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第十四話
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「素敵な趣味だと思います。俺の方が好きな人を調べあげるなんて、悪趣味だと今更ながら思いますよ。許してください」
頭を下げられて、イーニッドは困惑した。
この美味しいアイスを用意してくれたのだって、イーニッドが好きだと調べたから知ったことだ。それに、他にも調べて先回りしたことがあるかもしれない。
「私こそ、関係ないなんて言ってごめんなさい。私、アイスは好きよ。お菓子作りも好き。調べられていい気分にはならないけれど、私のことなんて調べるまでもないわ。地方に飛ばされた、落ちぶれた貴族。それだけよ。向こうの生活では何もないなかで、メイドから教わってクッキーを作っていたの。王都に住む人には分からないでしょうけど、何かを無心で作ると少し気持ちも晴れるのよ」
「そうなんですね。でも、ここでは……その……控えてもらうしか……」
ガウェインが寂し気に眉を下げた。
言いたいことは分かっている。
料理長を始め、料理人が沢山いる中、妻が菓子を作り始めることは、彼らの仕事を奪うことになる。それくらいは分かっている。イーニッドの周りには、メイドや執事が極端にいなかったから、自分のことは自分でやっていたのだ。
「そこまで無茶苦茶なことは言わないわ。ただ、寂しいわね」
イーニッドがため息を吐くと、すかさずガウェインが言う。
「でしたら、美味しいお菓子を沢山持って来ましょう」
「え?」
「王都にある菓子を、存分に堪能してください。それは、今までイーニッドが出来なかったことでしょう?」
思わずこくんと頷いてしまうと、すぐにガウェインが執事を呼んだ。
ベルで呼ばれた執事はすぐに来て、一礼する。
「明日のティータイムは王都の中の菓子を用意してほしい。料理長に伝えてください」
「かしこまりました」
頭を下げると、出て行き、ガウェインがにこりと口角を上げる。
「楽しみですね!」
イーニッドは困りつつ笑みを見せると、余計にガウェインが嬉しそうに眦を下げていた。
***
「まあ、美味しい。これ、このふんわりしたムース、色も素敵だし、甘くて美味しいわ」
「王都の令嬢に人気だそうですよ。ほら、こっちのゼリーもいかがです?」
すっと出された緑色のぷるんとしたゼリーにイーニッドは目を輝かせた。
ゼリーは何度か食べたが、綺麗な色をしたゼリーは初めてだ。
「どうやってこんな色に?」
「料理長を呼びますか?」
「いえ、いいわ。詳しく知っても結局分からないし、不思議は不思議のままがいいもの」
わくわくしながら掬うと、甘さと酸味が口に広がる。
爽やかな味に、胸がわくわくしそうだ。
「美味しい!」
「まだまだありますよ」
ローテーブルに広げられたお菓子は、イーニッドひとりでは食べきれない。
ガウェインも食べているが、ナッツを摘まんだり、クッキーを口に入れたりと、そんなに甘いものを口にしていなかった。
ひとりでは無理だとガウェインを見れば、苦笑される。
「仕方ありませんね。では、私はソルベを」
「だ、だめ」
「どうしてです?」
「食べてみたいもの」
「じゃあ、こちらの焼き菓子を」
「だめ……」
「じゃあ……俺は何を食べればいいでしょうか?」
「そうよね。えっと……だって仕方ないじゃない。こんなに魅力的なお菓子に囲まれるなんて、女性の夢よ」
イーニッドはもじもじしながら、食べかけのムースを見つめた。
話すのも惜しく、もうひと掬い食べたいのだ。
「そうですか? あの、イーニッド、食べたいならどうぞ?」
「あ……えっと。頂くわ」
口に運ぶと頬が緩む。
思わずにんまりしていると、ガウェインがそっと紅茶を勧めてくれた。ティーカップの中の琥珀色が美しく、イーニッドは思わず頬を緩める。
「甘いものには紅茶が合います」
「ありがとう」
イーニッドが満足して食べていると、執事が一礼してティールームに入ってきた。
慌てた様子で、何かを耳打ちしている。
「分かった。イーニッド、少し席を立つけれど、ゆっくり食べていてください」
「でもひとりじゃ……申し訳ないわ」
寂しい、そう言いかけて飲み込んだ。
彼との時間がたまらなくこそばゆい時間になっていることに、じわじわと気がついていた。胸の奥がざわついて、ジンと温かい気持ちになる。
それに気がついては駄目だと思っても、どんどん解きほぐされてしまう。
それがガウェインの凄いところだ。
「すぐに戻ります。ひとりで全部食べてしまわないでくださいね。俺も少しは食べたいので」
「そんなことしないわ。待っていても、平気よね?」
「ええ。飽きてしまったら、部屋に戻るといいでしょう」
「そんな……こと。お菓子に失礼よ」
「そうですか?」
イーニッドは上手く言葉が出ずにもごもごした。
頭を下げられて、イーニッドは困惑した。
この美味しいアイスを用意してくれたのだって、イーニッドが好きだと調べたから知ったことだ。それに、他にも調べて先回りしたことがあるかもしれない。
「私こそ、関係ないなんて言ってごめんなさい。私、アイスは好きよ。お菓子作りも好き。調べられていい気分にはならないけれど、私のことなんて調べるまでもないわ。地方に飛ばされた、落ちぶれた貴族。それだけよ。向こうの生活では何もないなかで、メイドから教わってクッキーを作っていたの。王都に住む人には分からないでしょうけど、何かを無心で作ると少し気持ちも晴れるのよ」
「そうなんですね。でも、ここでは……その……控えてもらうしか……」
ガウェインが寂し気に眉を下げた。
言いたいことは分かっている。
料理長を始め、料理人が沢山いる中、妻が菓子を作り始めることは、彼らの仕事を奪うことになる。それくらいは分かっている。イーニッドの周りには、メイドや執事が極端にいなかったから、自分のことは自分でやっていたのだ。
「そこまで無茶苦茶なことは言わないわ。ただ、寂しいわね」
イーニッドがため息を吐くと、すかさずガウェインが言う。
「でしたら、美味しいお菓子を沢山持って来ましょう」
「え?」
「王都にある菓子を、存分に堪能してください。それは、今までイーニッドが出来なかったことでしょう?」
思わずこくんと頷いてしまうと、すぐにガウェインが執事を呼んだ。
ベルで呼ばれた執事はすぐに来て、一礼する。
「明日のティータイムは王都の中の菓子を用意してほしい。料理長に伝えてください」
「かしこまりました」
頭を下げると、出て行き、ガウェインがにこりと口角を上げる。
「楽しみですね!」
イーニッドは困りつつ笑みを見せると、余計にガウェインが嬉しそうに眦を下げていた。
***
「まあ、美味しい。これ、このふんわりしたムース、色も素敵だし、甘くて美味しいわ」
「王都の令嬢に人気だそうですよ。ほら、こっちのゼリーもいかがです?」
すっと出された緑色のぷるんとしたゼリーにイーニッドは目を輝かせた。
ゼリーは何度か食べたが、綺麗な色をしたゼリーは初めてだ。
「どうやってこんな色に?」
「料理長を呼びますか?」
「いえ、いいわ。詳しく知っても結局分からないし、不思議は不思議のままがいいもの」
わくわくしながら掬うと、甘さと酸味が口に広がる。
爽やかな味に、胸がわくわくしそうだ。
「美味しい!」
「まだまだありますよ」
ローテーブルに広げられたお菓子は、イーニッドひとりでは食べきれない。
ガウェインも食べているが、ナッツを摘まんだり、クッキーを口に入れたりと、そんなに甘いものを口にしていなかった。
ひとりでは無理だとガウェインを見れば、苦笑される。
「仕方ありませんね。では、私はソルベを」
「だ、だめ」
「どうしてです?」
「食べてみたいもの」
「じゃあ、こちらの焼き菓子を」
「だめ……」
「じゃあ……俺は何を食べればいいでしょうか?」
「そうよね。えっと……だって仕方ないじゃない。こんなに魅力的なお菓子に囲まれるなんて、女性の夢よ」
イーニッドはもじもじしながら、食べかけのムースを見つめた。
話すのも惜しく、もうひと掬い食べたいのだ。
「そうですか? あの、イーニッド、食べたいならどうぞ?」
「あ……えっと。頂くわ」
口に運ぶと頬が緩む。
思わずにんまりしていると、ガウェインがそっと紅茶を勧めてくれた。ティーカップの中の琥珀色が美しく、イーニッドは思わず頬を緩める。
「甘いものには紅茶が合います」
「ありがとう」
イーニッドが満足して食べていると、執事が一礼してティールームに入ってきた。
慌てた様子で、何かを耳打ちしている。
「分かった。イーニッド、少し席を立つけれど、ゆっくり食べていてください」
「でもひとりじゃ……申し訳ないわ」
寂しい、そう言いかけて飲み込んだ。
彼との時間がたまらなくこそばゆい時間になっていることに、じわじわと気がついていた。胸の奥がざわついて、ジンと温かい気持ちになる。
それに気がついては駄目だと思っても、どんどん解きほぐされてしまう。
それがガウェインの凄いところだ。
「すぐに戻ります。ひとりで全部食べてしまわないでくださいね。俺も少しは食べたいので」
「そんなことしないわ。待っていても、平気よね?」
「ええ。飽きてしまったら、部屋に戻るといいでしょう」
「そんな……こと。お菓子に失礼よ」
「そうですか?」
イーニッドは上手く言葉が出ずにもごもごした。
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