外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

第二章

第94話 【長期休みの始まり・４】

　エルドさんの部屋に入ると、エルドさんは心ここに有らず状態でボーとしていた。
　そんなエルドさんの近くでエリスさんはテキパキと作業をしている。
　そして俺が部屋に入って来たのに気が付いたエリスさんは手を止め、部屋に来た理由を聞いて来た。

「はい。実はアリスとエルドさんの仲直りが出来そうなんです」

「ッ！」

「それは本当なの！？」

　俺の言葉にエルドさんは体をビクッと反応させ、エリスさんも驚いた声を出して反応した。
　俺はそんな驚く二人に、先程広場でアリスと話した内容を伝えた。

「アルフ、本当にありがとう。命を助けてもらった次は、孫との仲も取り持ってくれるなんて……本当に儂はアルフと出会えて本当に良かった」

「今回もアルフ君に救われたわね。本当にありがとう」

　エルドさん達は俺の話を聞くとそう言って、口裏は合わせてくれると約束をした。

「アルフ。今回の件、改めてだが本当にすまなかった。折角、アリスと仲良くしてくれてるのに揶揄うような事を言ってしまって」

「いえ、その件については俺自身そこまで気にしてませんから、顔を上げてください」

　改めて謝罪をしたエルドさんは、俺に深々と頭を下げ謝罪を行った。
　俺はそんなエルドさんに、そう言って顔を上げて貰った。
　その後、レオルドの件についても確認をした俺は、訓練の合間で来てるので急いで広場へと戻る事にした。

「アルフ君、長かったみたいだけど具合でも悪いの？」

「いやっ、ちょっと戻る途中でエリスさんとバッタリ会って、少しだけ話をしていたんだ。それで遅れちゃったんだよ」

「そうなんだね。それなら、良かった」

　アリスは俺が戻ってくるのが遅くて心配していたが、咄嗟に思いついた理由で乗り切ることが出来た。
　今まで特に考えた事は無かったけど、もしかしたら俺って〝嘘〟が上手いのかもしれない。
　そんな事を思いながら、俺は訓練を再開した。

「そうだ。レオルドに朗報だよ。合宿の件、エルドさんに話をしたら来ても良いってさ」

　訓練を終えた後、レオルドが帰宅準備をしてる際に合宿の件について報告をした。

「それは良かった。僕だけ仲間外れにされるところだったよ」

「でも、その合宿は俺のクラスの人達も参加するけど、それでも大丈夫？」

「うん。アルフの友達なら、僕も仲良くしておきたいからね」

　レオルドはそう言うと、迎えに来た馬車に乗って去って行った。
　そしてアリスはと言うと、広場での約束通りエルドさんと仲直りをして、今日は早めにエルドさんも帰るみたいだ。

「兄さん、何とか全部上手く行って良かったね」

「ああ、本当にな……正直、エルドさんにはこれからは言葉には気を付けて欲しい所だよ」

　俺のその言葉にクラリスは「それはそうだね」と言い、俺とクラリスは食堂へと夕食を食べに向かった。

「アルフ。今回はお手柄だったみたいだな」

「あれ、師匠？　商会に居たんですね。てっきり、まだお家に居るのかと思ってました」

　師匠は少し前からリアナさんと赤ちゃんの面倒を見る為、休暇に入り今はウィストの街で暮らしている。

「少し顔見せに来ただけだ。エルドさんがアリスを怒らせたって重大事件が起きた事は俺の耳にも入ってな、出来る事は無いが心配で来てみたらアルフが解決したって聞いてな」

　師匠はそう言うと、俺の頭に手を置き「よくやったな」と褒めてくれた。

「俺はそこまで難しい事はしてませんよ。アリスとちょっと話をして、エルドさんと仲直りしてもらっただけなので」

「それが難しいんだよ。あのアリスがあそこまで怒ったのは初めてで、商会の奴等が大慌てだったって聞いたぞ？」

　確かに話し合いをするレベルで商会の人達は、物凄く慌てていた。

「兄さん、ここは素直に受け取るのが正解だと思うよ」

「そうだぞ、アルフは直ぐ謙遜して難しい事はしてないと振舞うが、他の者からしたら物凄い事をしてくれたんだからな」

　クラリスと師匠からそう言われた俺は、「分かりました」と言って賛辞を受け取った。
　それから久しぶりに師匠と楽しく食事をした後、部屋に戻りクラリスの勉強に付き合った。
　そして勉強が終わり、クラリスを扉まで見送った俺は寝室に入り、ベッドに横になると一瞬で眠りについた。