34 / 80
第一章
第34話 【王女・2】
しおりを挟む「本当に鑑定が出来たか、レインさんが言ってた通りクリス君の鑑定能力は高いんだな……」
「そこそこですね。それで才能の球ですけど、どうですか? 王女様に渡せそうな能力だと思いますか?」
「うむ、これならあの子も喜ぶだろう。ずっと魔法を使いたいと言っていたからな」
鑑定した才能の球、その中には【魔導の心】という固有能力の才能が入っていた。
【魔導の心】は、魔法系の才能に加えて魔力値の成長促進、更に魔法使用時の効果が上がるといった能力をしていた。
「それは良かったです」
「これで誕生日プレゼントで悩まなくて済んだ。本当に助かったよクリス君」
王様はそう言うと、嬉しそうな顔をして部屋から出て行った。
その後、俺はギルドマスター室に残る事になりソファーに座り直した。
「レインさん、王様とはどういった関係なんですか?」
「生徒の一人だよ」
「やっぱりそうなんですね。アリシアさんとレインさんの関係性に近い感じがしたので、もしかしてと思ってましたが」
「王様になったんだから、僕の事を〝さん〟付けで呼ばなくても良いって言ってるんだけど公の場以外だとあんな感じでね。本当に頑固なんだよ」
レインさんはそう言うと、王様の家庭教師をしてる時の事を話してくれた。
王様はレインさんの生徒第一号で、他国の王子を自分が見る事になったのは流石にレインさんでも緊張したらしい。
「この国に来たばかりだったけど、既に冒険者としては有名になっててね。その縁もあって、依頼として王様の家庭教師を受ける事になったんだよ」
「冒険者ってそんな仕事もするんですか?」
「ランクが高くなれば、指名依頼って事で色んな事を経験するよ。それこそ、アリシアもよく指名依頼で商人の護衛をよくしてるね。強くて、最近は料理も覚えたみたいでその料理が人気で指名料も上がってるんだよ」
アリシアさんのその話は、俺も家で聞いた事があった。
料理が出来るようになって、外に出てる時のご飯は自分で作ったりしていて、その時に依頼の護衛対象の人に食べさせたと言っていた。
凄く美味しいって反応されたらしく、翌日までアリシアさんは上機嫌だった。
「アリシアに料理を教えたのは、クリス君って聞いたけどあれは本当なの?」
「本当ですよ。後、ノアさんにも教えましたよ。二人共、今では普通に料理出来るようになってます」
料理教室は今も続けており、二人はかなり成長している。
特にアリシアさんは、最初は調理器具すら知らない人だったが、今では自分好みの味付けも出来る程に成長した。
「二人もたった数ヵ月で覚えたのは凄いけど、その二人を他の事もしながら教えてクリス君も凄いね」
「俺はただ自分の知ってる知識を教えただけなので……」
その後、レインさんからいつか俺の料理が食べたいなと言われたので、予定が合う日に食べに来て下さいと言って部屋を出た。
そうして用事を済ませた俺は、作業場へとやって来てまずは魔物の解体から始めた。
「ふぅ、取り合えずこれでいいかな? 魔物の素材は、明日持って行くとして実験の続きでもするか」
これまで俺はシャンプー、ボディーソープ、ハンドソープの三種類のせっけんをこの世界に誕生させた。
そして俺は新たに、リンスの作成を行っているのだが満足出来る段階までまだ来ていない。
「確かに髪の質感とかは良いんだけど、まだ出来そうなんだよな……」
正直、高い値段にすればそれだけ素材も良い物を使えるが、他のせっけんと一緒でこれも全員に使って欲しいと考えながら作っている。
しかし、そう考えている俺だが素材を安価な物で揃える事は難しく、どうしても他のせっけんと比べると少し割高になってしまう。
「他のせっけんは身を綺麗にする事を重きに置いてるけど、リンスは髪の質を上げたり、痛みの軽減だから貴族向けって考えでも良いんだけど」
そう思えば楽なんだが、ここで貴族だけの商品を出したら平民のお客から何を言われるか分からない。
俺はそんな悩みを抱えながら、実験を続けて陽が沈みかけ頃にアリシアさんの家へと帰って来て夕食の準備をした。
そして夕食と風呂を済ませ、自室で寝た俺は翌朝、王城からの使い人がパーティーへと招待状を受け取った。
56
あなたにおすすめの小説
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる