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第二章
第73話 【動き出す者達・3】
しおりを挟むそうして俺が慰められていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
ノックした人物に対して、王様が入室の許可を出すと部屋の外から一人の青年が入って来た。
黄金に輝く金髪、燃える様に赤い瞳、170㎝を超えの身長に程よく筋肉が付いてる美形の青年。
「失礼します。父上、アルフが来たら私にも連絡が欲しいとお願いしていましたよね。どうして連絡を頂けなかったのですか?」
「……忘れてた。すまん、レオルド」
「……国の事以外となると、途端に中途半端になるの止めてください」
その青年は溜息を吐きながらそう言うと、俺の方を見て笑みを浮かべた。
レオルドと呼ばれて国王様とこんなにも親し気の青年……もしかしなくてもこの美青年が俺の知ってるレオルドなのか!?
「アルフ。久しぶりだな、また会えて嬉しいよ」
「や、やっぱりレオルドなの? えっ、大きくなりすぎじゃない?」
俺の友人であり、この国の王子レオルド・フォン・ベリアナ。
昔はこんなにも身長は無かったのに、たった数年で大きくなり過ぎじゃないか!?
「ふっ、成長期で身長がグンッと伸びたんだよ。逆にアルフの身長はあまり変わってないな」
そうレオルドは自慢気に言いながら俺に手を差し出し、俺はその手を握り握手を交わした。
それからレオルドは陛下側のソファーに座り、話し合いに参加する事になった。
「アルフが落ち込んでるみたいですけど、父上はあの事をアルフに伝えたんですか?」
「伝えてある。ノルゼニア家の事を気にしていたからな」
「そうですか……アルフ。自分のせいでって思ってるだろうけど、それは違うぞ。暗殺者を送ったのはノルゼニア家なんだから、アルフのせいなんかじゃない」
レオルドは俺が落ち込んでいる理由を知ると、真剣な表情でそう俺に言った。
「……だけど、俺がルクリア商会に行かなかったからこんな事にはならなかったでしょ」
「そうだとして。アルフは被害者な訳で自分を責める理由は無い。だって、アルフが悪い事をしたわけでもないんだから」
「そうだぞ。悪いのは全てノルゼニア家な訳で、アルフは何も悪くはない。だからそう気にするな、儂等もアルフのせいで迷惑だななんて思ったことは一度も無い」
そうエルドさん達から慰められた後、少しだけ気が張れた俺を見て陛下達は話し合いの続きをする事になった。
話し合いはかなり長時間行われ、事前に教えて貰った事が一部分で他にも沢山の悪事をしていた事を知った。
「15年間住んでいた家が、まさかあそこまで悪い家だったなんて……」
話し合い終盤、それより先は俺達には話せないと陛下から言われ、俺とレオルドは部屋から出されて別室に移動して来た。
「まあ、アルフが知らないのは仕方ないとは思うけどね。かなり上手く隠していたみたいだから、アルフやクラリスは他家との交流も無いから調べるにも調べられなかっただろうからね」
「……クラリスの事が心配だな」
「ああ、その心配は大丈夫だよ。僕の方から接触して、クラリスの周りには国が送った者達で秘密裏に守っているから」
「……え? それって、どういう事?」
クラリスの事が心配だと言うと、レオルドは突然そんな事を言い出した。
詳しく話を聞くと国はノルゼニア家の事を調べ始めた時から、クラリスを味方に引き入れていた。
そして、クラリスの従者等を秘密裏に国が送った者達で固めたと教えて貰った。
「ちなみに送ったのは影の人達だから、そう簡単にやられたりはしない人達だから心配しなくて大丈夫だよ」
「影の人達って、そんな凄い人達をクラリスが!?」
影、それは王族にだけ仕える者達の呼び名。
実力と忠誠心を持つ者達で揃えられており、裏で活動する王族の剣であり盾でもある者達の事だ。
本来、王族以外が知るような人物達では無いのだが、何故か俺は小さい頃にレオルドから紹介をされて知っている。
「いや、それなら安心だけど……よくクラリスの従者に送れたね」
「そこはまあ、クラリスがこっちの味方をしてくれたからね」
「内通者が居るからこそ出来た事って訳か……」
「そういう事だね」
レオルドはそう笑って言ったが、王族にだけ仕える〝影〟まで使われているなんてノルゼニア家は本当に終わったのかも知れないな……。
そう俺は心の中で思いながら、エルドさん達の話し合いが終わるまで待つ事にした。
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