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第一章
第35話 【王女・3】
しおりを挟む「アリシアさん、どうしましょう……」
「どうするも、これは行くしかないわよね。王族直々の招待状を断れる人は、早々居ないわよ」
使いの人が渡してきた招待状。
それは一般的に貴族の家に送られる招待状とは少し違っており、王妃様直筆の招待状だった。
それもただのパーティーの招待状ではなく、無事に王城様の10歳を迎えた誕生日パーティー。
国内、そして他国から大勢の来賓の方達が来るようなパーティーに俺は招待された。
「これアリシアさんの招待状は無いみたいですけど……」
「多分、実家の方に送られてると思うわよ。まあ、でもパーティーは苦手だから行かないつもりよ」
「えッ!? 王族の誕生日パーティーなのに行かなくても大丈夫なんですか?」
「体調不良って事で言い訳して、謝罪の手紙を出すわ」
そうアリシアさんは言って、パーティーを断るつもりらしい。
玄関でそんな話をしていると、家の呼び鈴が鳴り開けると外にはノアさんが居た。
「外まで聞こえてたからいうけど、今回は欠席は難しいと思うわよ。アリシア宛の手紙、私やクリス君と同じで王妃様の直筆だと思うわよ」
ノアさんはそう言いながら、自分の元に届いた手紙を見せるとそこには王妃様の字で招待状が書かれていた。
「どう、して……」
「アリシアが断りそうだから、直筆で招待状を届けたんだと思うわよ」
「アリシアさん、ノアさん、すみません。俺のせいでまた巻き込んでしまって……」
「今回のは本当に気にしなくても良いわよ。どちらかと言うと、責任があるとしたらアリシアだからね。前の王子様の誕生日パーティー、仮病で休んだりしてたから今回この形で招待状が送られたと思うわ。クリス君に来た理由としては、主にせっけんの開発で国に貢献したからだと思うわね」
ノアさんがそう説明をしてくれると、暫くして再びアリシアさんの家の呼び鈴が鳴った。
そして、呼び鈴を鳴らした人の対応をしたアリシアさんは、手に手紙を持って戻って来た。
「本当に私の所にも来たわ……」
「でしょ? まあ、今回は諦めて出たらどうなの? 貴族が嫌いだとしても、折角の王女様のパーティーなんだから諦めて楽しんだ方が良いと思うわよ?」
「……そうね。もう逃げないわ。その代わり、思う存分パーティーを楽しむわ」
そうアリシアさんは心に決めて、早速パーティーに来ていく服を用意する為、アリシアさん達と一緒に洋服屋へと向かった。
時間が掛かるから、女性服から探す事になった。
「どうかしら、クリス君? 久しぶりのドレスで着こなせてるか不安だけど、そこまで悪くないわよね?」
「凄く美しいですよ。普段の服装を見慣れてるからか、ドレス姿のアリシアさん凄く素敵ですよ」
「ふふっ、ありがとう」
ドレス姿のアリシアさんは、やはりその見た目通り凄く似合っていた。
ノアさんも普段はラフな格好をしているが、貴族らしいドレス姿をしており二人共凄く似合っている。
そうして女性用の服決めは昼少し過ぎ位で終え、一旦食事にしようとノアさんが所有してる食堂の建物に来て昼食をとる事にした。
「最近、人に対して飲食店の数が合ってない様な気がしますね」
「そうね。少し前まではここまでじゃなかったから、意外と何処も直ぐに入れてたけど、人が多くなって昼時とかは一時間待ちとかが普通だものね」
「貴族向けの少し高いお店も人がいっぱいで、新しい食堂を開店しようと準備してる人も居るみたいね。そう叔父さんに聞いたから、暫くしたらまた前みたいに直ぐに食べられるようになるわよ」
「そうなんですか? 新しい所が出来たら、是非行ってみたいですね」
ノアさんの言葉に俺はそう反応をして、昼食が出来たので一緒に食べ始めた。
昼食後、今度は俺の服の購入へとやって来た。
「どうせだったら、商談用のスーツも新しいの買いたいな、前のは小さくなってどうしようか迷ってたし」
折角、服屋に来たなら欲しい物は買っておこうと思って採寸もされるから、新しいスーツも購入する事にした。
そうして俺の服も決まって、後日家に送られてくるのでこれでパーティーの準備はプレゼントだけとなった。
「王族へのプレゼントって、俺が渡しても良いんですかね?」
「少し高価な物だったら、何でも良いと思うわよ? 他の商人も、国に貢献した人は呼ばれたりするから、そこまで深く考え込まなくても大丈夫よ」
ノアさんからそう言われたが、その日は一日中王城様へのプレゼントで頭を悩ませ続けた。
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