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第一章
第63話 【強敵・3】
しおりを挟む「……」
森を出た俺は、一先ず最初に倒れたウルフを回収に行った。
後は街に戻るだけ、なのだが俺の後ろをピッタリとウルフの子供が付いてきている。
「言っておくが、俺はこれから人間の街に戻るんだ。そこまで付いていけば、お前は魔物だから殺されるんだぞ?」
「くぅ~ん、くぅ~ん!」
「こらっ、足に引っ付いて来るな!」
ついていく! と言わんばかりに、俺の足にひっついてくるウルフの子供に俺はそう怒って注意をした。
しかし、ウルフの子供はその行為を止めず、俺は両手でウルフを持ち上げ顔を近づけてシッカリと注意をする事にした。
「あのな、魔物であるお前を俺は連れて行けないんだよ。分かって、っておい!」
「くぅ~ん!」
注意をしようとした俺の顔を舐めて来て、必死についてくるとアピールを続けて来た。
「……よ~し、分かった。そこまで俺について来たいと言うんなら、お前が誠意を見せるんだ。人間には魔物を使役する【使役】というスキルを持つ人達が居る。俺は幸いスキルの習得率が良い、お前が俺に【使役】を習得させる事が出来たら連れて行ってやるよ」
「きゃう!」
ここまでのやり取りでこのウルフの子供が、俺の言葉を認識してかも知れないと考えていたが俺のその言葉に返事をした事で確信をした。
「それで、そのウルフの子供を持って帰って来たんだね」
「そうなります。まさか、10分も掛からず【使役】を習得させられるとは思いもしませんでした」
あの後、俺はウルフの子供が積極的に行動した事で【使役】スキルを習得した。
そして名付けも済ませており、ウルフの子供改めハク。
ウルフにしては、毛並みが白みがかっている事から付けたが、かなり気に入っている様子だった。
そうして〝従魔〟として使役した俺は、ハクを連れて王都へと戻って来た。
「従魔の登録が簡単で良かったです。もし面倒だったらどうしようって、考えながら戻ってきたので」
「王都は比較的、従魔使いは少ないけど他の街には従魔使い専門の学校とかもあるくらいだからね。それにしても、この子はかなり大人しい子だね」
「きゃう!」
「返事もちゃんとするし、この子は賢いのかも知れないね」
ギルドに報告に来ると、レインさんに呼び出しをされてギルドマスター室へとやって来た。
そして俺が連れて来たハクを見て、笑みを浮かべながらハクの頭を撫でていた。
「もしかして、レインさんってウルフが好きなんですか?」
「ウルフってより、小動物が好きかな? 子供の時から成長を見守っていたら、大人になった子も好きだけどこの位の頃の生き物が好きなんだよね」
「そうなんですか、でしたらもう少し近くで見ても良いですよ。ハクも良いだろ?」
「きゃう!」
ハクは俺の言葉に返事をすると、大人しく座っていたがぴょんっと地面に降りてレインさんの方へと近づいた。
そして膝の上に乗り、甘えた声で鳴くとレインさんの顔はこれでもかと言う程、ニヤついていた。
それから数分間、ハクを堪能したレインさんは「いつでも連れて来ていいからね」と言われ、俺はその言葉を聞きながら部屋を出た。
「こちらが従魔使いの証ですので、大切に保管して下さいね。冒険者カードとは違って、再発行がかなり難しいので無くさないでくださいね」
「はい。分かりました。ありがとうございます」
ギルドマスター室を出た俺は、その間に用意してもらっていた従魔使い専用の証であるカードを受け取った。
そのカードには使役してる魔物の血を登録しており、従魔が街中で暴れたりしたりした時に瞬時に誰の従魔か分かるようになっている。
他にも従魔使い専用の施設に入ったり、従魔使いだけが受けられる依頼等もあって意外と従魔使いは出来る事が沢山あった。
「リンさん、こんなに従魔使いの仕事があるのに冒険者の人達は何で従魔使いが少ないんですか?」
「従魔使いが少ない理由としては、そもそも従魔になってくれる魔物が少ないというのが大きな理由ですね。先ほど説明しましたが、従魔使いの学校は【使役】や従魔について教えはします。しかし、従魔を用意する事は出来ないので従魔使いになれるのは良い巡り合わせがないとなれないんです」
「そうなんですね。俺の場合、ハクの方から近づいて来たので難しさがイマイチ分かりませんでした」
「クリス君の場合は、かなり珍しい部類の例ですね」
そう教えて貰った後、従魔について少し勉強しようと考えギルドで本を借りて勉強する事にした。
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