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第一章
第11話 【師匠・3】
しおりを挟むアレンさんが正気を取り戻すのに数分かかり、一先ず加護については置いておく事にしてこれからの訓練についての話となった。
「それで才能の塊といっても、何から教えるんだ?」
そんなアレンさんに対し、エルドさんは俺の育成方針について尋ねた。
アレンさんは俺の事をチラリと見て、俺の育成方針について教えてくれた。
「何からと言われても、俺の得意分野は魔法ですからね。基本的に魔法について教えて行って、その後に魔物との戦い方を教えようと思います。経験も無いので、様子見をしつつ進めて行こうかなと。スキルの力について、まずは理解が必要ですからね」
「ふむ、昔からお主は用心深い男だから心配はあまりしてないが、危険な事はやめるんじゃぞ?」
「分かってます。アルフレッド以上の才能を持つ人間は、今後現れないと思いますので大切に育てます」
エルドさんにアレンさんはそう言うと、話し合いを終わり俺はアレンさんと一緒に広場へとやってきた。
「まず、俺が聞いた話だと【経験値固定】というスキルを持っているのと、全属性の適性がある事だが間違ってないか?」
「あっ、それと【剣術】です。ここに来てから、習得しました」
「ここに来てからって、まだ一週間も経ってないよな? それもあれか、お前のスキルが関係してるのか?」
「そうだと思います」
俺はアレンさんの質問に対して、この数日間で分かった事を伝えた。
その内容にアレンさんは「見て確かめるか」と言って、早速修行を始める事になった。
まず最初にする事は、魔法の中でも比較的練習のしやすくて、便利な〝水属性〟の属性魔法の修行が始まった。
「水属性魔法の訓練は簡単だ。まず、桶か何かに水を用意して、そこに手を突っ込む。そして、魔力で水を動かすイメージをするんだ」
「そ、そんな簡単なんですか?」
「ああ、やり方は簡単だ。だけど、簡単だからといってすぐに習得は本来は出来ない。天才と呼ばれる者達でも、一月は掛るのが普通だ。だけど、お前はその常識を覆すスキルを持ってるんだろ? 俺は待ってるから、スキルを手に入れたら教えてくれ」
「わ、分かりました!」
アレンさんにそう言われた俺は、用意してもらった水が入った桶の中に手を突っ込み、魔力で水を動かすイメージをした。
すると俺の魔力に反応して、水が少しだけ動いた。
「ほ~、初めてで水が動いたか。適正はちゃんとあるみたいだな」
アレンさんは水が動いた事に対してそう言い、それから俺は訓練を続けた。
訓練を始め一時間程が経ち、【剣術】の時よりも集中してやれた俺はふとステータスを確認した。
すると、既に【水属性魔法:0(32/100)】とかなり進んでいた。
「数値の伸びが早い?」
「んっ、どうした? 何かあったのか?」
「あっ、いえ。何でもないです!」
俺の呟きに対してアレンさんが反応したので、俺はそう言葉を返して訓練を再開した。
剣術の時は集中していたとはいえ、体力の減少と共に少しだけ集中が切れてる時があった。
だけど今回の訓練は、集中しているだけで体への負担は感じられないし、魔力減少で倒れそうにもない。
やっぱり、経験値を稼ぐにはどれだけ集中して、経験を積むかが大事なんだな。
それから更に二時間後、俺はふやふやになった手を桶から出して、ずっと見守っていたアレンさんに「スキルの習得が終わりました」と告げた。
「……もう習得したのか?」
「はい、レベル1ですが習得は出来ました。実際に見せますね」
「ああ、見せてくれ」
疑っているアレンさんに、俺は三時間の訓練で習得した【水属性魔法】で作った水の球を見せた。
アレンさんはそれを見て、驚いた顔をして「本当にこの短時間で習得したのか!?」と叫んだ。
「は、はい……さっきステータス見せた時に無かったと思うので、嘘とかでは無いです」
「ああ、いや疑ってるわけじゃない。驚いただけだ……しかし、まさか本当にこの短時間で一つの属性魔法を習得するとはな。もしかして、スキルレベルも同じ時間で上げる事も可能なのか?」
「そこはまだ検証してない部分ですね」
「……それなら今日は、限界まで水属性の訓練をしてみるか。簡単な修行方法でも、同じだけスキルレベルがあげられるか試しておいて損はないだろうからな」
アレンさんからそう言われた俺は、師匠の言葉だから反対せず「わかりました」と返事をして訓練を再開した。
結局、その日は魔力減少で倒れる事は無く、陽が沈むまで訓練を続けた。
そして一日の訓練の成果だが、【水属性魔法】のスキルレベルは2の半分まで溜まった。
「まさか、その日にスキルを獲得してスキルレベルを2まで上げれる奴がいるとは思わなかった……」
アレンさんは帰り際に小声で言うと、明日も修行するから朝食を食べたら広場に来るようにと言われて初日の修行は無事に終わった。
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