外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

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第二章

第82話 【騒動のその後・1】

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 多くの貴族が掴まったという事件は、瞬く間に国中に知れ渡った。
 突然の出来事で混乱するかと思われたが、国は不正な税の搾取、帝国との繋がり等々、悪事の数々を隠す事無く報じた。
 そして協力者であるルクリア商会、この悪事の数々を身を挺して知らせたノルゼニア家の兄妹に対し、多くの人々は感謝をした。

「なんだか俺とクラリスが事件を知らせたみたいになってますね……」

「その方が美談として良いと、あの王が思ったのだろう。それにあながち間違いでも無いからな、アルフの存在によって今回の事件が明るみに出たが、そうでなければ今も尚帝国に国の情報が渡っていた可能性すらもあるからの」

 今回の事件の中で一番重要なのは、やはり帝国との問題であった。
 こちらには帝国とのやり取りの証拠があるが、帝国はそれらは偽物だと言い張り、自分達は関係無いと白を切っている。
 しかし、国はその対応では満足せず、今後の帝国との関係性を見直す事にした。

 また捕まった貴族家の子供達は国によって面談が行われ、事件に関わってないのであれば成人まで面倒を見る形をとるみたいだ。
 成人後に関して、領土や財産が国に返還され、名ばかりの爵位ではあるが家を継ぐ事も出来るらしい。
 ただそれまでの先代達の多くが捕まっている為、爵位を継いだとしても色々と難しい。
 その為、国で文官や兵士として働く道も用意しているみたいだ。

「それで、俺は何故王城に呼び出されたんですか……」

「さあな、今回ばかりは儂も突然の事だから分からん」

 騒動から一週間後、学園を一時的に休み騒動が収まるまで寮で暮らしていた。
 既に貴族の捕縛を終えて直ぐに、俺とエルドさんは一度王城に呼び出しを受けて、事件の詳細等を聞かされていた。
 なので今回の呼び出し疑問を抱えつつ、エルドさんと共に王城に向かっている。
 それから暫くして王城に到着すると、兵士に陛下が居る部屋まで案内された。

「エルド、貴族にならないか?」

 陛下の居る部屋に通され、俺とエルドさん、そして陛下の三人だけになると。
 突然、陛下はそんな驚く事を言い出した。

「断る」

「……だよな。まあ、そう言うと思っていたよ」

「なら、最初から言ってくるな。そもそも、前から断ってるだろ」

「その前からと今では、事情が変わったんだ」

 陛下は溜息交じりにそう呟くと、資料をバンッとテーブルの上に置いた。

「今回の事件によって、広大な管理されていない土地が出来てしまった。国が管理する場所も決め、信頼できる貴族に任せた場所もあるが、それでも人手が足りない」

「それはそうだろうな、あれだけの数の貴族。それも多くが領地を持つ者達だから、そうなる事は事前に分かっていたと思うが?」

「事前に分かっていたとしても、用意できなかったんだ……エルド、本当に無理なのか?」

「儂は商会の事で忙しい。それと、アルフに同じ頼みはするなよ? アルフは、儂の商会の者だからな?」

 先にそうエルドさんが言うと、陛下は「うっ」と頼もうとしていた事を事前に釘を刺されたのか、言葉が詰まってしまった。

「あ、アルフの気持ちはを考えたらどうだ? なあ、アルフだって貴族に戻りたいと少しは思ってるだろ?」

「いえ、特には……正直、商会での生活は貴族の頃よりも充実してますから、そんな事は一度も思ったことはありません」

 そう俺が言うと、エルドさんは笑顔を浮かべ、陛下は悔しそうな顔を浮かべた。

「人が足らん。エルド、どうにかならんか?」

「国の王がそう言ったら、儂に出来る事は無いと思うが?」

「優秀な人材を抱え込んでる癖によくいえるな……」

 陛下は睨みながらエルドさんにそう言うと、エルドさんは笑みを浮かべ「人望の差だな」と陛下を煽った。
 その煽りに対し、陛下は怒るかと思ったが、その言葉を受け止め溜息を吐いた。

「……それはそうだな。こんな事になったのも、王家が舐められた結果だ。その事については、重々承知の上だ。今回の件でもう少し、王家は威厳を出すべきだったと反省した」

「昔から言っていただろ? 馬鹿は生まれるから、押さえつける為にも力を見せつけるべきだと」

「ああ、何度も聞かされていた。それをしなかった儂の責任だ」

 陛下は反省気味にそう言うと、隣に座ってるエルドさんはそんな陛下を見て溜息を吐いた。

「……分かった。人材の方は、儂の方でも動いてみる。だから、そう落ち込むな」

「エルド……」

「困っている友を見捨てる程、儂も心は鬼では無いからな」

「エルドが友人で本当に良かった」

 そんな陛下とエルドさんのやり取りが終わると、部屋の扉をノックする音が聞こえ、外からレオルドが部屋にやって来た。

「父上、アルフを回収しに来ました」

「丁度、話の区切りも付いたところだったから大丈夫だよ。エルド、アルフを少し借りるけど良いか?」

「計画していた事だろ? どうせ今から、少し難しい話もする所だったし、アルフが居ても楽しくないだろう」

 陛下とエルドさんがそう言うと、レオルドは俺の肩に手を置き「それじゃ、行こうか」と俺は部屋から連れ出された。

「凄くタイミングが良かったけど、部屋の外から聞いてたの?」

「まあ、途中からだけどね。父上からもエルドさんから人材について協力してくれそうだったら、アルフを連れ出してくれって頼まれてたんだ」

「まあ、確かに難しそうな話だから俺が居ても意味が無いか……それで、今は何処に向かってるんだ?」

「秘密だよ。着いてからのお楽しみさ」

 レオルドは笑みを浮かべながらそう言い、俺はレオルドにそのままついて行った。
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