44 / 65
第四章 古代の魔法編②
第41話 邪なる者
しおりを挟む
翌日の正午。
カラドボルグを含む俺たち四人は食堂の隅に集まっていた。
先日サタナの口から聞かされた、
にわかには信じがたい現象。
メアリさんはそれについて、
一つの結論を導き出したという。
「もちろん、私の推測が確実に正しいとは限りませんが」
そう前置きして。
メアリさんは、語り始めた。
何故リストアップされたダンジョンにお宝が無かったのかを。
「通常、財宝の間へと訪れるためには、そのダンジョンに存在するボスモンスターを倒さねばなりません。それはご存じですね?」
無論だ。
むしろ、それを知らない冒険者なんているのか?
「なので、ボスモンスターを倒さずにお宝のみを持ち帰ることは出来ません」
「【防魔の約定】というヤツじゃな」
その通り。
【防魔約定】とは。
財宝の間へと続く扉に付与された魔法の一つである。
この約定がある限り、
いかなる手段を用いても財宝の間への扉を破壊することは出来ない。
また、なんらかの方法で掻い潜ることも出来ない。
透過スキルを用いても、
スキルそのものが解除されてしまう。
さらには――。
「約定の力は絶大。妾が全身全霊を込めた一撃を放ったとしても、その扉を破壊することは叶わぬ。他の魔王も同様よ。どのような技を用いようが約定を破ることは不可能なのじゃ」
つまり、財宝の間に行きたいならボスモンスターを撃破するしかないってことだな。
そのはずなのだが……。
「妾が攻略したダンジョン、その全てに、しかとボスモンスターが存在しておった」
「何者かがなんらかの手段で約定を破り、財宝のみを持ち帰ったと?」
メアリさんはあり得ませんと断言した。
サタナとカラドボルグもその言葉に同意した。
「レイン様! 例えば、我の力を100%解放したとしても約定は破れないんです! 約定の力っていうのはそれくらいに凄いんだからっ!」
となるとますます謎だ。
【防魔の約定】を侵さずに財宝のみを持ち帰る、そんな手段が存在するのか?
「レインさんの考えていることは分かりますよ。私も、最初は考えすぎて知恵熱が出そうになりましたから。でも、この状況を再現するたった一つの方法を思い付いたんです」
「この状況を再現? それはどんな?」
「つまりじゃな」
と言いかけたサタナを制止しメアリさんが続けた。
正しい判断だ。
サタナは無駄に勿体付けそうだし、
そうなったら昼休みが終わってしまう。
「つまり、何者かはボスモンスターを撃破したんです。そしてそのまま財宝の間へと立ち入り、お宝を持ち帰ったのです」
「いや、それはおかしいだろう」
そう応じた俺の顔を、ニヤニヤとした表情でサタナが眺めていた。
くっ、性格の悪い奴め。
「レインさんの言う通り、確かにおかしいです。一度撃破されたボスモンスターは二度と復活しない。それがダンジョンです。しかしそれは、『自然的には』というだけの話なんですよ」
「!!」
なるほど。
ここに来てようやく俺にも話が見えてきた。
「その何者かはボスモンスターを復活させ、再び財宝の間への扉を封鎖した?」
パチパチ、とサタナが拍手する。
どうやら正解らしいが。
あまり嬉しくないのは何故だろう?
「えー? でも、なんでそんなことする必要があるの? 意味分かんないんですケドォ」
カラドボルグの疑問は真っ当なものだ。
一度撃破したボスモンスターを復活して、もう一度財宝の間の扉を封鎖する。
なんたってそんな面倒くさいことをする必要があるんだよ。
「悟られぬため、というのが答えじゃろうな」
サタナは腕を組みながら真剣な面持ちで応じた。
メアリさんもそれに追従する。
「悟られぬためって、なにを?」
「思い返してもみて下さい。私が友人に頼み込んでリストアップしてもらったダンジョンは、全て古の時代を彷彿とさせるような命名がなされていたのですよ? つまりその何者かは……私たちと同じか、それに近しい目的をもって活動しているんです」
「ハァ!? だからってなんで隠す必要があるわけェ?」
「……良からぬことを企てている。古の何かを使って。そういうことだな?」
問いかけながら、
俺は、ノエルの言葉を思い出していた。
――呪いの本なんかじゃないわ。でも、何が書かれているかは教えられない。あんなもの、誰も知らない方が良いのよ――
「それを裏付ける物的証拠がこれです」
メアリさんは例の書類を取り出した。
サタナに皮肉めいて見せつけた、あの鈍器のような書類の山だ。
「一度クリアされたダンジョンには「☆マーク」が付けられます。これは、冒険者の方々に無駄な労力を割かせないための配慮です。ここにはお宝はありません、それでも行くというのならご自由に。そういうマークなんです」
だが。
リストアップしてもらった書類には、
☆マークは付いていなかったという。
「これが意味することは一つ。邪な心を持つ何者かと繋がっている人物が、冒険者ギルド内部に潜んでいるということです」
カラドボルグを含む俺たち四人は食堂の隅に集まっていた。
先日サタナの口から聞かされた、
にわかには信じがたい現象。
メアリさんはそれについて、
一つの結論を導き出したという。
「もちろん、私の推測が確実に正しいとは限りませんが」
そう前置きして。
メアリさんは、語り始めた。
何故リストアップされたダンジョンにお宝が無かったのかを。
「通常、財宝の間へと訪れるためには、そのダンジョンに存在するボスモンスターを倒さねばなりません。それはご存じですね?」
無論だ。
むしろ、それを知らない冒険者なんているのか?
「なので、ボスモンスターを倒さずにお宝のみを持ち帰ることは出来ません」
「【防魔の約定】というヤツじゃな」
その通り。
【防魔約定】とは。
財宝の間へと続く扉に付与された魔法の一つである。
この約定がある限り、
いかなる手段を用いても財宝の間への扉を破壊することは出来ない。
また、なんらかの方法で掻い潜ることも出来ない。
透過スキルを用いても、
スキルそのものが解除されてしまう。
さらには――。
「約定の力は絶大。妾が全身全霊を込めた一撃を放ったとしても、その扉を破壊することは叶わぬ。他の魔王も同様よ。どのような技を用いようが約定を破ることは不可能なのじゃ」
つまり、財宝の間に行きたいならボスモンスターを撃破するしかないってことだな。
そのはずなのだが……。
「妾が攻略したダンジョン、その全てに、しかとボスモンスターが存在しておった」
「何者かがなんらかの手段で約定を破り、財宝のみを持ち帰ったと?」
メアリさんはあり得ませんと断言した。
サタナとカラドボルグもその言葉に同意した。
「レイン様! 例えば、我の力を100%解放したとしても約定は破れないんです! 約定の力っていうのはそれくらいに凄いんだからっ!」
となるとますます謎だ。
【防魔の約定】を侵さずに財宝のみを持ち帰る、そんな手段が存在するのか?
「レインさんの考えていることは分かりますよ。私も、最初は考えすぎて知恵熱が出そうになりましたから。でも、この状況を再現するたった一つの方法を思い付いたんです」
「この状況を再現? それはどんな?」
「つまりじゃな」
と言いかけたサタナを制止しメアリさんが続けた。
正しい判断だ。
サタナは無駄に勿体付けそうだし、
そうなったら昼休みが終わってしまう。
「つまり、何者かはボスモンスターを撃破したんです。そしてそのまま財宝の間へと立ち入り、お宝を持ち帰ったのです」
「いや、それはおかしいだろう」
そう応じた俺の顔を、ニヤニヤとした表情でサタナが眺めていた。
くっ、性格の悪い奴め。
「レインさんの言う通り、確かにおかしいです。一度撃破されたボスモンスターは二度と復活しない。それがダンジョンです。しかしそれは、『自然的には』というだけの話なんですよ」
「!!」
なるほど。
ここに来てようやく俺にも話が見えてきた。
「その何者かはボスモンスターを復活させ、再び財宝の間への扉を封鎖した?」
パチパチ、とサタナが拍手する。
どうやら正解らしいが。
あまり嬉しくないのは何故だろう?
「えー? でも、なんでそんなことする必要があるの? 意味分かんないんですケドォ」
カラドボルグの疑問は真っ当なものだ。
一度撃破したボスモンスターを復活して、もう一度財宝の間の扉を封鎖する。
なんたってそんな面倒くさいことをする必要があるんだよ。
「悟られぬため、というのが答えじゃろうな」
サタナは腕を組みながら真剣な面持ちで応じた。
メアリさんもそれに追従する。
「悟られぬためって、なにを?」
「思い返してもみて下さい。私が友人に頼み込んでリストアップしてもらったダンジョンは、全て古の時代を彷彿とさせるような命名がなされていたのですよ? つまりその何者かは……私たちと同じか、それに近しい目的をもって活動しているんです」
「ハァ!? だからってなんで隠す必要があるわけェ?」
「……良からぬことを企てている。古の何かを使って。そういうことだな?」
問いかけながら、
俺は、ノエルの言葉を思い出していた。
――呪いの本なんかじゃないわ。でも、何が書かれているかは教えられない。あんなもの、誰も知らない方が良いのよ――
「それを裏付ける物的証拠がこれです」
メアリさんは例の書類を取り出した。
サタナに皮肉めいて見せつけた、あの鈍器のような書類の山だ。
「一度クリアされたダンジョンには「☆マーク」が付けられます。これは、冒険者の方々に無駄な労力を割かせないための配慮です。ここにはお宝はありません、それでも行くというのならご自由に。そういうマークなんです」
だが。
リストアップしてもらった書類には、
☆マークは付いていなかったという。
「これが意味することは一つ。邪な心を持つ何者かと繋がっている人物が、冒険者ギルド内部に潜んでいるということです」
0
あなたにおすすめの小説
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。
絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。
辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。
一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」
これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~
かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。
そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。
しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!
命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。
そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。
――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる