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第一章
第49話 【王都帰還・1】
しおりを挟む帰りは倍の日数を掛け、俺は王都へと帰還した。
約二週間の旅を終えて戻ってきた俺は、直ぐに達成報告の為に冒険者ギルドへと向かった。
「クリス君、おかえりなさい!」
ギルドの建物の中に入ると俺を見つけたリンさんが、嬉しそうな表情を浮かべて俺を迎えてくれた。
今はお昼の時間帯で、朝や夜とは違って冒険者が少ないおかげで見つけて貰えた。
その後、達成報告をするとそのままギルドマスター室へと通された。
「クリス君、初めての指名依頼無事に終わったようで良かったよ。途中、依頼の変更をされて驚いたけど、向こうで沢山活躍したみたいだね」
「活躍って程でも無いですけど、困ってる人達を見てたら勝手に動いてました」
「ふふっ、そういうクリス君の性格は好きだよ。炊き出し、土砂の片付け、それに建築までしたらしいね」
レインさんは報告書を見ながらそう言うと、向こうでどんな事をしたのか具体的に聞いて来た。
「大工に気に入られて、建築を任されるなんて冒険者でも珍しい経験をしたね」
「本当に俺もそう思います。なんで気に入られたのか分かりませんが、色んな事を教わって自分で建物も作れるようになっちゃいました」
「また一つ、冒険者以外での道が出来ちゃったね」
レインさんは笑いながらそう言うと、報告会は終え俺はギルドの建物を出た。
それから俺は、家に戻る前に店に寄って俺が居ない間はどうだったのか聞いた。
「在庫を置いて行って下さったおかげで、在庫不足になる事は無かったんですがほぼ尽き欠けていていまして……帰って来たばかりなのでこんな事言うのも恐縮ですが、在庫補充の為に生産をお願いしたいです」
「在庫不足で店が大変になるよりか良かったけど、暫くは生産に追われる日々になりそうですね……」
「そうなります。それと、王家からオーナーに渡す様にと手紙を預かっております」
「王家から?」
リオルドさんの言葉に俺は首を傾げ、取り合えずその手紙を受け取った。
中身は確認してないらしいが、使いの人からは俺が戻ってきたら見せるように言われているらしい。
「取り合えず、手紙は家に戻ってから確認しておきます。明日から、暇な時間があれば在庫の補充もしておきますので在庫の事は気にせず売ってください」
「はい。分かりました」
そうして店の確認を終えた俺は、アリシアさんの家へと帰宅した。
玄関の扉を開けて中に入ろうとすると、中から扉が開いてアリシアさんとノアさんが出迎えてくれた。
「クリス君、おかえりなさい」
「おかえりなさい。クリス君、ラントリス領の復興を手伝ってくれてありがとう」
そうして家の中に入ると、アリシアさん達が俺の帰還祝いにと食事を用意してくれていた。
俺は食事を用意してくれた二人にお礼を言って、一緒に食事を食べる事にした。
「最初は、一週間くらいで帰ってくるって聞いてたのにまさかその倍掛かるなんてね。ノアからラントリス領の事を聞いて、大体の事は把握してるけど向こうで何をやってたの?」
「色々としてましたね。炊き出しとかゴミの片付け、後は何故か今も自分でも理解してませんが家も建ててました」
「家? えっ、クリス君って大工が持ってるスキルも持ってるの?」
「元々は持ってませんが、向こうで大工さんと仲良くなって教わりました。家を建てる時は手伝ってくれた人が居たおかけで三日で建てれましたけど、一人で建てるなら多分十日は掛かるかなと」
設計に関してもキリさん達に教わったので、そこまで難しい建物じゃなければ設計図も数時間で描けるだろう。
建物に関しては、人手があれば時短できるが一人で建てるなら、十日は掛かる計算だ。
「一人でまず、普通の人は家を建てようだなんて思わないわよ。流石、クリス君といったらいいのかしら?」
「本当に多才ね」
それから沢山、アリシアさん達と向こうでの話で盛り上がり、陽が沈んだ頃に解散となった。
そしてシャワーを浴びて、自室に入った俺は王家からの手紙の事を思い出し、手紙の中身を確認した。
「何となく予想はしてたけど、王妃様やっぱり欲しくなっちゃったか……」
手紙の内容としては、俺が王女様に渡したせっけんの類似品で良いから購入したいという内容だった。
その後、手紙の中身は確認したが今日は作業する元気も無いので、そのままベッドに横になって眠りについた。
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