはその期待こそが救いであった。
温かく見守る女性使用人や行儀見習いたちの空気が伝わったのか、公爵家の仕える男性たちもどこか微笑ましくエフェリーンとチェールトを見ているようである。
また、婚約者たちのふわふわした幸せな空気にあてられたのか、結婚相手を探す人たちが増えた。行儀見習いで来ている貴族子女たちも、これまでなら「まだ適齢期だから」とおざなりにしていた社交に力を入れるようになったのだ。
どうやら、エフェリーンたちのあり方は間接的に周りの人たちの結婚願望を増幅させることになったようだ。
ちなみに、マリエッテのように推しカップルを見守るために自分の結婚の優先順位を最低限にまで下げてしまった人は他にはいなかった。
王城でのお茶会のときは、マリエッテがすることはほとんどない。
応接室やティールームで3人が語り合っている間は護衛も十分なので、その間はマリエッテの休憩にあてられることになった。
休憩といっても、王族のプライベート空間で働く使用人にあてがわれている休憩室でお茶をしたり、王城内にある図書館へ本を借りに行ったりする程度だが、気晴らしにはなる。
マリエッテ個人としては、いつでも2人を見守れる方が良いので休憩はいらないと伝えたのだが、エフェリーンが首を横に振った。
「マリエッテは、ただでさえ侍女として必要な知識を学んでいるところなのに、護衛としてもずっと働いているのよ?誰にだって休憩は必要なの。そう言ったのは貴女よ、マリエッテ」
以前、チェールトのためにと少しの休憩も取らずに予定を詰め込むエフェリーンに、休憩する方が効率が上がると説明したことがある。
見事に自分に返ってきたので、マリエッテは肯定する以外の答えを返すことはできなかった。
数回目の登城のとき、休憩時間に図書館へ行くことにした。
海運業に関わる勉強をする中で、これまで知らなかった海の向こうの国の言葉や文化を知りたいと思ったのだ。もちろん公爵家にも辞書や例文集などはあるのだが、もう少し強化したい。
そのためには、外国語に触れる機会を増やすしかない。
ありがたいことに、王城の図書館には別大陸の国の言語で書かれた本も複数並べられていた。
司書に聞いたところ、閉架図書にもいくつかあるという。こういう機会でもないと王城の図書館には来られないので、ありがたく利用させてもらうことにしていた。
経済棟の方を通って図書館へ向かう途中で、以前見かけたこげ茶色の髪の男性がいた。歩く姿を見ても、やはりただ者ではないようだ。なんなら、そのへんの騎士よりも使えるかもしれない。
背は高いがひょろっとした印象ではなく、しなやかな筋肉をつけていることがわかる。かといって威圧感があるほどではないので、スピード重視の剣術を身に付けているのかもしれない。
ふと眼鏡越しに緑の目と視線を交わしたときに、その考えはほぼ確信となった。
また目礼で通り過ぎようとしたのだが、男性がマリエッテの一歩前で立ち止まった。
何かあっただろうか、とマリエッテも男性に合わせて立ち止まった。
「えっと、マリエッテ嬢、ですよね?ディレン伯爵家の」
男性は、マリエッテを見下ろしながら軽く首をかしげた。
名前を知られていることに驚いたが、マリエッテには背の高い男性の知り合いがいたという記憶はない。
「はい、そうです。あの、申し訳ございません、私は貴方のことを覚えていないのですが」
眼鏡の向こうの緑色の瞳はどこか覚えがあるのだが、はっきりと思い出すことができないのだ。
「かなり昔のことですからね。僕は、ラウレンス。ラウレンス・ファン・リュールです。10年以上前かな、訓練を兼ねてディレン伯爵領でお世話になったことがあります」
「あ、……え?あの、ラウ?あのときの?」
「うん、思い出してくれた?」
「懐かしい!元気にしてた?って今、事務官をしているのね?あのとき私、適当なことを言ったと思うんだけど、本当に叶えちゃったのね。すごいわ!」
思い出した途端に口調の崩れたマリエッテに、ラウレンスは柔らかな笑みを向けた。
◆◇◆◇◆◇
15年ほど前のことだ。
マリエッテの領地に、父の知り合いの息子だという男の子が、伯爵家の騎士団で訓練するために来た。王都の剣術は合わないらしいので伯爵家の実践的な訓練をと依頼され、魔獣を相手にする騎士団に数か月滞在していたと思う。
しかし、ラウレンスは努力して形になってはいたものの、そもそもがあまり剣術に向いていなかった。長剣を振り回すのがあまり上手くなく、長い手足をもてあましているようだった。
当時10歳に満たないマリエッテは、周りにいないタイプのラウレンスが珍しく、時間があれば近づいてまとわりついていたように思う。その中で、ラウレンスがポロリと零したのだ。
「僕、あんまり剣に向いてないんだよね。勉強の方が好きだし。でもうちの家は剣術が必須だから、とにかく頑張ったんだ。だけど全然上達しなくて……父も兄たちも匙を投げた。それでここへ来たんだ」
「ふぅん。うちの剣術なら良さそうだってことね。じゃあ、慣れた?」
「ううん。あ、でもここでは色々なことを試せるから、それはよかったよ。短剣の使い方も、弓の引き方も教えてもらった。ここの騎士たちはいろんなことを知っていて、道が一つじゃないってことは気づけたんだ」
「短剣なら、いつも持ち歩けるものね。それに、ラウは勉強が好きなの?私は嫌いじゃないけどちょっと苦手。勉強ができればもっと別の方向からできることもあるって言われたけど、よくわからなかったわ。たとえば、国を支えるのは騎士だけじゃなくって王城に勤める事務官や財務官とか、侍女だってメイドだって、色々あるんですって」
口をとがらせて言うマリエッテに、ラウレンスは優しく微笑んだ。
「勉強は楽しいよ。知らないことを知っていくってすごくワクワクするから」
「あ!頭がいいなら、事務官なんかもいいんじゃないかしら?騎士の仕事だって、事務みたいな仕事がゼロじゃないんでしょう?だったら、騎士団の中で事務をする人だっているわよね。それに、短剣とか弓を使えるなら、戦う事務官にもなれるわよね。きっとかっこいいわ」
「事務官か……。考えたこともなかったよ。うちは騎士の家系だから、とにかく騎士になるべきって考えてた」
「そうなの?とってもいいと思うのよ。私も少しは勉強してみようかしら。あと、戦える事務官はすごくラウに合うと思うわ!そうは見えないのに実は護衛とか、ちょっと素敵じゃない?かっこいいわよ。勉強が好きなラウなら事務官の仕事もきちんとできそうね!私もそういうのを目指そうかしら」
マリエッテは、ただ思いつくまま、無責任にラウレンスに期待しただけであった。
勉強ができるなら、自分にはできない方法で誰かを支える仕事ができるだろう、と。
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