初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花

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7巻

7-1

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 俺、四宮楽しのみやらくは不幸なことに交通事故で命を落としてしまった。
 だが、どうやらその死は手違いだったらしく、神様であるサマディさんことサマディエラさんからおびとして三つの便利な初期スキルをもらい、異世界に転生したのだった。
 転生してからの生活は順調そのもの。俺は義父であるグルドさんと一緒に楽しく異世界生活を送り、つい最近とうとう結婚することまでできた。
 これで物語はエンディング……ということはなく、結婚したあとも俺の異世界ライフは続く。
 俺は自分の店の支店をオープンしたり、楽園ファンルードという世界に天空城というお城を持ってきて拡充したりと、自由気ままに過ごしていた。
 そうそう、今は冒険者ギルドの総本部長であるオルフィンさんという人に、冒険者ギルド総本部の改革の手伝いをお願いされているんだよね。
 俺は冒険者の人が実力に合った依頼を受けられるように『ランク選定』のシステムを作り、オルフィンさんにはそのシステムを運用するための人間を選別してもらっている。
 うまくいくといいけど、どうなるかな……



 1 やってきた弟子達


 オルフィンさんがシステムを運用する人選を始めてから一週間が経過したが、いまだに連絡が来ていない。冒険者ギルド総本部は人材難だと聞いていたけれど、本当のようだ。
 待っている間は特にやることもなかったので、暇潰ひまつぶしというわけではないが俺はパーティメンバーのリン、レティシアさん、アスラを誘って冒険者活動をすることにした。
 近年は冒険者の数が増え、初心者でも稼げる依頼は達成量が多くなっている。
 しかし、稼げなかったりちょっと面倒だったりする依頼などは率先して受ける者がおらず、他の依頼の中にもれてしまっている状態だった。
 俺達は現在お金に困っているわけでもないため、人助けと思いながら、そういった面倒な依頼を優先的に受けていた。
 冒険者活動をする際、俺達は先日行った冒険者の選抜試験に唯一ゆいいつ合格したフールさんと行動を共にしている。
 そして今日、俺のパーティとフールさんは民家の掃除依頼をこなしているのだった。

「ラルクさん、庭の草むしり終わりました」
「お疲れ様です。家の中は大体片付いてるので、そのまま外で休憩していてください」
「はい、お先に失礼します」

 パーティメンバーだけで人員は足りているが、危険な依頼でもないし、フールさんがお金に困っていると言っていたのもあり、俺から誘ったんだよね。
 性格がいい人だと知っていたけど、こまめな作業も得意としているようだ。早く彼とパーティを組んでくれる人が見つかるといいな。
 フールさんが休憩している間、俺は収納スキルの『便利ボックス』で民家の中にあるゴミをまとめて処理していく。
 ゴミ屋敷のようだった家は、数分後には見間違えるように綺麗になった。
 なお、こういう清掃依頼は他にもたくさんある。システムが運用されれば、駆け出しの冒険者の人達が受けてくれるようになるだろう。
 家から出ると、フールさんが声をかけてきた。

「ラルクさん、お疲れ様です。すごいスピードで家が綺麗になっているのを外から見ていました。本当にすごい力をお持ちですね」
「ええ、最初の頃はこのスキルを使ってよくギルドの倉庫整理をしていました。それでは、ギルドに戻って報告をしましょうか」
「ええ、そうですね」

 その後、俺達はギルドへ向かい、依頼の達成報告をして報酬をもらった。
 フールさんと報酬を分け、その場で彼とは別れる。
 時刻は昼頃。パーティメンバーともこのまま解散して良かったのだが、せっかくだから昼食を振る舞おうと思ってみんなを誘ってみた。
 みんな「ぜひ!」と言ってくれたので、一緒に家に帰ることに。
 帰宅すると、奥さんのリアことローゼリアが玄関まで迎えてくれた。彼女とリンが、俺の結婚相手だ。
 リアに「ただいま」と言って、リンにレティシアさんとアスラをリビングまで案内するようお願いする。
 俺はキッチンに移動し、昼食を作り始めた。


「ん~、やっぱりラルク君のご飯は美味おいしい~。いいな~、リアちゃん達はいつでもこのご飯が食べられるんだから」

 俺の料理を一口食べたレティシアさんがそう言った。その言葉を聞いて、リアとリンは嬉しそうな顔をして笑っている。
 今日のメニューは焼飯やきめしとスープ。気に入ってもらえたようで良かった。
 昼食を食べていると、玄関の呼び鈴が鳴った。
 この時間に来客なんてめずらしいな。いったい誰だろう?
 玄関へ行って扉を開けてみると、なつかしい顔ぶれがそろっていた。

「「「「ラルクさん、お久しぶりです!」」」」
「カイ君達じゃないか。みんな久しぶりだね」

 やってきたのは、レムリード王国の教会で暮らしながら冒険者をしているカイ君、ローグ君、メイナちゃん、ルネちゃんの四人だった。
 彼らとは以前俺がレムリード王国へ行ったときに知り合い、少しだけ戦い方の訓練を付けてあげたこともあった。
 カイ君達を家の中に招き、みんなに紹介する。彼らはまだ昼食を食べてないと言ったので、おかわり用に多めに作っておいた料理を振る舞って一緒に食事をした。
 食後、レティシアさんとアスラは残っている依頼があると言って仕事に行き、リアとリンは食器の片付けをすると言ってキッチンに向かった。リビングにはカイ君達と俺だけが残っている。
 俺はカイ君に尋ねる。

「それで、カイ君達はなんでレコンメティスに来たの? しばらくは教会に住みながら、冒険者活動をして資金難の教会にお金を入れるって言っていなかった?」
「最初はそのつもりだったんですけど、ラルクさんがレムリードの王様に掛け合ってくれたおかげで、教会への補助金が思ったより早く送られてきたんです」
「そうだったんだ。良かったね」
「はい! だから今までのように貧しい暮らしをすることはなくなりました。そんなとき、神父様が俺達に冒険用のお金をくれたんです。神父様は『君達には才能もあるからいろんな国を見てくるといい』って言ってくれました。それならまずラルクさんのいるレコンメティスに行ってお礼を言おうと思って、お金を受け取って馬車で来たんです。ラルクさん、改めてあのときはありがとうございました」

 カイ君がそう言うと、他のメンバーもお礼の言葉を口にした。
 なるほど……そんなにすぐに補助金を届けるなんて、レムリード王もふところが広いな。だから国民からも好かれているのだろう。

「お礼なんかいいって。みんなが会いに来てくれて俺も嬉しいよ」

 俺の言葉にカイ君はずっと緊張していた様子が解けたようで、ホッと一息をついた。

「良かったです。もし会いに来たのが迷惑だったらどうしようかって、みんなと話していたんですよ」
「会いに来るくらいで迷惑には思わないよ」
「あの……実はお礼を言いに来ただけじゃなくて、ラルクさんに一つお願いがあるんです」
「ん? お願いって?」
「……ラルクさん、俺達をラルクさんの弟子にしてください!」

 カイ君がそう言って、深々と頭を下げてきた。ローグ君、メイナちゃん、ルネちゃんも頭を下げている。
 俺が驚いていると、カイ君はさらに詳しく話し始める。
 彼らは冒険者活動を本格的に始めたはいいが、自分達はまだまだ実力不足だと感じているようで、鍛錬を積みたいと考えているらしい。そこで、レムリードで自分達に稽古けいこを付けてくれた俺の正式な弟子になって、腕を磨きたいのだとか。
 どうしたものか……と迷ったが、カイ君達の真剣な目を見て俺は彼らの師匠になることにした。

「分かった。こんな俺で良ければ、よろしく」
「「「「ラルクさん! ありがとうございます!」」」」

 カイ君達は嬉しそうに、にっこりと笑った。


 その後、俺とカイ君達はリビングから庭に移動した。師匠になるにあたり、彼らがどれだけ強くなったかを確認するためだ。
 俺一人対カイ君達四人で模擬戦を行う。ルールは武器を使った攻撃だけで、魔法はサポート系のみで攻撃魔法はなしというものだ。

「ラルクさん、行きますよ」
「うん、いつでも来ていいよ。こっちはもう準備ができているから」

 俺の言葉を合図に、カイ君達は武器を構えて連携して俺に攻撃を仕掛けてきた。
 レムリード王国で見たときより、格段に動きが良くなっている。連携もしっかりと取れているし、俺が教えたことをちゃんと覚えているようだ。
 四人の攻撃を三十分くらいけ続けていると、ローグ君、メイナちゃん、ルネちゃんの動きが段々とにぶってきた。それから五分ほどもするとメイナちゃんとルネちゃんは完全にダウンし、ローグ君も攻撃が散発的なものになる。
 一時間が経過する頃には、四人の中で動けているのはカイ君だけとなった。
 そろそろ頃合いかな。
 俺は模擬戦用の木剣をカイ君の足に引っ掛けて転ばせ、模擬戦終了を告げる。
 カイ君は上半身を起こすと、息を切らせながらお礼を言った。


「はぁ、はぁ……ありがとうございました。や、やっばりラルクさんはすごいですね。四人相手に息も切らさないなんて……」
「これでも訓練はしているからね。みんなお疲れ様」

 最後までねばったのは四人のリーダーであるカイ君だけだったが、ローグ君達も以前より各段に体力は付いている。また、能力もそうだが、彼らは精神的にも強くなっていると感じた。
 これは育て甲斐がいがありそうだな。冒険者ギルドの問題もまだ進展しそうにないし、しばらくはカイ君達に稽古を付けてあげよう。
 そう思い、俺はカイ君に尋ねる。

「カイ君達はレコンメティスにはどれくらい滞在する予定なの?」
「……自分達が強くなるまではしばらくここで過ごそうと思っています。神父様にはいろんな国を見て回るといいって言われましたが、そういう旅をするには自分達の力はまだ足りていないと思うんです。ラルクさんに弟子入りを断られたとしても、レコンメティスを拠点にして依頼を受けるつもりでいました」
「なるほど……ちゃんと自分達のことを考えて行動しているんだね。偉いと思うよ」
「ありがとうございます」

 カイ君は褒められたのが嬉しかったのか、照れ笑いをしていた。
 その後も談笑していると、リアとリンが水とタオルを持ってきてくれた。
 ありがたくそれを受け取ってみんなに配る。
 そのとき、カイ君がおずおずと口を開く。

「……あの、ラルクさん。そのお二人ってもしかして」
「ああ、さっきは俺の仲間って紹介したけど、この二人は俺の奥さんだよ」
「ら、ラルクさんすごいですね。二人も奥さんがいるなんて、それもこんな綺麗な人達が……」

 その言葉にリア達は「あら、ありがとう」と微笑ほほえみ、カイ君は顔を真っ赤にしてうつむいた。リアとリン、結婚してからさらに可愛さがアップしている。
 休憩中、カイ君はまた俺に話しかける。

「ラルクさんは、僕達孤児のあこがれのような存在です。教会の子達も、いつかラルクさんみたいになってやるって言っています」
「そうなの? それは嬉しいな」

 そのとき、ローグ君達が「カイばっかり、ラルクさんと話してズルい!」と言って会話に加わってきた。
 それからは、五人で他愛もない話をして盛り上がったのだった。


 数時間後、レティシアさんとアスラが依頼を終えて戻ってきた。時刻はもう夕方だ。
 せっかくなので、今日は豪華な料理を作ってカイ君達の親睦しんぼく会をすることに。
 みんなで美味しく料理を食べ、夜遅くまで楽しんだ。
 レティシアさんとアスラが帰ったあと、カイ君達に宿はあるのかと尋ねる。まだ取っていないとのことだったので、この日は四人をそのまま家に泊めることにした。


     ◇


 次の日。カイ君とローグ君と一緒に朝風呂に入っていると、二日続けてお世話になるわけにはいかないからどこかいい宿はないかと聞かれた。

「宿か……レコンメティスは最近、かなり冒険者が増えて宿も大分だいぶ人が多くなっているみたいだから、四人全員が泊まれる場所を探すのはなかなか苦労すると思うな」
「やっぱり、そうですか……」
「ん? やっぱりってどういうこと、カイ君?」
「実は昨日、ラルクさんのところに来る前に何軒か宿を当たってみたんです。一人とか二人ならいけそうな宿はあったんですけど、四人となるとどこも泊まれる場所がありませんでした。別々の宿に泊まるのもいいんですけど、話し合いがすぐにできないというデメリットもありますし、なるべく一緒のところに泊まりたいんですよね」

 カイ君達はすでに宿探しをしていたらしい。
 まあ、仲間と一緒の宿のほうがいいという気持ちは分かる。ただ、俺達のパーティは最初の頃は冒険者ギルドに集まって活動していたし、別々の宿でもいいんじゃないかな。
 そう思って提案してみたが、カイ君達は不安そうな表情のままだった。

「どうしても宿がなかったら、諦めてそうしようと思ってます」

 うーん、四人は今までずっと同じ場所で暮らしていたから、離れ離れになるのが嫌なのかもしれないな……
 どうしたものかと考えていたとき、俺はパーティのみんなで買った家のことを思い出した。
 そういえばあの家、普段は誰も使ってないんだよな……たまに掃除しに行っているけど、それだけだ。せっかく買ったのにもったいないと思っていた。
 ……そうだ!

「カイ君、ちょっと家で待ってて。もしかしたら宿問題を解決できるかも」
「えっ、本当ですか!?」

 驚くカイ君達にうなずき、俺は風呂から上がったあと、従魔契約を結んでいる悪魔のゼラさんを呼び出した。

「あら、ラルク君。どうしたの?」
「実は俺のパーティメンバーのところに行きたくて……転移魔法をお願いしてもいいですか?」
「いいわよ~」

 ゼラさんが快諾してくれたので、みんなのところへと転移する。
 そして、例の家をカイ君達に使わせてもいいか聞いてみた。

「いいよ。あの子達なら、大切に使ってくれると思うし」

 そういった感じでレティシアさん達から使用許可をもらった俺は、自宅に戻ってカイ君達にパーティが所有する空き家のことを話した。

「えっ、ラルクさんが買った家ですか?」
「うん。買ったはいいものの、みんなそれぞれ住む家があるから誰も使ってないんだよ。だったら今宿がないカイ君達に住んでもらったほうがいいなと思ってさ。もし良ければ、そこをしばらく使ってよ」

 まずはその空き家がどんなものか見せるために彼らを連れていった。
 空き家を見たカイ君達は、興奮した様子で「本当に使っていいんですか?」と聞いてきた。

「どうせ使わないともったいないしね。それにここなら俺の家から近いし、何かと便利だと思うよ」

 そう言うと、四人は嬉しそうにピョンピョンと跳ねて嬉しさを表現していた。
 こうしてカイ君達はこの家を使うことになり、彼らは滞在に必要なものの買い出しへと行った。
 彼らが買い出しに行ってる間、俺はギルドに行ってフールさんと依頼を受けることに。
 依頼をこなしている際、フールさんにカイ君達のことを話す。

「へ~、ラルクさんに弟子ですか。遠い国から会いに来てくれるなんて嬉しいですね」
「ええ、本当に嬉しかったです」

 その日の依頼は世間話をしているうちに終わった。
 達成報告を済ませたあと、俺はパーティメンバーを集めて話し合いをする。
 議題はカイ君達の育成について。まず俺はこう切り出した。

「実は明日から、カイ君達と一緒に依頼を受けようと思っているんです」
「それは今フールさんとやっている雑用依頼に、カイ君達も交ぜるってこと?」

 レティシアさんの質問に、俺は首を横に振った。

「いえ、カイ君達とは魔物の討伐依頼を受けるつもりです。ただ、フールさんと雑用依頼をこなすのも大事なので、討伐依頼は俺だけが同行しようと思っています。レティシアさん達には引き続きフールさんと一緒に仕事をしてほしいんですけど、大丈夫ですか?」
「なるほど、そういうことなら任せてよ」

 そう言ってくれたレティシアさんにお礼を言い、その日の話し合いは終わった。
 解散したあと、俺はカイ君達にどんな訓練をさせようかと悩みながら一日を過ごしたのだった。


     ◇


 翌日。俺は朝早くからカイ君達と共に王都の外へと出た。

「まず成長したみんなの戦いを実戦で見たい。冒険者のランクは今いくつなのかな?」
「少し前にCランクになりました」
「Cか……だとしたら、オーク数匹とは戦えるかな」

 そう考えた俺は、オークがよく出没する地域まで向かうことにした。
 移動中、四人から自分達の持っているスキルの話を聞く。

「なるほど、メイナちゃんとルネちゃんは『無詠唱』で魔法が使えるようになって、カイ君達は『身体能力強化』と探知系スキルを習得したんだ」

 俺はレムリード王国で魔法を使うメイナちゃん達に『無詠唱』のやり方を、カイ君達前衛組には能力強化の魔法を教えていた。レムリードにいた頃は習得し切れなかったが、彼らは俺がいなくなったあとも訓練を続けていたらしい。
 それにしても、たった少しの期間でものにできるなんて、四人共すごいな……

「『無詠唱』を使えるようになるの、すごく難しかったでしょ? よく頑張ったね」

 そう言ったら、メイナちゃんがきょとんとした表情で答える。

「確かに少し難しかったですけど、そういうものだって考えて練習したらすぐにできましたよ?」
「……えっ、マジで?」

 ルネちゃんも余裕だったとばかりに頷いている。
 いや、そんなはずはないと思うんだけどな……もしかして、メイナちゃんとルネちゃんって相当魔法の才能があるのか? 元々魔法の覚えがいいとは思っていたけど……

「う~ん……そこまで簡単に覚えられたんなら、もう少し難しい魔法も教えてみようかな」

 そう言うと、メイナちゃんルネちゃんは目を輝かせ「よろしくお願いします」と頭を下げた。
 そのとき、二人との会話を聞いていたカイ君達がソワソワとしていることに気付く。


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