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第二章
第102話 【次の目標へ・4】
しおりを挟むそれから場所を移動して、俺とリアナさんは調理場へとやって来た。
一般家庭の調理場にしたら広い作りで、二人が作業しても邪魔にならなさそうだった。
「それでどうやって差を測るんですか? 同じ料理を作って、師匠に味見してもらう感じですか?」
「そうね。沢山作っても三人居るから、残る事はないと思うわ。それで作る料理なんだけど、アルフ君が知らない料理だと不公平になっちゃうから、いつも作ってる料理で差を測ろうと思うわ」
リアナさんはそう言うと、俺が普段作り慣れてる料理は何か聞かれた。
「普段作ってる料理と言えば、卵焼きとかハンバーグとかですかね? スープ系は弁当で持って行くのは不便なので、あまり作った事は無いですけど野菜スープなら作れます」
「それじゃ、その3つにしましょうか。夕食には丁度いい品数ね」
「わかりました」
それから食材で差が出ない様にと、用意されてた食材を作って料理を始めた。
料理を作りながら、チラッとリアナさんの方を見たが素早い動きでテキパキと作業をしている。
正直、スキルレベルは10あるがあそこまで素早い動きでの作業は、今の俺にはまだ難しい。
「アレン君、出来たわ」
「師匠。お待たせしました」
あれから料理を作り終えた俺とリアナさんは、全く同じ皿に盛りつけてどっちがどっちを作ったのか師匠が知らない状態で持って行った。
「どちらとも凄くおいしそうだな……」
「美味しいって思った方を選んでね。私に気を使うとかはなしよ?」
「分かってる。リアナのプライドを傷つけない為にも公平に審査する」
師匠はそう言うと、二つ並べて置かれた料理の右側の皿に盛りつけられた料理から食べ始めた。
「うん。美味しいな、味もしっかり整っているな」
師匠は右の皿の料理を一口ずつ食べ終えると、今度は左の皿の料理を食べ始めた。
そして一皿目同様に「美味しい」と口にすると、二つの料理を見比べて数秒間沈黙となった。
「正直な気持ちとしては、両方とも本当に凄く美味しい。これをどっちが優秀か比べるのは、愚行に等しい行為だが……リアナは決めて欲しいんだよな?」
「ええ、お願い」
師匠は最終確認をリアナさんにすると、俺の方を見て「アルフも良いか?」と聞かれた。
「はい。俺も自分の料理の腕がどこまで成長してるのか見極めたいので、よろしくおねがいします」
「分かった」
俺とリアナさんの気持ちを聞き終えた師匠はそう言うと、スッと右の皿を持った。
「俺個人としてはこっちの料理が美味しかった」
「ッ!」
右の皿、それはリアナさんが作った料理だ。
選ばれたリアナさんは、ガッツポーズをした。
「負けましたか……ここ最近の中じゃ、一番の自信作だったんですけど」
「いや、正直マジで誤差だ。この勝負の敗因は、アルフの経験不足なだけだと思う。確かにスキルレベルは10で、ある程度の味の保証などは出来るが、長年料理人として経験を積んできたリアナには一歩及ばなかった」
「何となくこうなる未来は見えてました。スキルがいくらレベルが高くても、本人の技量が無ければ意味が無いですからね」
スキルレベルが高い事は良い事だが、それで強くなったと錯覚すれば意味がない。
そのスキルを使いこなせる技量が無ければ、ただの宝の持ち腐れだ。
「でも、今回はギリギリだったわ……アルフ君に負けない為にも仕事に復帰したら、沢山頑張らないといけないわね」
リアナさんはそう言うと、それから夕食を食べて風呂に入った。
そして俺は借りてる部屋のベッドに横になると、今日は疲れる事が多かったからか横になると直ぐに眠りについた。
「えっ、新しい装備ですか?」
「今、使ってるの大分使い込んでるだろ? 防具はまだいいとしても、剣の方は新しいのを買った方が良いと思うぞ」
翌朝、朝食を食べ終えて依頼に行こうかなと思っていると、師匠からそんな事を言われた。
確かに結構な期間、迷宮では基本的に魔法で敵を倒していたが、剣もそれなりに使っていた。
「そうですね。冒険者にとって、装備は仕事道具ですしね」
「そういう事だ。それで装備の代金だが商会に連絡したらエルドさんが出してくれると思うけど、自分のお金で買うか?」
「はい。自分のお金で買わせてください。ずっと貯金してるので、装備一式なら購入できる位には溜まってると思います」
寮住まいで支出がほぼ無い俺は、かなり貯金が溜まっている。
それから装備を買うと師匠に言うと、この街に師匠の世話になってる鍛冶屋があるらしいのでそこに向かう事になった。
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