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第18話

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 「さて、儂の探知魔法じゃと帝国の兵士はまだそこまで整っていないようじゃのう。数年間準備出来る期間があったんじゃから既に攻めれる体勢を取られておると思ったんじゃが、これは好都合じゃのう」

「そうなの? 爺ちゃん、帝国の兵士ってどの位居るの?」

「そうじゃのう。まあ、精々300か500位じゃろうな、それに見た所帝国の将軍クラスは1人みたいじゃ、本当に好都合じゃわい」

 爺ちゃんは嬉しそうにそう言った。というか、絶対に爺ちゃん俺の訓練とかいいつつ自分が戦いたいんだろうな……

「ああ、そうじゃった。クリフ、今のステータス少し見させてくれないか?」

「いいよ」

 俺は爺ちゃんに【偽装】を付けずに普通に見せた。爺ちゃんは俺のステータスを見ると「ふむふむ、3歳児とは思えない強さじゃのう。これだけあれば、帝国兵士の相手は出来るじゃろうが念の為、奴を呼ぶかのう」と言って、王都を出た時に使った召喚魔法を使った。

「……出でよ。【ヴァルス】」

「あいあいさ~! おっひさっさ~、主様」

「うむ、ヴァルス元気じゃったか?」

「元気元気~、それで今回は何の目的で呼んだんですか~?」

「ああ、ちと孫の事を見ててくれ、この子は転生者じゃからな前の世界じゃと人は殺せない世界だったらしいから念の為ヴァルスについてもらいたいんじゃ」

「なるほど~、ボク転生者見るの初めてだ~、うっわ~見た目普通の子供なのに能力が面白い事になってる~」

 爺ちゃんに召喚されたのは見た目、犬のような感じだが大きさが違う。まあ、俺自身が小さいからそう感じるのだけなのかも知れないが俺の3倍くらいの大きさの犬だ。

「ヴァルス、それじゃ頼むぞ儂は主らとは別方向から動くからのう。それとクリフ、今回は【人を殺す】事に慣れるんじゃなくて【人を殺す】判断を付けれる様にするためだからのう。悪を殺さず野放しにすると後に痛い目を見るからのうこの世界は」

「分かったよ。というか、本当に良いの? 3歳児が人殺しするの普通とめるんじゃない?」

「普通はそうじゃろうが、主は転生者じゃろう。この世界の子供でさえ、盗賊に襲われたら生き延びる為に必死になって悪を殺すが主らのような転生者、元の世界が平和な世界に居た者程そう言う場面で悪を殺せず、判断が遅れ死ぬことが多い。儂はそう言うのを今まで何度も聞いたり、また見た事もあった。転生者は力がある分判断が鈍い者が多いからの」

 爺ちゃんはその後、「それじゃ、儂は先に行くぞ、久々の戦場じゃから血が騒ぐわい」と言って、走り去っていった。

「あらら~、帝国の兵士も馬鹿だよね~、この国にはあの主様が付いてるんだから下手に攻撃しない方が良いのに」

「ねえ、ヴァルス、爺ちゃんってそんなに強いの?」

「強いよ~、だって主様この世界の神々の加護複数持ってて、更にレベルも昔から上げるのが好きだって言ってて、僕が知ってる限りだと500は既に突破してるよ」

「……爺ちゃん、一体何者だよ」

 俺は自分の祖父が一体何者なのか疑問に思ったが、今は自分の事に集中しよう。

「それじゃ、ヴァルス一緒に頑張ろう」

「あいあい、ボクも精一杯クリフの事サポートするよ。さっ、ボクの背中に乗って悪党の帝国兵士を蹴散らしに行こう~」

 ヴァルスの背中に乗った俺は、落ちないように背中の毛に掴まり俺もヴァルスのテンションに合わせて「よし、行こう~」と言うとヴァルスは一気に走り出した。
 ヴァルスが走り出して数十秒経つと目線の先に鎧を着た兵士たちが居た。俺はそれを見て、これまで練習して来た弓を使い兵士の頭を狙った。今回は、俺の狙い通り兵士の頭に直撃し兵士はバタッと倒れた。
 そして、兵士の周りに居た他の兵士が「何処からだ!」と叫び倒れた兵士を見て「死んでいる……」と言っていた。

「……あれ? こう、もうちょっと兵士が抵抗するかと思ったんだけど何で一瞬に死んじゃったんだ?」

「いや、クリフ君の弓の使い方が上手いからだよ~それに能力値も馬鹿げてるからね。そのせいで一発で仕留めちゃったみたいだよ」

「マジか、いやでも今人を1人殺したんだな……少しなんか心が痛いけど、そこまで何も感じないな、どうしてだ?」

 俺は自分が人を殺したことに慌てるんじゃなくて、人を殺したのに慌てない俺に慌ててしまった。ヴァルスから「う~ん、多分クリフ君の場合【精神】が高いおかげで混乱しないんじゃない?」と言った。確かに、俺の【精神】の能力値は1500あるから、そう言う物なのかな? と思い兵士がこちらの気付いて魔法を放ってきたのでヴァルスに回避を指示し、俺も魔法を放った。

「【ウィンドカッター】!」

「うわぁぁぁ!」

 実実際こんな事を言わなくても魔法は発動するが、気分的に魔法名だけ言って魔法を使うのがカッコいいので言っている。俺の魔法はレベルも上がっていた事で強力な魔法で一瞬にして前進していた兵士10人程を吹っ飛ばした。

「おお、凄い凄い~クリフ君やる~」

「ありがとう、ヴァルスそれじゃちょっと接近して貰っていい?」

「オーケー、了解だよ。クリフ君」

 ヴァルスは俺の指示通り、敵兵の近くまで俊足で移動した。俺はヴァルスから飛び降りながら、ユニークスキル【鬼人化】を使用した。
 ここで、鬼人化の説明をすると普段のステータス値を2倍するスキルで【持久力】の消耗が激しく長期戦には不向きのスキルである。また、これを使っている間は使用者の周りから赤いオーラが出ており相手に【鬼人化】使用していることがバレてしまう。

「敵兵、【鬼人化】を使える。皆、気をつけよ!」

 敵兵の兵士がそう叫ぶと、後ろで構えていた弓兵が俺へ矢を放ってきた。

「【ウィンドストーム】!」

 飛んできていた矢を全て風魔法で落とすと近くに居た兵士へ一瞬にして接近し右手で髪を掴み左手に構えていたナイフを使い兵士の喉を刺した。

「う、うわぁぁぁ!」

 兵士たちは小さい子供が、平気で人を殺しているのに恐怖を感じたのか一斉に回れ右をして逃げて行こうとした。しかし、既に回り込んでいた爺ちゃんに次々にやられていったのが遠目で分かった。
 それからは、ヴァルスも戦闘に参加し2人と1匹の帝国兵士への蹂躙が始まった。

「ふぅ~、疲れた~」

「おつかれ~、クリフ~、凄かったね。まさか、クリフが【鬼人化】使えるなんて」

「ありがとう、ヴァルス。ヴァルスも頭を食いちぎったりしてて驚いたよ」

「あはは~、元はボク結構暴れてたからさ久しぶりの戦闘で主様みたいに暴れたくなっちゃったんだ~」

 ヴァルスはそう言いながら「でも、人間ってあんまし美味しくないんだよね。口直しにワイバーン食べたい気分~」と言って毛繕いをし始めた。

「どうじゃったか、クリフ? 初めて人を殺した感じは?」

「う~ん、それがさ良く分かんないんだよね。精神の能力値が高いのか知らないけど普通に殺せてたんだよね……」

「う~む、まあクリフも神から加護を貰っておるじゃろうからその中の効果じゃろう。さて、後はここの後始末なんじゃが……」

 爺ちゃんが困ったようにして後ろを振り向くと、そこには俺、ヴァルス、爺ちゃんによって殺された帝国兵士の亡骸が沢山転がり地面が血だらけであった。一応、数人生け捕りにはしているが俺や爺ちゃんに怯えているようだった。
 どうしようか、と悩んでいると王都方面から軍勢が現れた。爺ちゃんは「丁度良い、時に来たわい」と言ってすぐさまヴァルスを戻し俺に付いていた返り血を一瞬で消すと抱っこし現れた軍勢、クールベルト家の兵士たちの元へ手を振った。
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