特性【プレイヤー】に覚醒した俺は、前世の記憶を思い出し異世界を楽しむ

霜月雹花

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第一章

第19話 【成果・3】

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「孤児院の子を雇って欲しいんですか?」

「雇って欲しいって言うより、面倒を見て貰えないかなってクリス君に」

 エドガーさんと人員の件について話した日の夜、アリシアさん達とその話題となるとノアさんからある相談をされた。
 それは俺と同じく、儀式が終わったばかりだが孤児院に残ってる子供を雇えないかという相談だった。
 というのも、今回の儀式では戦闘系のスキルを手に入れられたのは全体の2割程度で残りは非戦闘系のスキル。
 中には生産系のスキルがあるおかげで、その道の店をしてる所に通ってる人も居るには居るがまだ残ってる人が大半らしい。

「まあ、確かにこの間行った時に院長が困ってそうでしたもんね……」

 以前、ノアさんから孤児院に顔を出してあげて欲しいと言われ、俺は暇な時間を見つけて孤児院に顔を出した。
 そして儀式からどうしていたのか院長に話をして、上手くいってるなら良かったと嬉しそうな表情を浮かべていた。
 その時、軽く他の儀式を終えた人について聞いたが苦笑いを浮かべていた。

「手を貸す分には全然良いんですけど、俺を寄生先にされるんじゃないかという不安はあるんですよね」

「そこは大丈夫とは言い切れないわね……ただ残ってる子にもチャンスがあればと思って、クリス君に言ってみたけど難しいなら全然大丈夫よ」

「いえ、ノアさんの気持ちもよく分かります。なので面接をしてみて、良さそうな人が居れば受け入れる形でしたらいいですよ」

 そう言うと、ノアさんは笑みを浮かべて「ありがとう」とお礼を言った。

「それと運営資金の元手確保の為、少しだけ先に売りたいんですけど何処かいい場所ってありますか? 勿論、アリシアさんとノアさんの分は残してあります」

「私達意外となると、それこそ繋がりを強くしたい所とかかしら? アリシアは、まだ実家とは仲が悪いわよね?」

「ええ、悪いままよ。だからこの話も一切、家にしてないし繋げて欲しいと言われても断るわ」

「だったら私の家にクリス君を紹介してみようかしら? 母様は人脈も広くて、王妃様ともお茶会をしたりしてるから商品の宣伝元としては良いと思うわ」

 ノアさんからそう言われた俺は、「是非、紹介してください!」とお願いした。
 そしてその話をした二日後、俺は正装に着替えてノアさんの実家であるラントリス家へとお邪魔する事になった。

「ノアさんとは昔から知り合いですけど、こうして家に来る事になるとは思いませんでした」

「ふふっ、確かにそうね。孤児院には昔から支援してるけど、孤児院出身の子が商売の為に家に来る事は無かったわね」

 そんな話をしながら馬車で移動し、ラントリス家の前に到着した。
 貴族の家らしくかなり大きな家で庭も広く、建物の前まで馬車で移動した俺はノアさんに連れられて馬車の外に出た。
 そして建物の中に入ると、大勢の使用人に出迎えられその中の紳士的な執事さんから当主のいる部屋へと案内された。

「私はラントリス家の当主。アイザック・フォン・ラントリスだ」

「はじめまして、クリスと申します。普段は冒険者をしながら、商品の開発をしています。この度は貴重な時間を作って下さり、ありがとうございます」

 そう俺は普段よりも丁寧な口調で、ラントリス家の当主との挨拶を行った。
 ノアさんの父、ラントリス家の当主は武人として知られており、その大柄な体躯は座っていても大きいと感じられた。

「ふふっ、そんなに畏まらなくても大丈夫よ。私はアイザックの妻、エレナ。よろしくね」

 アイザックさんとはかなり変わって、ノアさんの母は笑みを浮かべながらそう挨拶をしてくれた。
 俺はそんな挨拶にもきちんと挨拶を返し、俺は早速話し合いに来た目的の商品を机の上に出した。

「これがノアちゃんが自慢してきた新しい〝せっけん〟かしら?」

「はい。右から髪、体、手の三種類に分かれています。実際の使用感としては、肌触りの良さと使った後の匂いも手伝ってくれた方達には好評でした」

「へ~、そうなのね。ねえ、ちょっと試しに使ってもいいかしら?」

「こ、こらっエレナ。これは立派な商談なんだぞ? そんな興味津々といった態度をしては」

 アイザックさんは早速試そうとしたエレナさんに対し、そう言って静止したがエレナさんは止まらなかった。
 ノアさんが「手だったら直ぐ試せるわよ」と言うと、使用人と一緒に〝せっけん〟を持って部屋から出て行った。

「……ノア。一応、これはちゃんとした商談なんだからエレナを止めるのを手伝ってくれてもいいだろう?」

 エレナさんが出て行ってすぐ、先程まで威厳そうな雰囲気を醸し出していたアイザックさんが小声でそうノアさんに言った。

「あら、今回私はクリス君側の人間として来てるのよ? 商談相手の隙を突くなんて、戦略の一つよ。お父様の間違いは、まず最初からここに母様を一緒に待たせた事よ。この日の為に、私が母様の前で自慢してきたと思ってるの?」

「あ、あれはただ自分だけが新しい〝せっけん〟を使えてるからだと思ってたが、そこも戦略の一つだったのか?」

「ふふっ、母様は私と同じく綺麗好きなのよ? あんな風に自慢させられたら、我慢の限界はとっくに来ていた筈よ」

 ノアさんは勝ち誇ったような表情を浮かべてそう言うと、アイザックさんは溜息を吐いて天井を見上げた。
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