外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

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第二章

第81話 【代償・3】

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「アルフ君って、本当に凄いんだな。あのアリスちゃんの成績をあそこから良くするなんて」

「流石、アレンさんのお弟子さんだよ」

「ありがとうございます」

 パーティーが始まって少し経つと、大人の人達はお酒に酔い俺にそんな風に絡んできた。
 正直、俺も酒は飲める歳ではあるが最後に飲んでから大分経つし、なんならあまり好きじゃない。
 付き合い程度に今飲んでいるが、そろそろきつくなって来たな……。

「こらっ、お前達。アルフが凄いのは分かるが、無理に酒を飲ませるな」

「「すみませ~ん。商会長!」」

 俺に絡んでいた人達はエルドさんに注意されると、サーと俺の元から離れて行った。

「すまんな、酒癖の悪い者達が居た事を忘れていた。体調は大丈夫か?」

「ちょっと、酔いが回ってきましたけど大丈夫です。それより、先程からアリスの姿が見えませんけど、何処か行ったんですか?」

「んっ? アリスなら、ほらあの隅っこに居るぞ」

 エルドさんは俺の質問に、パッとアリスの居場所を教えてくれた。
 エルドさんから教えられた方をジッと見ると、確かにそこにアリスは居た。

「さっきまで気配が全く感じられませんでした……」

「あの子の特技だからな。主役ではあるが、目立ちたくないとアリスが言ったからな、無理に表に出てこなくても良いと言ったんだ」

「まあ、アリスはこういうのは嫌いそうですしね」

  そうエルドさんと話しをして、それからもルクリア商会の人達とパーティーを楽しんだ。
 その日は夜遅くまで俺はパーティーを楽しみ、翌日は遅刻ギリギリで学園に到着した。
 ……やっぱり、視線感じるな。

「アルフ君、おはよう。やっぱり、凄く噂になってるみたいだね」

「そうみたいだね。大人しく過ごしてるつもりなんだけど、なんだか注目ばかり集めてる気がするよ」

 朝、教室に入るとレインから話しかけられ、俺は仕方ないと言う雰囲気を出しつつそう言った。

「取り合えず、本当に暫くは大人しく過ごすつもりだよ。まあ、試験も終わって、これ以上は注目を浴びる事はないだろうからね」

「そうだけど、なんだかアルフ君って静かに暮らす事って出来そうにないよね」

「薄々感じてるけど、頑張るつもりだよ……」

 レインから薄々感づき始めてる事を言われた俺はそう言い、大人しく学園生活を送る事を誓った。

「遂に国が動いたんですね」

「うむ、昨日こちらにも連絡が入った。アルフを商会から出すなと言われた」

 試験結果の発表から数日後、休日になる前日に学園から帰宅すると、国が動く事をエルドさんから告げられた。

「分かりました。まあ、今までも師匠に連れられて外に出た以外は自分からは出ない様にしていたので、あまり日常は変わりませんけどね」

「そうだな、アルフにはもう随分とそんな生活をしてもらってるな。すまないな、謹慎生活の時と同じようにあまり自由な生活を送らせてやれなくて……」

「いえ、今の生活は楽しいですから大丈夫ですよ。友達もいるし、師匠も時間がある時は来てくれますから、謹慎生活は辛かったですけど今の生活は全く辛く無いですよ」

 申し訳なさそうにしたエルドさんに対し、俺は自分の本音をそう伝えた。

「本当にアルフは良く出来た者だな、アルフにこれをいうのもあれだが、あんな家からこんな好青年が生まれたなんて本当に奇跡だな」

「それ前にも別の人から言われました」

 エルドさんの言葉に俺は笑いながらそう言い、二日間どう過ごそうかなと考えながらアリスの魔法訓練を行った。
 そしてその日は、これから家がどうなるかが気になり、中々眠りにつく事は出来なかった。

「アルフ君、やっぱりお家の事が気になるの?」

 翌日、アリスの魔法訓練をしていると、俺が集中してない事に気付いたアリスはソッと俺にそう聞いて来た。

「うん。やっぱり、どうなるんだろうって気になるかな。家から追い出された身だから、もう俺には関係ない事なんだけど、やっぱりなんだかんだ育てて貰った家だからね」

「そうだよね。悪さをしたからお家が無くなるって聞いたら、どうしても気にはなるよね」

 アリスは俺の話を聞くと、自分の事の様に心配してくれた。
 それから結局、その日は一日家の事が頭にちらつき、集中しようにも中々集中出来なかった。
 それは次の日もそうで、朝から訓練はしていたが、中々集中する事は出来なかった。

「アルフ君、エルドさんが呼んでるよ」

「ッ! はい。分かりました。ありがとうございます。ごめん、アリス。ちょっと行ってくる」

 お昼過ぎ、商会の方が俺を呼びに来て、俺はアリスにそう言ってエルドさんの仕事部屋へと向かった。

「無事、ノルゼニア家を含めた悪事に関係していた家全ての者達を捕らえたと先程、王家から報告が来た」

「凄いですね。たった一日半でもう全部の家の者達を捕らえたんですか?」

 正直、数日は学園を休む事になりそうだと覚悟していたが、まさかの一日半で全部を捕まえたなんて凄いな……。

「本来であれば、もっと時間が掛るみたいだが今回は場合、相手は絶対にバレてないと思って油断していたみたいだ。逆にこちら側は、念には念を入れて準備万端で突撃したから、簡単に全部捕らえたと報告されたよ」

 なんとも呆気ない終わり方だな、長年悪事をしていて真面な考えをしていなかったのだろう。
 その後、エルドさんからはまた後日、王城に呼ばれる事になるかもしれないと伝えられた。
 その日の夜、俺は夢に両親や親族の人達が出て来た。
 助けてくれ、許してくれ、等と叫んでいた。

「俺はもしかしたら、あの人達にこんな事を言って欲しいのか?」

 特に家の事は思っても無いと思っていた俺だが、まさか心の奥底ではこんな事を願っていたのか?

「……家の事は断ち切ってると思い込んでいただけで、断ち切れてなかったみたいだな」

 こんな夢を見るという事が何よりも証拠だ。
 俺はそう考え、頭の中で家の事を改めて断ち切る事にした。
 すると、目の前で叫んでいた元家族は一人一人消え始めた。

「さようなら、父さん母さん。生んでくれた事、育ててくれた事、そしてクラリスをこの世に誕生させてくれた事だけは感謝してるよ」

 最後に残った元両親に対し俺はそう告げ、今度こそ心から家の事を断ち切った。
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