外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

文字の大きさ
12 / 140
第一章

第12話 【師匠・4】

しおりを挟む

 翌日、朝食を食べ終え広場へと行くと、既にアレンさんがベンチに座って待っていた。
 えっ、かなり早く来たと思ってたのに、何でもう居るんだっ!?
 俺は師匠を待たせた事に焦り、走ってアレンさんの近くに寄った。

「す、すみません。遅れました!」

「んっ? ああ、俺が早く来ただけだから、頭下げなくてもいいぞ」

 アレンさんに頭を下げて謝ると、アレンさんはそう言って「訓練始めるか」と言って立ち上がった。
 今日の訓練は昨日に引き続き、水属性のスキルのレベル上げをする事になった。

「本来であれば、スキルを手に入れたら魔物を倒しながら戦闘技術を学んで、スキルレベルと経験を積むのが正しいやり方だが。アルフレッドの場合は、この訓練方法が一番上がりやすいと思う。戦闘経験に関しては、後でいくらでも経験出来るからな」

「わかりました」

 本来のやり方よりも、俺の場合は今の訓練が最適解だと言われて、俺はそれから桶に手を入れて昨日と同じ訓練を始めた。
 昨日はスキルを手に入れる所からだったが、今はスキルを手に入れた状態だからか昨日よりも水を動かすのが簡単だった。

「アルフレッド。修行に集中しながら、話す事は出来そうか?」

「えっ? あっ、少しならできます」

 訓練が始まって10分程経った頃、アレンさんから声を掛けられた俺は訓練に集中しながら、アレンさんと会話をする事になった。

「アルフレッドって、ついこの間まで貴族だったんだよな?」

「そうですよ」

「それなのに、意外とここでの生活に慣れてるよな? 元々、質素な生活をしていたのか?」

 アレンさんからそう言われた俺は、確かにここに暮らし始めて数日だけどもう大分慣れてきている。

「う~ん。元々は裕福な暮らしをしてましたけど、ここ一年は謹慎生活でかなり厳しい環境で生活していたんですよ。それで多分、鍛えられていたんだと思います」

「謹慎? お前、何か悪さでもしたのか?」

「いえ、俺がスキルを一つしか手に入れられなかったので、それで謹慎させられていたんです」

 アレンさんは俺の事をまだ詳しく聞いていなかったのか、俺の境遇を知らなかったのでそう伝えた。
 話を聞いたアレンさんは、驚いた顔をして「スキルが無いからって、そんな事を普通するか?」と言った。

「俺の家が変なだけだと思いますよ。他の貴族の家がどうしてるのかまでは知りませんけど、俺の様に無能だからって謹慎生活をさせるなんて聞いた事がないですから」

「俺も初めて聞いたよ」

 それからアレンさんは、俺ばかり聞いたら悪いからと言って、自分の事についても色々と話してくれた。
 アレンさんの冒険者駆け出しの頃の話は、特に面白かった。

「そろそろ休憩していいぞ、かなり魔力消費しただろ?」

「は、はい……」

 あれから数時間が経ち、昼過ぎ頃まで集中して訓練を続けていた俺はアレンさんの言葉で手を桶から出してベンチに座った。
 会話しながらでも集中して訓練をしていた俺は、使う魔力が少ないとはいえかなり魔力を消費して頭痛に苦しんでいた。

「これを飲め。魔力回復薬だから、少しは楽になるぞ、ただ少し苦いからな」

「ありがとうございます……」

 アレンさんが渡してくれた魔力回復薬を口にした俺は、一瞬その苦さに「うえっ」となったが我慢して全部飲み干した。
 すると、徐々に頭痛が治ってきて少しだけ楽になった。

「凄いな……俺が初めて魔力回復薬を飲んだ時は飲み干せなかった。アルフレッドは、我慢強いな」

「我慢は昔から得意なので」

「確かにな、あんな訓練方法が最適と言われても俺だったら一時間も持たないだろうからな……才能に負けない程、努力できる奴なんだな」

 そう褒められた俺は、嬉しく感じ「ありがとうございます」と言葉を返した。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...