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第二十二話
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衛兵から腕を離させると、ガウェインはすぐに部屋の中に入った。
中では宮廷貴族がガウェインをじろじろと見つめ、ひそひそ話をしている者もいる。
もはや王の一言が頼りだと、ガウェインは王に向かい一礼した。
自分の父よりも年が上で、落ち着いた佇まいと厳しい眼差しが印象的だ。
切れ長の瞳を見ると、意志の強いイメージを受ける。
「ソレク家のガウェイン。何か用でも?」
マントの下から、長い指が見え、それがゆっくりと組まれていく。
じっと自分を見つめる様に、ガウェインは息を飲んだ。
「ご無礼をお許しください。一度、手紙を書いたのですが、手に渡っていないと思い、こちらに参りました」
「手紙? いや、何も」
王の眉がぴくんと動いて、じろっとアランを睨んだ。
その瞬間、王が自分の味方になってくれるかもしれないと直感した。
「衛兵に頼み、王に必ず渡すように命じたのです。そこには父、アランの非道の行いが書かれています」
場が一気にどよめき、アランが舌打ちをしたのが聞こえた。
王は目を閉じ、「続けろ」と言う。
「王に手紙を出し、安心して妻と旅行に出かけました。その際、馬車が脱輪しかけ、妻と共に命の危機を感じました。これが証拠です。ねじの部分ですが、わずかに意図的に削られた後があります」
王の側近に手渡すと、すぐに目に触れた。
あの時、イーニッド以外誰も信じていなかったガウェインは、ねじを即座に自分のポケットに仕舞った。従者が点検を怠るとは思えない。
きっと、放っておいたら証拠は消されていたろう。
「大変であったな」
「勿体ないお言葉」
「その手紙にあることを、もう一度私に話してはくれないか」
「分かりました」
ガウェインが口を開けそうになったその時、アランが後ろから飛び出してきた。
そしてガウェインの方を指さし鬼の形相で怒鳴り始めたのだ。
「こんな不出来な息子の言うことを信じるのですか! 私がどれほど尽くしたと思っているのです! 王の為にどれだけ!」
アランが巻くし立てるように言うと、王が静かな声でそして冷たい瞳で言い放った。
「私が何も知らないとでも思っているのか。私腹を肥やし、王などいらぬと影では言っているそうではないか」
「……それは……」
「私自身が処罰するのは簡単だ。ほんの一瞬で首を落とすことが出来るだろう。でも、この国は民が作り考えるもの。宮廷貴族のプライドが残っているのであれば、間違いを正すものが必ず正してくれると信じていた。もしも現れることがなければ、全員王都から追放、もうしくは絞首刑であった。ガウェインに感謝しろ」
王の腹に響くような怒りの声が響いた。宮廷貴族たちは突然の王の言葉に縮みあがり、小さな悲鳴を上げた者もいた。まさか自分たちが処罰されるとは思っていないで、アランに加担していたのだから。王は国を憂いつつ、目を覚まして欲しかったのだろう。
ガウェインは王の言葉が重く感じられた。
「……ですが……ですが! 私は何もっ」
アランは身振り手振りで必至に正当性をアピールするが、王はフンと鼻をならす。
「まだ自分の行いが正しいと言うのか。自分の息子を手に掛けておいて、まだ過ちに気がつかないとは……愚かな。ガウェイン、話は聞くまでもない。アランを地下牢に」
衛兵の命令で、アランがひっ捕らえられる。
悲鳴と共に会議室から摘まみだされると、王はガウェインを見つめた。
「非道の数々、言葉では酷いこともあるだろう。後で手紙をくれ。そして、今後ソレク家のガウェインが、アレクの後を継いだことにする。よいな?」
場にいた全員が頭を下げた。
ガウェインも頭を静かに下げる。
地下牢からはもう二度と出られないだろう。そしてそこでは貴族として扱われない。
一日に一度のパンをくれるだけだと聞いていた。ただし、本当にパンをくれるのか、という疑問すら湧くような場所だ。
気が狂うとも聞いているし、上手く地上に出ることが出来ても正気ではなくなっていると聞く。
自分が追いやったことが、少し後ろめたくなる。
「ガウェイン。なぜ落ち込む?」
王の静かな声に、ガウェインが顔を上げた。
どうして自分の気持ちが分かるのかと、ガウェインは言葉に詰まる。
改めてアランのことが申し訳ない思いになる。同時に、アランを説き伏せることが出来なかったことが残念だった。
「父を、地下牢にまで追いやってしまいました」
「甘いな。アランはその点、非道に徹することに才がある。これから宮廷に上がるとき迷いが生じるなら、その非道すら学ぼうと思い、王都を良くしていってくれ。期待している」
「あの、もう一つお願いがございます」
ガウェインが頭を下げたまま言う。緊張してきて、胸が鳴り始めた。
「マッケンジー家を王都にお戻しください。彼らは無実でございます」
「ガウェインの手紙をよく読み、その後に判断を下そう。私も、ロバートがいなくて寂しくてな。一時の過ちとはいえ、彼には非礼を詫びたい」
その言葉を聞いて、ガウェインはすぐに父のしたことを手紙にまとめなければと思った。
王の判断だって狂う時があるし、ロバートやイーニッドは王を責めることはないだろう。
「ガウェイン。期待している」
「勿体ないお言葉です」
ガウェインは更に頭を下げると、胸に込み上げるものを感じた。
これで、本当にイーニッドと幸せになれる、そんな気がしたからだ。
中では宮廷貴族がガウェインをじろじろと見つめ、ひそひそ話をしている者もいる。
もはや王の一言が頼りだと、ガウェインは王に向かい一礼した。
自分の父よりも年が上で、落ち着いた佇まいと厳しい眼差しが印象的だ。
切れ長の瞳を見ると、意志の強いイメージを受ける。
「ソレク家のガウェイン。何か用でも?」
マントの下から、長い指が見え、それがゆっくりと組まれていく。
じっと自分を見つめる様に、ガウェインは息を飲んだ。
「ご無礼をお許しください。一度、手紙を書いたのですが、手に渡っていないと思い、こちらに参りました」
「手紙? いや、何も」
王の眉がぴくんと動いて、じろっとアランを睨んだ。
その瞬間、王が自分の味方になってくれるかもしれないと直感した。
「衛兵に頼み、王に必ず渡すように命じたのです。そこには父、アランの非道の行いが書かれています」
場が一気にどよめき、アランが舌打ちをしたのが聞こえた。
王は目を閉じ、「続けろ」と言う。
「王に手紙を出し、安心して妻と旅行に出かけました。その際、馬車が脱輪しかけ、妻と共に命の危機を感じました。これが証拠です。ねじの部分ですが、わずかに意図的に削られた後があります」
王の側近に手渡すと、すぐに目に触れた。
あの時、イーニッド以外誰も信じていなかったガウェインは、ねじを即座に自分のポケットに仕舞った。従者が点検を怠るとは思えない。
きっと、放っておいたら証拠は消されていたろう。
「大変であったな」
「勿体ないお言葉」
「その手紙にあることを、もう一度私に話してはくれないか」
「分かりました」
ガウェインが口を開けそうになったその時、アランが後ろから飛び出してきた。
そしてガウェインの方を指さし鬼の形相で怒鳴り始めたのだ。
「こんな不出来な息子の言うことを信じるのですか! 私がどれほど尽くしたと思っているのです! 王の為にどれだけ!」
アランが巻くし立てるように言うと、王が静かな声でそして冷たい瞳で言い放った。
「私が何も知らないとでも思っているのか。私腹を肥やし、王などいらぬと影では言っているそうではないか」
「……それは……」
「私自身が処罰するのは簡単だ。ほんの一瞬で首を落とすことが出来るだろう。でも、この国は民が作り考えるもの。宮廷貴族のプライドが残っているのであれば、間違いを正すものが必ず正してくれると信じていた。もしも現れることがなければ、全員王都から追放、もうしくは絞首刑であった。ガウェインに感謝しろ」
王の腹に響くような怒りの声が響いた。宮廷貴族たちは突然の王の言葉に縮みあがり、小さな悲鳴を上げた者もいた。まさか自分たちが処罰されるとは思っていないで、アランに加担していたのだから。王は国を憂いつつ、目を覚まして欲しかったのだろう。
ガウェインは王の言葉が重く感じられた。
「……ですが……ですが! 私は何もっ」
アランは身振り手振りで必至に正当性をアピールするが、王はフンと鼻をならす。
「まだ自分の行いが正しいと言うのか。自分の息子を手に掛けておいて、まだ過ちに気がつかないとは……愚かな。ガウェイン、話は聞くまでもない。アランを地下牢に」
衛兵の命令で、アランがひっ捕らえられる。
悲鳴と共に会議室から摘まみだされると、王はガウェインを見つめた。
「非道の数々、言葉では酷いこともあるだろう。後で手紙をくれ。そして、今後ソレク家のガウェインが、アレクの後を継いだことにする。よいな?」
場にいた全員が頭を下げた。
ガウェインも頭を静かに下げる。
地下牢からはもう二度と出られないだろう。そしてそこでは貴族として扱われない。
一日に一度のパンをくれるだけだと聞いていた。ただし、本当にパンをくれるのか、という疑問すら湧くような場所だ。
気が狂うとも聞いているし、上手く地上に出ることが出来ても正気ではなくなっていると聞く。
自分が追いやったことが、少し後ろめたくなる。
「ガウェイン。なぜ落ち込む?」
王の静かな声に、ガウェインが顔を上げた。
どうして自分の気持ちが分かるのかと、ガウェインは言葉に詰まる。
改めてアランのことが申し訳ない思いになる。同時に、アランを説き伏せることが出来なかったことが残念だった。
「父を、地下牢にまで追いやってしまいました」
「甘いな。アランはその点、非道に徹することに才がある。これから宮廷に上がるとき迷いが生じるなら、その非道すら学ぼうと思い、王都を良くしていってくれ。期待している」
「あの、もう一つお願いがございます」
ガウェインが頭を下げたまま言う。緊張してきて、胸が鳴り始めた。
「マッケンジー家を王都にお戻しください。彼らは無実でございます」
「ガウェインの手紙をよく読み、その後に判断を下そう。私も、ロバートがいなくて寂しくてな。一時の過ちとはいえ、彼には非礼を詫びたい」
その言葉を聞いて、ガウェインはすぐに父のしたことを手紙にまとめなければと思った。
王の判断だって狂う時があるし、ロバートやイーニッドは王を責めることはないだろう。
「ガウェイン。期待している」
「勿体ないお言葉です」
ガウェインは更に頭を下げると、胸に込み上げるものを感じた。
これで、本当にイーニッドと幸せになれる、そんな気がしたからだ。
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