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第二章
第92話 【長期休みの始まり・2】
しおりを挟むあの後、訓練は真面目に受けたアリスだったが、帰宅する時の見送りに来たエルドさんを完全に居ない者として扱っていた。
今回ばかりはエルドさんが悪いと、全員が認識している。
その為、アリスに注意する人物は居らずアリスは俺達にだけ笑顔を向けて馬車に乗った。
正直、この状態のエルドさんにリサ達の泊りの件について話そうか悩んでいると。
そんな俺の様子に感づいたエリスさんが、膝から崩れ落ちて落ち込んでるエルドさんを放置して、俺に話しかけて来た。
「アルフ君、何か話したい様子だけど何かあったのかしら?」
「実は長期休みの宿題をやる為、クラスの人達と合宿を商会の寮でさせてほしいなと思っていたんですけど……」
「勉強合宿、私は良いと思うわよ。クラスの子達とも大分喋れるようになってきてるから、休みの期間にそれを失うのも惜しいと思うと思うからルクリア家としては賛成だと思うわ」
「ですけどやっぱり商会の寮を使う訳ですし、エルドさんの許可は必要ですよね?」
そう俺が聞くと、エリスさんは「大丈夫よ」と笑みを浮かべて言った。
「今のエルド様は判断できるような状態では無いわ。こういう場合、副会長である私の判断で事を動かしてもいいようになっているのよ」
「良いんですか?」
「ええ、それに今回に関してはエルド様の自業自得で、自分でどうにかするまでは周りは味方にならないという体勢を取ってるから、エルド様の判断を待つなら数日は掛るわよ?」
数日は掛かるとなると、折角良い感じにアリスと皆が打ち解けてるのに溝が出来る可能性もあるな……。
「エリスさん、ありがとうございます。いつ頃から商会に呼んでも大丈夫でしょうか?」
「アルフ君のそういう判断が早い所、私は好きよ」
エルドさん、ごめんなさい! そう俺は、心の中で謝罪をした。
その後、エリスさんから合宿を許可をもらった俺は、今から手紙は出せないのでクラリスと一緒に食堂に夕食を食べに向かった。
「訓練中に少しだけ聞いたけど、兄さんはアリスちゃんの事をどう想ってるの?」
訓練期間を経て、アリスとクラリスは大分仲良くなった。
一歳年齢が違うがお互いを〝ちゃん〟付けで呼ぶまで仲良くなっている。
「それは異性として、それとも友人としてか?」
「それは勿論、異性として」
「特別な感情はそこまで抱いてないかな? ただエルドさんの孫で、世話になってるルクリア家の大切なお嬢様であるから大切にする存在と考えているよ」
クラリスのに質問に対して、俺はアリスに対して想ってる事を本音で伝えた。
「へ~、意外だね。兄さんがあんなに大事にしてるから、てっきり好意を抱いてるのかと思ってた」
「そもそもな話、異性を好きになるという感情がよく分からないからな……これに関してはクラリスもそうだろ?」
「それは、まあ……」
俺もクラリスもノルゼニア家の教育方針のせいでか、そっち系の事はあまり考えない生活を送って来た。
普通の貴族であれば、幼い頃に政治的な考えのもとで婚約者が決められたりするが、俺達に関しては友人すらも自由に作れなかった。
その為、人に関しての感情が一部欠如してる事は俺とクラリスは互いに認識している。
「まあ、でもアリスを大切にしないといけないって自分の意思で動いてるな」
「それが異性として好きなのかは、兄さんでも分からないって感じ?」
「そういう事だね。まあ、俺がアリスを好きになったとしても立場がお互いに違うからな。俺はルクリア家に雇われてる冒険者で、アリスはその家のお嬢様だからな」
「多分、そんな事は思われてないと思うよ? ルクリア家というか、ルクリア商会ではそういう壁を感じないもん」
俺の言葉にクラリスはそう言い、俺もそれに関しては同意見だ。
「俺もそう思ってるよ。だけど、世間からしたらそう思われるって話だよ。さてと、この話はここで終わりだ。クラリスもアリスに今日みたいな事は聞いたら駄目だぞ? 嫌われても、間を取り持てないかもしれないからな」
「は~い」
その後、食事を終えた俺は風呂に入り、部屋に入って少し時間を潰していると、勉強をしにクラリスが部屋にやって来た。
「そう言えば、さっきの合宿の話だけど。レオルド様は誘わなくて良かったの?」
「レオルドは休みの間は、家族と旅行とか行きそうと思って誘わなかっけたど誘った方が良かったかな?」
「多分、誘われないとレオルド様は落ち込むと思うよ?」
アリスのその言葉に俺は、明日リサ達に合宿の件を伝える前にエリスさんに確認をしようと考えた。
そうしてクラリスの勉強に付き合った後、俺はベッドに横になり眠りについた。
そして翌日、朝食を食べた後に俺は商会の方へと行き、エリスさんの所へと話を聞きに行った。
「王子も合宿にね。ルクリア商会と王城は昔から繋がりもあるし、怒られる事は無いとは思うけど、流石にそのレベルは私だけの判断では厳しいわね。でも、今日もエルド様は放心状態なのよね……」
「昨日帰った後、アリスと仲直り出来なかったんですか?」
「そうみたいよ。今回はかなりアリスちゃん怒っていて、昨日からエルド様と口も一切聞いてないみたいなのよ」
「マジですか、アリスとエルドさんの関係を直さないとルクリア商会の仕事にも支障とかって……」
そう俺は最悪な事を想像して口にすると、エリスさんは不安な表情を浮かべた。
「今の所は大丈夫だけど、これが続くと分からないわね……」
「力になれるか分かりませんが、俺の方からアリスに話をしてみます。もしそれで解決の兆しが見えたら、エリスさん達も手伝っていただけますか?」
「勿論よ。エルド様が戻らないと駄目な仕事も沢山あるから、ルクリア商会総出で手伝うわ」
こうして俺はエリスさんと共に、〝ルクリア家・孫と祖父の仲直り大作戦〟を計画して、ルクリア商会面々も巻き込み話し合いを行った。
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