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第二章
第103話 【冒険者活動・1】
しおりを挟む師匠の紹介してくれた鍛冶屋は、少し表通りから路地に入って少し進んだ所にあった。
外から見た感じ、入り辛い雰囲気が漂っていた。
「し、師匠。ここが本当に師匠のお世話なってる鍛冶屋なんですか?」
「店の雰囲気が少し怖い感じがすると思うが、ここの店主の腕は本物だ。気に入った相手にしか装備を作らない、偏屈な奴だけどな」
「誰が偏屈だ」
師匠と話していると、店の扉が開いて中からドワーフ族のおじさんが出て来た。
背丈は俺よりも少し小さいが体格はガッチリとしていて、右手には仕事道具と思わしきハンマーを持っていた。
「そいつか? 前に言ってた弟子ってやつは?」
「初めまして、師匠の弟子のアルフレッドと申します」
「ほ~、弟子はちゃんと礼儀正しい奴なんだな。俺はドワーフ族の鍛冶師ドゥ・ヴォルグだ。よろしくな」
鍛冶師の人と自己紹介を互いにし、ゴツゴツした手を差し出された俺はその手を握り握手を交わした。
「それで、何でヴォルグは外に出て来たんだ? この時間はいつも鍛冶場にこもってるだろ」
「俺だって偶には、外の空気を吸いに外に出るんだよ。丁度、外に出ようと思ったらお前等の声が聞こえんだ。それで、話を少し聞いていたが俺に弟子の装備を頼みに来たのか?」
「そうだ。お前の腕は俺の知る鍛冶師の中でトップだからな、弟子の為に良い鍛冶師を紹介するのは師匠の務めだろ?」
「冒険者の師弟関係なんて知らんが……まあ、アルフなら良いだろう。見た感じ、ちゃんと努力出来る奴みたいだからな」
それから店の中へと入ると、早速俺の身体測定が始まった。
「あの、そう言えばさっき〝努力出来る奴だから良い〟と仰ってましたが、何か理由があるんですか?」
「簡単な話だ。俺は努力が出来ない奴には、俺の装備を使わせたくないんだ。偶にいるんだよ。装備だけいい物を使って、自分の力が無い奴が……俺はそういう奴等が嫌いなんだ」
ヴォルグさんの考え、何となくだけど俺も理解は出来る。
装備だけで力を付けようと思えば、お金を沢山使えばある程度の強さは保証できる。
だけどそんな事をして得た力は、俺もちょっと嫌いだ。
「その考え、俺も分かります。装備だけよくして自分自身が強くならないと、いざという時に戦えませんからね」
「おっ、アルフは分かってる奴だな。やっぱり、俺の勘は正しかったみたいだな」
そうヴォルグは笑顔を浮かべて言うと、身体測定が終わったので武器を見て回る事にした。
「防具はオーダーメイドになるが、武器の方はどうする? こっちもアルフに合わせた武器を作る事も出来るぞ?」
「う~ん……師匠。どうしたらいいですかね?」
「まあ、俺としては全部オーダーメイドで作った物が良いと思う。特に剣に関して、直ぐに変えておいた方が良いからな。金はあるだろ?」
「そうですね。お金はあるんですけど、いきなりこんな沢山買い物して大丈夫ですかね……」
今までの人生で個人で持ってるお金は今が一番多い。
しかし、その貯金の殆どを装備に投資しようとしてる現状に対し、少しだけ迷っている。
「今のアルフはどちらかと言えば、本人は強いのに装備が劣ってる状態だ。さっき、身に余る装備を使うのは駄目だと言っていたが、悪すぎても逆に装備の状態が直ぐに悪くなるから、俺は買っておいた方が良いと思うぞ」
「店主だからって意見じゃないが、確かにアルフの剣の状態はもう大分使い込まれてるから、新しいのに変えておいた方が良いだろう。それに、上位の冒険者は予備の装備も持ってる奴のが多いから、二つ武器を買うのも良いと思うぞ」
師匠とヴォルグさんからそう言われた俺は、少し迷ったが「わかりました」と返事をした。
それから俺は、装備一式と剣をオーダーメイドで注文をして、二本目の予備の剣は店に売られてる剣を購入する事にした。
「注文の武器の方だが、そっちも片手剣で良いんだよな?」
「はい。片手剣でお願いします」
「分かった。盾はどうする? 本来、剣士は片手剣を使う場合は盾を装備しているが」
「う~ん……俺の場合、魔法も使って戦うので盾は必要ないと思うんですけど、師匠はどう思いますか?」
今の俺の戦い方から盾は必要では無いが、一応師匠に確認をした。
「そうだな、アルフの戦い方だと盾はいらないな。その分、防具の方に防御を任せる形になるな」
「了解。魔法使いって事も考慮して、ちょっと考えてみるよ」
それから装備の代金を払い、俺と師匠は店を出た。
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