21 / 80
第一章
第21話 【店の準備・1】
しおりを挟む店舗を受け取った日の夜、俺はアリシアさんから「家から出て行っちゃうの!?」と泣きながら聞かれた。
「えっ、出て行きはしませんよ? 何があったんですか?」
「だ、だって今日のお昼にクリス君が建物の鍵を受け取ってその中を入って行く姿見たから、もしかして自分の家を買って出て行くんじゃって……」
「あ~、あそこは俺の店ですよ。今後売り出すと〝せっけん〟の為、店舗を用意する事になってあの場所を買ったんです」
店舗について急な話だったので、アリシアさんに伝え忘れていた俺はそう説明をした。
するとアリシアさんは俺の話を聞いて安心したのか、椅子に座って「良かった~」と口にした。
「それにもし出て行くとしても、その前にちゃんとアリシアさんには話しますよ。これだけ世話になってるんですから」
「世話って言う面で言えば、私の方こそクリス君にはお世話してもらってると思うわね。掃除もそうだけど、正直これからクリス君が家を出て行った後に食事を前のに戻すの苦労しそうだわ……」
アリシアさんはその時の事を考えたのか、ブルッと体を震わせて「今のうちに料理習っておこうかしら?」と考えていた。
「それで言うと、料理ですけどもしかしたら王都に俺の料理の店を出すかも知れませんよ」
「えっ、そうなの!?」
「はい。この間、商業ギルドの方と話す際に昼食用の弁当を持って行ったら、俺の作った料理を見て店出さないか? という話になりました」
エドガーさんと話し合う時、昼食用で弁当を持って行くと俺の料理を見て売れるレベルだとエドガーさんは言った。
しかし、今は〝せっけん〟の事があるので飯屋の話は流れたが、今日もその話をエドガーさんにされた。
聞いた所、国王に料理を出してる料理人でも【調理】のレベルは6か7らしく、俺は既に同等のスキルレベルとなっている。
「ただまあ、いつになるかは分かりませんけどね。他にやりたい事が出来たら、後回しになる可能性が高いですから」
「だったら、やっぱり今から覚えておいた方が良いわね。クリス君が暇な時でいいから、教えてくれる?」
「勿論、良いですよ。ただ暫くは店の事で忙しいので、落ち着いたらでも良いですか?」
「ええ、大丈夫よ」
そうして店の事が落ち着いたら、アリシアさんに料理を教える約束をした。
それから数日間、俺は作業場で実験をしたり、店舗となる店の掃除をして過ごし、面接の日となった。
面接は一日通してやるつもりで、午前中は孤児院から来る人達を見る事にした。
当然、同年代が多く簡単に自己紹介と持ってる能力について教えて貰った。
戦闘系スキルが無く、孤児院に残ってる者達なので生産系のスキルを持ってる人も中には居た。
「ノアさんからの頼みだったし、なるべく取りかったけど使えると思えるのは三人位だったな」
面接には一年という期限ギリギリの者から、俺とほぼ同じタイミングで儀式を受けた者もいた。
全員で大体30人近くいて、これだけ残っていたら孤児院もそりゃ大変だろうなと感じた。
だから俺はある合格ラインを下げて面接を合格させようとも考えたが、エドガーさんが集めてくれた人達の事も考えた。
「孤児院の事も考えたいけど、今の俺にはまだ慈善事業をする程の力は無いからな……」
俺は一先ず、三人以外の面接者には不合格と伝えて残った三人には、二次試験として午後の人達を見た後に決めると伝えた。
残った三人は「よろしくお願いします」と頭を下げ、面接室から出て行き俺は水を飲んで休憩する事にした。
「ぶっ通しで面接をしたみたいだな」
「はい。今日中に終わらせたいと思ったのと、午後からの人達を待たせたくなかったので、ちなみに午後からは何人程集まりましたか?」
「そうだな、20人位だな」
「かなり集まりましたね。子供の店だから、そんなに多くの人が来るとは思いませんでした」
孤児院に関しては、稼ぐ先をどうしても探したい者達だったからあれくらい来るだろうとは予想していた。
だが午後からの面接は、トップが子供の店と知っていて来てくれる人達だ。
そんな人達が20人も居るとは、予想にもしてなかった。
「まあ、俺が集めたのもあるが既に実績としてラントリス家との繋がりがある店だから、それで信用もあっての事だと思うぞ」
「成程、確かにラントリス家が付いてるなら少しは安心しますか……」
ラントリス家はあの日から、俺の店の色んな場所で名前を出してくれた。
そのおかけでラントリス家も信用している店として、貴族やそれ以外の人達からもそう認識された。
「正直な話、俺もここまで姉さんがするとは思わなかった。それだけクリスの〝せっけん〟を気に入ったんだろう」
「そうですね。ノアさんから聞いたんですけど、王妃様も絶賛していたみたいです」
俺がラントリス家に売った〝せっけん〟は王妃様の手にも渡った。
その結果、王妃様も俺の〝せっけん〟を気に入ったらしく、早く店が出来て欲しいと言っていたとノアさん経由で知った。
45
あなたにおすすめの小説
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる