外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

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第一章

第6話 【今後について・2】✤

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「……そういえば、聞いた話だと【剣術】の才能がある者は握っただけでスキルが現れたとか」

 10分程、走った俺は訓練場の端にあるベンチに座り、ふと以前見た本の事を思い出した。
 スキルを得るには物凄い努力が必要だが、一部の才能がある者は直ぐにスキルを獲得する。
 実際に、クラリスがその才能のある部類の人間だ。
 あの日の、5つのスキルを獲得したクラリスは俺が家を出る際、新たに一つスキルを手に入れたと聞いた。

「試してみようかな?」

 自分に才能があるかないか分からない。
 でも、試す分には良いだろう。
 そう思った俺は、広場の道具置き場に置いてあった木の剣を手に取った。

「剣握るのも久しぶりだな、こんな感じだったかな?」

 それから俺は頭を空っぽになるまで、無我夢中で剣を振り続けた。
 一年以上振りの剣に懐かしさと楽しさを感じ、ふと気づけば広場に設置してある時計の針が一時間進んでるのに気づいた。

「……あれ、なんか剣が軽くなった」

 時間を忘れる程、剣を振り続けていた俺は違和感を感じ、一度剣を振るのを止めてベンチに座った。
 そして、恐る恐るステータスを表示させた。


名 前:アルフレッド
年 齢:16
種 族:ヒューマン
身 分:平民
性 別:男

レベル:10
筋 力:78
魔 力:91
敏 捷:54
 運 :91

スキル:【経験値固定:/】【剣術:0(15/100)】
加 護:Error



「何で【剣術】のスキルが俺のスキル欄に?」

 そこには間違いなく、新たなスキル【剣術】が追加されていた。
 いやいやいや、ちょっとまて! 俺の家系はどちらかといえば、魔法使い系だぞ!?
 それなのに、たった一時間だけ夢中で剣を振っただけで【剣術】のスキルが手に入る訳ないだろ!?

「いや、でも現にここに……って、なんだこのスキルのレベルは?」

 驚いた俺は、ふとスキルの名前の横についてるレベルの数値を見て止まった。
 そこには【剣術:0(15/100)】と書かれていた。

「何なんだ。この数値は?」

 そこで俺はもう一度立ち上がり、剣を握り数分間適当に剣を振り続けた。
 そしてもう一度、ステータスを見ると数値に変化は現れなかった。

「……もしかして、特定の条件だったらこの数値が上がるのか?」

 そう思った俺は、今度は適当ではなく真面目に剣を30分程振ってみた。
 すると、俺の予想が的中して、【剣術:0(19/100)】と数値が進んでいた。

「真剣に取り組み、ある一定の回数を超えると数値が変化するのか? ……まだ時間はあるから試してみよう」

 その後、俺は日が暮れる時間まで剣を振って色々と試した。
 その結果、分かった事は真面目に取り組み100回を超えると数値が1進むことが分かった。
 適当に何百回振っても数値に変化はなく、真面目に剣と向き合って振ると数値が進んだ。
 そしてもう一つ分かったのは、この数値は俺の意思で表示させたりする事が出来る事も分かった。

「それにしても、まさか能力値の運以外にこの数値が現れるとは思わなかったな……」

 検証を進めて行って一番驚いたのは、この意味の分からない現象は能力値の方にも表れたのだ。
 実際に俺は真剣に広場を数十分走ると、【俊敏:54(4/100)】と数値が進んだ。

「まだ色々とわからない事ばかりだけど、もしかしてこれが【経験値固定】の力なのか?」

 【経験値固定】のスキルを見つつ俺は、このスキルの可能性を想像して、自然と笑みを浮かべた。
 その後、もう陽は完全に落ちていたので俺は寮の建物に戻り、シャワーを浴びに風呂場の方へと向かった。
 既に他の人は入ったのか、まだ入りに来てないのか俺以外に人は居なかった。

「石鹸まで完備してあるって、本当にルクリア商会は凄いな……」

 シャワーの所には体を洗う用の石鹸と、ここ数年ずっと人気の髪用の石鹸が全部のシャワーの所に置いてあった。
 その光景に俺は、ルクリア商会は凄いなと感じつつ、汗と汚れを流して大きな浴室に肩まで浸かった。

「ふ~、いい湯だった」

 風呂から上り、俺はエルドさんに買ってもらった新しい服に着替えて寮の食堂に向かった。
 食堂に移動してくると、食堂には沢山人が居て知り合い同士で集まって食事をしていた。
 そして俺は食堂の中に入り、さっき見回ってた時に挨拶をした食堂のおばちゃん達に「まだご飯もらえますか?」と尋ねた。

「大丈夫よ。お昼からずっと広場で体を動かしてお腹空いてるでしょ、沢山食べるのよ」

 食堂のおばちゃんは、俺が広場で運動していたのを知っていたようで俺の分の食事を用意してくれた。
 用意してくれたおばちゃんに対し、「ありがとうございます」とお礼を言った俺は空いてる所に座り食事を始めた。

「美味しい……」

 一口、口の中に入れただけでその美味しさが伝わった俺は少しだけ涙が出そうになった。
 謹慎生活期間、俺は真面な食事をとれる日は少なかった。
 それは親の差し金なのか、従者達が勝手にした事なのか、俺が死なない程度に食事は抜かされ、最大で三日間間飯抜きの時もあった。
 その為、俺はかなり胃の容量が小さくなり、今日も一日食べずともお腹
が空く感じはしなかった。

「ごちそうさまでした。凄く美味しかったです」

「あら、おかわりはいいの?」

「今はちょっと、沢山食べれないんです。でも、凄くおいしかったです! また明日もよろしくお願いします」

「いいのよ。これが私達の仕事なんだから」

 その後、おばちゃん達にお礼を言って食堂を出て部屋に戻った。
 風呂と飯を終えた上に、久しぶりに体を動かした俺はベッドに横になると睡魔に襲われすぐに眠りについた。
 そして翌日、あれは夢だったかもしれないと思いバッとベッドから起き上がると、商会の寮の部屋で物凄く安心した。
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