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第一章
第7話 【今後について・3】
しおりを挟む「夢じゃなかった……」
俺は周りを確認して、謹慎させられていた部屋ではなく寮の部屋だと気付いてホッと安心した。
「……なんか安心したら、急にお腹が減ったな」
安心感と共に空腹が俺を襲い、俺は部屋を出て食堂に向かった。
既に沢山の人が食堂で食事をしており、俺もおばちゃん達の所へ食事を貰いに向かった。
「あら、おはよう。よく眠れたかしら?」
「はい。ご飯を食べた後、ぐっすりと寝てました」
「ふふっ、寝る子は育つって言うものね。まだまだ成長期なんだから、無理しちゃ駄目よ」
おばちゃんはそう言いながら、朝食を用意してくれた。
用意してくれた食事を俺はお礼を言って受け取り、席に座りに行った。
沢山人が居て、空いてる所は少なかったがなんとか奥の方に空いてる席を見つけて座る事が出来た。
「朝ご飯も美味しそうだ……」
朝食から豪勢な朝食が用意されていて、これだけでこの商会に来てよかったと思える。
こんなに美味しいご飯を二食続けて食べたのなんて、謹慎前だから随分前の事だ……。
そう思った俺は昨日と同じく目に涙が出そうになり、人に見られる前に慌てて涙を拭きご飯を食べ始めた。
朝食後、部屋に戻ってくると部屋の郵便受けに手紙が届いていた。
「エルドさんから?」
封筒の差出人が書かれており、手紙の主がエルドさんだと気づいた俺はすぐに封を切り中を見た。
すると、俺の商会の会員証と一つの手紙が入っていた。
その手紙には、朝食を食べたら部屋に来るようにと書かれていた。
「朝には無かったって事は、俺がご飯食べてる間にこの手紙が来たんだろう。急いで、準備していかないと」
俺は直ぐに部屋の扉を閉めて、寮から商会の建物の方へと移動してエルドさんの仕事部屋に向かった。
もしかしたら人に止められるかもと思ったが、先に通達されていたのか特に止められる事は無かった。
そして部屋に着いた俺は、ノックをするとエルドさんの声がして扉を開けて中に入った。
「すみません。遅れました!」
部屋に入った瞬間、俺はエルドさんに頭を下げて謝罪をした。
「遅れておらんから、そう慌てるでない」
俺の行動に対して、エルドさんはそう優しく言ってくれた。
そして俺は顔を上げて改めて部屋の中を確認すると、エルドさん以外にこの部屋に人が居る事に気づいた。
その人はエルドさんと同じ歳頃の女性で、優しそうな顔で俺の方を見ていた。
「貴方が主人が言ってた子ね。初めまして、私はシエナ・ルクリア。エルドの妻よ」
「エルドさんの奥様!? は、はじめましてアルフレッドと申します」
俺は思っていた予想が当たり、すぐに頭を下げて挨拶を返した。
すると、シエナさんはそんな俺に「礼儀正しい子ね」と優しく微笑みながらそう言った。
それから俺はエルドさんから、座るように言われ部屋のソファーに座った。
「アルフレッド君。まずは、主人の事を助けてくれてありがとう」
「い、いえ。エルドさんにも言いましたが、最初は自分も見捨てるつもりでしたが、体か勝手に動いただけなので……」
「それでも主人を助けてくれた事には変わりないわよ。それに主人からその辺りも詳しく聞いて、お礼を言ったのよ。他の人が無視してる中、アルフレッド君だけが動いてくれたって、貴方が居なかったから今頃主人は串肉を喉に詰まらせこの世には居なかったと言ってたわ」
「うむ。あの時、他の者にも目線で助けを求めたが誰一人として止まらなかったからの、そんな中お主だけが動いてくれたんじゃ」
確かにあの時、俺以外の人もエルドさんの事に気づいていたけど誰も動こうとしてなかった。
……ってか、今気づいたけど、エルドさん何か顔が腫れてないか?
そう思いエルドさんの事を見てると、エルドさんは俺の視線に気づき悲しそうな顔をして「この顔は気にするな」と言った。
「大丈夫よ。この人の顔が腫れてるのは、私との約束を破った罰だから誰かに襲われたとかではないわ」
「は、はい」
シエナさんは冷めた視線でエルドさんを一目見て、そう言い切り言葉の圧に俺は返事をする事しか出来なかった。
それから、エルドさん達は俺を呼んだ理由を説明してくれた。
「昨日で手続き自体は終わったんだが、シエナがどうしてもお主と会いたいと言ってな」
「主人の命の恩人に対して、挨拶も無しは失礼と思ってね。それにこれから、商会で働く子でもあるんだから一目見ようと思ったのよ」
「そうだったんですか、もしかして昨日勝手に広場を使った事を怒られるのかと考えて、少しドキドキしてました……」
俺は昨日の事を思い出し、管理人さんには許可してもらったけど広場に入って勝手に道具を使った事を怒られるのかと思って心配していた。
「そんな事で怒る事はないぞ? それに広場は、商会の者達が気分転換や体を動かすスペースとして用意してあるんだから、お主も使いたい時に好きに使ってよい」
「ええ、そうよ。アルフレッド君はもう私達の商会の仲間なんだから」
そう俺はエルドさん達に言われて、ホッ安心した。
そしてエルドさん達は本当に呼び出した理由が、俺とシエナさんの顔合わせだけだったのか、この場は解散する事になった。
解散後、俺は特に仕事を持たない身分なので昨日と同じく広場へとやってきて、俺の持つスキルがどんな効果なのか更に調べる事にした。
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