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第二章
第111話 【狂剣の教え・1】
しおりを挟む翌日、いつもより早い時間に起きた。
朝食まで時間が少しあるなと思った俺は、運動をしようと広場に向かった。
「あれ、フローラさん? こんな時間から訓練をしてるんですか?」
広場に着くと、先に誰か訓練をしていた。
そしてその人物が、今日から俺の剣術の師匠となるフローラさんだった。
「アルフレッド君こそ、こんな時間から訓練に来たの?」
「はい。いつもより早くに起きたので体を動かさそうかなと、フローラさんもですか?」
「私の場合は暇潰しよ。ほらっ、私って今は謹慎中でしょ? だから、外に遊びに行けないから暇で暇で退屈なのよ。部屋で休んでても、感覚が鈍るだけだからこうして体を動かしてるのよ」
フローラさんはそう言うと、訓練用に振っていた剣をベンチに置いてタオルで汗を拭いた。
「ねえ、昨日言おうと思ってたんだけど、これからは皆と同じようにアルフ君って呼んでもいいかしら?」
「はい。良いですよって、別に許可なんていりませんよ。これからは、フローラさんは俺の剣の師匠ですから、逆に俺は何て呼べばいいですかね? 既にアレンさんを〝師匠〟と呼んでますから、一緒だと分かり難いですよね……」
「そうね……まあ、私が後から師匠になった訳だし、これまで通り〝フローラさん〟で良いわよ。……ただアレン君同様にこれからは二つ名は言わないで頂戴ね?」
「はい。分かってます!」
師匠、そしてフローラさんは自分達に付けられた二つ名を嫌っている。
まあ、フローラさんに関しては女性なのに〝狂剣〟なんて物騒な名前だから嫌なのは分かる。
でも、師匠は何であの二つ名を嫌ってるんだろう?
そんな俺はふと疑問を抱いたが、それからフローラさんと一緒に朝食まで軽く運動をする事になり、考えるのを止めた。
「あら、アルフ君? 朝からかなり汚れてるわね。もう訓練をしてきたの?」
「実はちょっと運動するつもりだったんですけど、普通に訓練しちゃってました。お腹かなり空いたんですけど、おかわりできますか?」
「沢山あるから、心配せず沢山食べていいわよ!」
朝の運動は予想していたよりも真剣にやり、普通に疲れた俺は朝食を食べに食堂にやって来た。
食堂のおばちゃんにおかわりが出来るか最初に確認をしてから朝食を食べ始めた俺は、それから四回もおかわりをした。
「若いっていいわね。朝からそんなに食べれるなんて」
「運動したおかげですよ。フローラさんも俺よりも運動してたのに、おかわりはしなくても大丈夫なんですか?」
「一応、これでも女だから体形を気にしてるのよ。謹慎中だから真面に動けないのに、普段通り食べてたら太っちゃうと思うから我慢してるのよ」
フローラさんはそう言いながら、俺が四回おかわりしてる間、ちびちびと食べていた朝食を食べ終え、物足りなさそうな表情をしていた。
「でも今日からは俺の訓練をしてくれるんですから、もう少し食べても大丈夫なんじゃないですか? 昨日みたいに模擬試合もするんですよね?」
「……確かに、そうね。今日からはおかわりを一回だけ許そうかしら」
俺の言葉にフローラさんは少しだけ希望を抱きつつそう言うと、それから一回だけおかわりをして満足そうにしていた。
その後、朝食を食べ終えた俺達はそのまま一緒に広場へと戻って来た。
朝食後という事もあり、軽く準備運動を始めてから訓練を始めた。
「まず、アルフ君には私の剣術とエリスさんの剣術の違いについて教えるわね」
「はい。よろしくおねがいします」
訓練前にまずは、フローラさんとエリスさんの剣術の違いについて俺は教えられた。
エリスさんの剣術は、身体能力を生かした柔軟な剣技。
敵の攻撃の重心をずらす等といった小技を多用する様な剣術。
その逆にフローラさんの剣術は、ベースはエリスさんの使ってる剣術ではあるがこちらは攻撃重視の剣術。
小技は使わず、相手に隙を生じさせて一気に潰すと言った攻撃的な剣術となっている。
「私の今の予想だけど、アルフ君は両方の剣術を使いこなせると思うわ。それこそ、私の剣術とエリスさんの剣術の良い所を集めた新たな剣術を作れると思うわ」
「そ、そうですか?」
「ええ、私がこんな攻撃重視の剣術になったのは、性格的にエリスさんの剣術のままだと合わなかったのよ。でもアルフ君は昨日戦ってみた感じ、そんな事は無かったわ。だから目標は、私の剣術とエリスさんの剣術を合わせた新たな剣術を身につける事ね。かなり厳しいと思うけど、やれる?」
「はい! 頑張ります! これから、よろしくおねがいします!」
俺は改めてフローラさんに対し、頭を下げながらそう言った。
それから、俺は早速フローラさんの使う剣術を教えて貰う事になった。
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