10 / 140
第一章
第10話 【師匠・2】
しおりを挟むそうしてエルドさん達との話し合いから三日が経ち、エルドさんの仕事部屋で俺の指導者となる相手を待っていた。
事前の話し合いでは、エルドさんは一人だけ俺の事を頼めそうな人が居ると言っていた。
「き、緊張してきた……」
エルドさんが用意した指導者という事は、それなりに実力のある人だと思う。
なんていったって、エルドさんはルクリア商会の会長だ。
そんな凄い人が用意した指導者という事は、俺の予想を遥かに超えてくる人物だろう。
そんな人の貴重な時間を俺の為に使って貰うなんて、俺はやっぱりあの時しっかりと断っておけばよかったと少し後悔した。
「そこまで緊張しなくても大丈夫だぞ?」
あまりにも緊張している俺を心配に思って、エルドさんはそう声を掛けてくれた。
エルドさんの心配する声と同時に、部屋の扉をノックする音が聞こえ、俺はビクッと反応した。
そして扉が開いて外から入って来た人物に、俺は立ち上がり頭を下げて挨拶をした。
「は、初めましてアルフレッドと申します」
190㎝はありそうな高身長に、体つきもガッシリとしていた。
この辺では珍しい黒髪黒目で、長い髪を後ろで束ねていて、目つきはかなり鋭かった。
「ふむ……エルドさんが言ってた意味が何となく、分かったよ。こいつ才能の塊だな」
「ほほう。お主がそこまで言うとは、やはり凄い逸材のようだな」
男性が俺の事を褒めると、エルドさんは自分の事の様に笑みを浮かべながら嬉しそうにそういった。
「俺の名はアレン・バルザール。白金級冒険者だ。よろしくな、アルフレッド」
「は、はい。よろしくお願いします。アレンさん!」
……って、ちょっと待てよ?
白金級って冒険者の中で一番上のランクだよな?
それにアレンって名前、どこかで聞き覚えが……。
「も、もしかして〝黒衣の魔導師アレン〟さんですか!?」
「……アルフレッド。初めてだから許すが、その名ではもう二度と呼ぶな?」
「す、すみませんでした! もう二度と口にしません!」
アレンさんの二つ名を口にすると、俺は睨まれながらそう言われた。
そ、そう言えば、本人はこの名前を気に入ってないって噂も聞いた事がある。
「アレン。そこまでにするんだ。アルフレッドが怖がってるぞ、今日から仲良くやっていかないといけないのに早速、溝を作るつもりか?」
「……すまん。その二つ名は気に入ってないんだ。呼ぶなら、アレンと呼んでくれ」
エルドさんはアレンさんに対して注意すると、アレンさんは俺に対して謝罪をした。
それから俺達は立ち話を続けるのも変だろうとエルドさんが言い、ソファーに座って話しをする事にした。
「あの、エルドさんとアレンさんとはもどういう繋がりなんですか? その、凄く親しい感じだったので」
「アレンは、儂がお主の前に拾った子なんだ。あの時は、アレンが死にそうになってる所を儂が助けたから、出会った時の状況は反対だけどな」
「その節は本当に感謝してます。あの時、エルドさんに拾われなければ今の俺は無いです」
アレンさんはそう口にすると、チラッと俺の事を見てエルドさんに視線を戻した。
「エルドさんが死にそうになったと聞いて、相当焦りましたよ。何で護衛を付けてないんだって……でも、その原因が串肉だと聞いて、本当に呆れましたよ」
「歳には勝てん、昔は何本でも食えたのにの……」
エルドさんは悲し気にそう言うと、アレンさんは俺の事をジッと見つめて来た。
「さっきも言ったけど、お前は才能の塊だな。ここまでの才能の原石は見た事がない」
「あ、ありがとうございます。その、でも俺はスキルを一つしか無くて家から追い出されたので、そんな才能の塊なんて……」
「それはお前の家が馬鹿なだけだろう。エルドさんから話は聞いてるが、お前のその唯一授かった能力は唯一無二のスキルだと俺は思う。俺はこれまで沢山のスキルを見てきたが、お前の持つスキルと似たようなスキルは見た事がない」
アレンさんの言葉に俺は、なんだかむず痒く感じていると次の言葉に物凄く驚いた。
「それに……お前、神の加護も持ってるだろ?」
アレンさんの言葉に俺は驚くと、隣に座っているエルドさんも「そうなのか!?」と驚いて聞いてきた。
「俺は、人の能力の一部を見抜くスキルを持ってる。それでお前を見たら、加護を持ってると分かったんだよ」
アレンさんは続けてそう言ってきたので、俺はここが話すタイミングだなと思って、加護についてエルドさん達に話す事にした。
話を聞いたアレンさんは首を傾げていたが、俺のステータスを見せると驚いていた。
「本当にない……隠蔽系のスキルがあるとかじゃないよな?」
「俺の持ってるスキルは、【経験値固定】と先日手に入れたばかりの【剣術】の二つだけです。他は何も持ってません」
「……マジか」
アレンさんは俺の話を聞いた後、動揺していたので落ち着くまで俺とエルドさんは待つ事にした。
1,159
あなたにおすすめの小説
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる