外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

文字の大きさ
92 / 140
第二章

第92話 【長期休みの始まり・2】

しおりを挟む

 あの後、訓練は真面目に受けたアリスだったが、帰宅する時の見送りに来たエルドさんを完全に居ない者として扱っていた。
 今回ばかりはエルドさんが悪いと、全員が認識している。
 その為、アリスに注意する人物は居らずアリスは俺達にだけ笑顔を向けて馬車に乗った。
 正直、この状態のエルドさんにリサ達の泊りの件について話そうか悩んでいると。
 そんな俺の様子に感づいたエリスさんが、膝から崩れ落ちて落ち込んでるエルドさんを放置して、俺に話しかけて来た。

「アルフ君、何か話したい様子だけど何かあったのかしら?」

「実は長期休みの宿題をやる為、クラスの人達と合宿を商会の寮でさせてほしいなと思っていたんですけど……」

「勉強合宿、私は良いと思うわよ。クラスの子達とも大分喋れるようになってきてるから、休みの期間にそれを失うのも惜しいと思うと思うからルクリア家としては賛成だと思うわ」

「ですけどやっぱり商会の寮を使う訳ですし、エルドさんの許可は必要ですよね?」

 そう俺が聞くと、エリスさんは「大丈夫よ」と笑みを浮かべて言った。

「今のエルド様は判断できるような状態では無いわ。こういう場合、副会長である私の判断で事を動かしてもいいようになっているのよ」

「良いんですか?」

「ええ、それに今回に関してはエルド様の自業自得で、自分でどうにかするまでは周りは味方にならないという体勢を取ってるから、エルド様の判断を待つなら数日は掛るわよ?」

 数日は掛かるとなると、折角良い感じにアリスと皆が打ち解けてるのに溝が出来る可能性もあるな……。

「エリスさん、ありがとうございます。いつ頃から商会に呼んでも大丈夫でしょうか?」

「アルフ君のそういう判断が早い所、私は好きよ」

 エルドさん、ごめんなさい! そう俺は、心の中で謝罪をした。
 その後、エリスさんから合宿を許可をもらった俺は、今から手紙は出せないのでクラリスと一緒に食堂に夕食を食べに向かった。

「訓練中に少しだけ聞いたけど、兄さんはアリスちゃんの事をどう想ってるの?」

 訓練期間を経て、アリスとクラリスは大分仲良くなった。
 一歳年齢が違うがお互いを〝ちゃん〟付けで呼ぶまで仲良くなっている。

「それは異性として、それとも友人としてか?」

「それは勿論、異性として」

「特別な感情はそこまで抱いてないかな? ただエルドさんの孫で、世話になってるルクリア家の大切なお嬢様であるから大切にする存在と考えているよ」

 クラリスのに質問に対して、俺はアリスに対して想ってる事を本音で伝えた。

「へ~、意外だね。兄さんがあんなに大事にしてるから、てっきり好意を抱いてるのかと思ってた」

「そもそもな話、異性を好きになるという感情がよく分からないからな……これに関してはクラリスもそうだろ?」

「それは、まあ……」

 俺もクラリスもノルゼニア家の教育方針のせいでか、そっち系の事はあまり考えない生活を送って来た。
 普通の貴族であれば、幼い頃に政治的な考えのもとで婚約者が決められたりするが、俺達に関しては友人すらも自由に作れなかった。
 その為、人に関しての感情が一部欠如してる事は俺とクラリスは互いに認識している。

「まあ、でもアリスを大切にしないといけないって自分の意思で動いてるな」

「それが異性として好きなのかは、兄さんでも分からないって感じ?」

「そういう事だね。まあ、俺がアリスを好きになったとしても立場がお互いに違うからな。俺はルクリア家に雇われてる冒険者で、アリスはその家のお嬢様だからな」

「多分、そんな事は思われてないと思うよ? ルクリア家というか、ルクリア商会ではそういう壁を感じないもん」

 俺の言葉にクラリスはそう言い、俺もそれに関しては同意見だ。

「俺もそう思ってるよ。だけど、世間からしたらそう思われるって話だよ。さてと、この話はここで終わりだ。クラリスもアリスに今日みたいな事は聞いたら駄目だぞ? 嫌われても、間を取り持てないかもしれないからな」

「は~い」

 その後、食事を終えた俺は風呂に入り、部屋に入って少し時間を潰していると、勉強をしにクラリスが部屋にやって来た。

「そう言えば、さっきの合宿の話だけど。レオルド様は誘わなくて良かったの?」

「レオルドは休みの間は、家族と旅行とか行きそうと思って誘わなかっけたど誘った方が良かったかな?」

「多分、誘われないとレオルド様は落ち込むと思うよ?」

 アリスのその言葉に俺は、明日リサ達に合宿の件を伝える前にエリスさんに確認をしようと考えた。
 そうしてクラリスの勉強に付き合った後、俺はベッドに横になり眠りについた。
 そして翌日、朝食を食べた後に俺は商会の方へと行き、エリスさんの所へと話を聞きに行った。

「王子も合宿にね。ルクリア商会と王城は昔から繋がりもあるし、怒られる事は無いとは思うけど、流石にそのレベルは私だけの判断では厳しいわね。でも、今日もエルド様は放心状態なのよね……」

「昨日帰った後、アリスと仲直り出来なかったんですか?」

「そうみたいよ。今回はかなりアリスちゃん怒っていて、昨日からエルド様と口も一切聞いてないみたいなのよ」

「マジですか、アリスとエルドさんの関係を直さないとルクリア商会の仕事にも支障とかって……」

 そう俺は最悪な事を想像して口にすると、エリスさんは不安な表情を浮かべた。

「今の所は大丈夫だけど、これが続くと分からないわね……」

「力になれるか分かりませんが、俺の方からアリスに話をしてみます。もしそれで解決の兆しが見えたら、エリスさん達も手伝っていただけますか?」

「勿論よ。エルド様が戻らないと駄目な仕事も沢山あるから、ルクリア商会総出で手伝うわ」

 こうして俺はエリスさんと共に、〝ルクリア家・孫と祖父の仲直り大作戦〟を計画して、ルクリア商会面々も巻き込み話し合いを行った。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...