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第十一話
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好きだとか守るとか、そんなことを言われるのは求婚間近の女性だけ。
一度も言われずに強引に結婚になったせいか、ガウェインの言葉を素直には受け取れなかった。でも、嘘だとも思えない自分がいる。
「では、互いの新居へ。どうぞお幸せに」
牧師の言葉と共に、参列者が立ち上がり盛大な拍手が鳴り始めた。
ガウェインに手を取られて、列席者の間を歩く。
これから訪れるさまざまな苦労と思うと、とても気楽とは思えない。
個室は与えてくれるのか、寝室は別か、そんなことだって不安だ。
(神様! どうかお守りください)
***
イーニッドは、広大な広間でソレク家の親族の挨拶に追われた。
皆、目が笑い、尻軽女と言わんばかりの口ぶりで、言葉の端々に棘がある。
それでもなんとか親族だけでも挨拶を終えねばいけないと、スカートの裾を持ち歩きまわった。
ガウェインと一緒に周りたいのだが、どういうわけかアランと共に談笑している。
一緒なら話も早いと思うのだが、孤立させられて尚更話ずらい。
「あら、ミスマッケンジー。どうかなさって? あ、ごめんなさい。もうソレク家に嫁いだのよね」
不意に言われて、振り向いた時にイーニッドはくらりと眩暈がした。
目の前にいつも自分を笑っていた令嬢達がいるのだ。
今日も集団でいて、派手なドレスを見に付け薄ら笑いを浮かべている。
「何か? 私も忙しいので」
「あら、私達は客人よ? ふたりの成り行きの話とか今後のこととか色々と知りたいじゃない。勿論、教えてくれるわよね?」
「そんな……」
「予定がないとか」
くくっと笑われて、イーニッドは何も言えないくなった。
本当に予定がないのかもしれない。
そんな想いが拭えないのに、わざわざ言われて心が張り裂けそうだ。
息がしずらくなり、視界がぐらぐらとしてくる。
意識がぼんやりとして、ふらふらとしてくると遠くからガウェインの声がしたような気がした。
「ガウェイン……?」
イーニッドが意識を手放すと同時に、頑丈な体に支えられたような気がして、なぜか安堵でいっぱいになった。
***
パチンと目を開けると、見知らぬ天上があり、隣に温もりを感じる。
誰かと見つめれば、ガウェインが寝息を立てていた。
(う、うそ!)
自分の身なりはどうなっていると確認して見れば、丁寧に寝着に着替えさせられていた。
どうしてこうなったのかと思い出そうとすると、頭痛がする。
それでも必死に思い出すと、夜会で言いがかりを付けられて、疲れていた身体に障ったのだと思った。
それでなくても、会う人会う人、イーニッドに嫌味を言ってきたのだ。
会いたくもない集団から、わざわざ結婚についての詳しい話など、おめでたいからと言ってもしたくはない。
彼女たちは面白おかしく、後で噂を流すだけなのだから。
それに今の状況は、初夜なのだろうか――?
もう一度ガウェインを見つめるが、ガウンを羽織り規則正しい寝息を立てるばかり。
ふたりが何かしたとは到底思えないが、実は一方的に純潔を奪った可能性だってある。
そんな事を考えると、恐ろしくてとても一緒のベッドでは眠っていられず、ソファまで逃げた。
ソファに座り、本当に何もなかったろうかと考える。
記憶が全くない。
(ガウェインが寝込みを襲うかしら)
互いに乱れることもないガウンや寝着を見て、イーニッドは何もなかったのだろうと思う。
とはいえ、ソファからじっと観察するようにしばらくガウェインを見つめていた。
一度も言われずに強引に結婚になったせいか、ガウェインの言葉を素直には受け取れなかった。でも、嘘だとも思えない自分がいる。
「では、互いの新居へ。どうぞお幸せに」
牧師の言葉と共に、参列者が立ち上がり盛大な拍手が鳴り始めた。
ガウェインに手を取られて、列席者の間を歩く。
これから訪れるさまざまな苦労と思うと、とても気楽とは思えない。
個室は与えてくれるのか、寝室は別か、そんなことだって不安だ。
(神様! どうかお守りください)
***
イーニッドは、広大な広間でソレク家の親族の挨拶に追われた。
皆、目が笑い、尻軽女と言わんばかりの口ぶりで、言葉の端々に棘がある。
それでもなんとか親族だけでも挨拶を終えねばいけないと、スカートの裾を持ち歩きまわった。
ガウェインと一緒に周りたいのだが、どういうわけかアランと共に談笑している。
一緒なら話も早いと思うのだが、孤立させられて尚更話ずらい。
「あら、ミスマッケンジー。どうかなさって? あ、ごめんなさい。もうソレク家に嫁いだのよね」
不意に言われて、振り向いた時にイーニッドはくらりと眩暈がした。
目の前にいつも自分を笑っていた令嬢達がいるのだ。
今日も集団でいて、派手なドレスを見に付け薄ら笑いを浮かべている。
「何か? 私も忙しいので」
「あら、私達は客人よ? ふたりの成り行きの話とか今後のこととか色々と知りたいじゃない。勿論、教えてくれるわよね?」
「そんな……」
「予定がないとか」
くくっと笑われて、イーニッドは何も言えないくなった。
本当に予定がないのかもしれない。
そんな想いが拭えないのに、わざわざ言われて心が張り裂けそうだ。
息がしずらくなり、視界がぐらぐらとしてくる。
意識がぼんやりとして、ふらふらとしてくると遠くからガウェインの声がしたような気がした。
「ガウェイン……?」
イーニッドが意識を手放すと同時に、頑丈な体に支えられたような気がして、なぜか安堵でいっぱいになった。
***
パチンと目を開けると、見知らぬ天上があり、隣に温もりを感じる。
誰かと見つめれば、ガウェインが寝息を立てていた。
(う、うそ!)
自分の身なりはどうなっていると確認して見れば、丁寧に寝着に着替えさせられていた。
どうしてこうなったのかと思い出そうとすると、頭痛がする。
それでも必死に思い出すと、夜会で言いがかりを付けられて、疲れていた身体に障ったのだと思った。
それでなくても、会う人会う人、イーニッドに嫌味を言ってきたのだ。
会いたくもない集団から、わざわざ結婚についての詳しい話など、おめでたいからと言ってもしたくはない。
彼女たちは面白おかしく、後で噂を流すだけなのだから。
それに今の状況は、初夜なのだろうか――?
もう一度ガウェインを見つめるが、ガウンを羽織り規則正しい寝息を立てるばかり。
ふたりが何かしたとは到底思えないが、実は一方的に純潔を奪った可能性だってある。
そんな事を考えると、恐ろしくてとても一緒のベッドでは眠っていられず、ソファまで逃げた。
ソファに座り、本当に何もなかったろうかと考える。
記憶が全くない。
(ガウェインが寝込みを襲うかしら)
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とはいえ、ソファからじっと観察するようにしばらくガウェインを見つめていた。
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